15 / 155
世界が変わっても人間そんなに変わらない2
しおりを挟むアバターの新機能追加の報告ついでに英美里とともにベルの所に向かう、昨日よりも整備された山道は綺麗な獣道から、散歩には丁度良さそうな道になっており、ベルの頑張りが目で見て分かり、嬉しくなるが防衛的観点から見てダンジョンの急所とも言える場所へのアクセスがこんなにも容易で大丈夫なのかと心配になった。
「ベルー!来たぞー!」
『はい、マスター!アバターの新機能を早速活用している様で、良かったですね!』
「おぉ!かなり便利な機能だよ!これでダンジョン内での作業問題もかなり解決したし、アバターに感謝だな!ところでベル、ここに来るまでの道が整備されてアクセスしやすくなったのは良いんだが、防衛的にどうなの?」
『はい、マスター。現状敵も居らずマスターのスキル効果だけで充分過ぎる防衛力がありますので、まずは利便性を重視して、無駄なDPを使わず、DPがより多く得られる環境作りの為に動いて居ますので本格的な防衛力の強化は後回しにしております』
俺が余計な気を回さずともベルはベルで今後を考えて行動しているようで、<怠惰ダンジョン>はベルに任せていれば大丈夫だなと再認識する。
「りょーかい!まぁちょっと気になっただけだから、引き続き<怠惰ダンジョン>は任せるよ!」
餅は餅屋、ダンジョンはダンジョンコアに任せて置けば良いのだと面倒だと思っている訳では無いと自分に言い聞かせる。
『はい、マスター。それでひとつご提案がありまして、今後DPを稼ぐ手段としてダンジョン産の農作物の育成と家畜の育成を行っていきたいのですが、単純に労働力が足りませんので、モンスターの生成を行いたいのですが……一番安価な<ゴブリン>で運営していくか、かなり高価ではありますが色々な場面で活躍が期待できる<エルフ>で運営していくかマスターの意見を聞きたいのです』
「エル……いや、それぞれのメリットとかデメリットとか聞かせてくれる?」
ゴブリンかエルフと聞いて反射的にエルフと答えようとしてしまうが、鋼の理性によりそれぞれのメリット、デメリットをベルから聞く事にした。
『はい、マスターではまずゴブリン運営のメリットから、さっきも言った通り安価であり数を揃えやすい事と繁殖能力の高さから、恒久的に労働力を得られますし、個としての防衛力はあまり期待出来ませんがこの<怠惰ダンジョン>においてはマスターのスキル効果も相まって、軍団として運営すればかなりの防衛力を得られる事などですね、デメリットとしては領地にも限りがありますので、ある程度数を管理しなければいけないという事、見た目が明らかにモンスターである為ダンジョン外の者にバレるリスクが増す事、知能が低く作業が雑になり、農作物や家畜の品質に影響がある事、知能が低いことによるトラブルが予想出来ない事、大体このぐらいかと、あくまでも予想でしかありませんので、参考程度ですが』
「なるほどなぁ……デメリットがキツいな……」
正直あまり真剣には聞いていなかったが、通常のダンジョンでは雑魚かもしれないが<怠惰ダンジョン>では数の暴力というのは無類の強さを誇る事が予想出来るので、ゴブリンは良さそうだが、デメリットがやば過ぎるので俺の中では既に無し寄りに傾いている、エルフがどうとかでは無く、本当の本当に。
「じゃあ、エルフについて詳しく聞こうか!」
鼻息荒くベルに説明を促す。
『はい、マスター。エルフでの運営のメリットは知能の高ささから難しい作業が可能な事と植物との親和性の高さによる農作物や家畜の品質の向上効果が見込める事、今後のダンジョン運営において発生するであろう様々な作業にも適正がある事、魔法適正が高く魔法が使用出来る事、見た目が人間に似ているのでダンジョン外の者にバレるリスクが低い事などですね、デメリットは高価な事と繁殖力が低い事から数を増やしづらく、補充もしにくいことですね』
「エルフにしよう!」
無意識に即答していた、ゴブリンの説明を聞いた時点でほぼ結論は出ていたので問題は無い。
『はい、マスター!では<怠惰ダンジョン>は今後エルフを軸に運営していく方針にしますね、生成する数は雌雄が2組の4体生成ですね、<夫婦>としてそれぞれ農作物類の長と家畜類の長として運営していきますね!』
「それはダメだ!」
思わず声が出る。
『ナゼです、マスター?』
ベルの冷たい無機質な声にビビりながらゴニョゴニョと囁くように拗ねた子供の様に返事を返す。
「……俺だってまだ結婚して無いし彼女も居ないし……近くにそんな奴らが居たら気が滅入るというかなんというか……とにかく嫌だ……」
理性では夫婦で生成すれば今後、子共エルフが生まれる可能性があるのでその方が良いと分かっては居るのだが、心の内側の奥深くに沈殿するドロドロとしたマグマのような感情はどうやら鋼の理性でも抑えきれないらしい。
「差し出がましいかとは思いますが私も意見を言わせて頂きます、私はご主人様に賛成です、いくら生成モンスターであるとは言え、男女である以上余計なトラブルが発生する可能性が高まりますので、現段階ではまだ安定していない<怠惰ダンジョン>では無用なトラブルは極力排除するべきかと思います」
今まで聞き役に徹していた英美里から思わぬ援護が入り、ここが攻め時だと思い再び口を開こうとするが英美里は続けて喋る。
「なので男エルフを4体で良いかと思います、男エルフの方が体力的にも肉体的にも作業には適しているはずですから!」
ぐぅの音も出ない正論に血涙を流しながら、口を開いた。
「……いや、だが、それは……そうだね……」
『……なるほどそのような手が』
何か納得したように呟くベル、まぁしょうがないよなこれはと、なんとか自分を納得させる。
『ふぅ……マスター!マスターがあまりにも悲しい顔をされるので仕方なく今回は女エルフを4体生成致します!ですが、彼女達には名付けは出来ませんからね!これは悲しむマスターに対する私の慈悲なんですからね!感謝してくださいね!』
ベルの唐突なツンデレに一瞬呆気に取られるが、ベルの言った言葉を理解し歓喜する、女神がここには居た。
「ありがとうベル!マジ女神!大好き!愛してる!」
憧れの生エルフに出会えることにテンションは最高潮に達した。
『はい!マスター!私も愛してますよ!』
上機嫌なベル上機嫌な俺、微笑ましいものでも見るかの様な英美里、みんなが幸せだった。
『……英美里もありがとう!あなたの事を少し誤解していたみたい!これからもマスターの事一緒に支えていこうね!』
「はい、ベル様!」
ベルの英断により全員が幸せな気分になった。
そして遂にエルフの生成が行われる。
『ではマスター、女エルフを生成しますので一旦コアルームから退出してくださいね!』
俺は生成の瞬間を初めて見られると思っていたが、ベルに退出を命じられてしまい面食らう。
「えっ……なんで?」
『ハイ、マスター生成されるモンスターは衣服を着ていませんので退出をお願いします』
心なしか不機嫌なベルの声、最近ベルの感情の機微が分かるようになってきて嬉しい反面、生成の瞬間に立ち会えない残念さに渋々返事を返す、決してやましい気持ちは無い。
「わかったよ……」
コアルームから素直に退出して一旦アバター操作を辞めてアイテムボックスからお茶を取り出しまったりしながら待っていると、ベルから念話がはいる。
『マスター、エルフの生成が終了しました』
『わかった、ありがとう』
飲みかけのお茶をアイテムボックスに収納して、再びアバター操作を開始した。
コアルームの扉を開き中へ入る、そこには夢にまで見た生エルフの姿があった。
「……エルフはやっぱりエルフなんだ……」
いかにも農作業用の少し野暮ったい青いオーバーオールに無地の白いTシャツを着たエルフが4体、足元は農作業用の長靴、手には軍手が嵌められ、頭には大きめの麦わら帽子、髪は美しい金色でどこからどうみてもアメリカの農家の方だがとにかく全員が西洋系の整った顔立ちをしており、なにより耳が少し尖っている、体の線は全員細いのに胸だけはこれでもかと自己主張激しく隆起しており、ハリウッドスターを目の前にしたかのように緊張する。
「あ……その、初めまして、えと、これから、よろしくお願いします……」
緊張して小声でボソボソと挨拶をする、すると一人のエルフが代表して一歩前に出て、挨拶を返してくる。
「よろしくおねがいします、児玉様!」
何故か苗字で呼ぶエルフに若干困惑する。
「え……あの、何故苗字?」
「いえ……別にこれといって意味があるわけでは……」
エルフがチラっと英美里を見る。
「あ、あの、何か呼ばれたい呼び方があればそのようにしますが……」
怯えるように言葉を紡ぐエルフに何も言えないでいると、英美里が助け舟をだしてくれる。
「ご主人様、呼び方は人それぞれ、自由意思でよいのではないでしょうか?現に私も勝手ながらご主人様とお呼びしておりますし……」
「そ、そうだね!好きに呼んでくれればいいからな?とりあえず鑑定でスキルとか確認するからね?」
こうして、念願の生エルフとの邂逅を果たした俺はエルフ達のステータスを鑑定していった。
0
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる