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再会、そして経緯 2
しおりを挟む澄原が告げる宣告は、俺の死。
「何・・・言って――」
「ぉおぁぁぁあぁぁああ!!!!!」
まるでモンスターの咆哮。
同時に俺の居た場所が爆発した。
透だ。
寸前で避けた俺の場所を透が殴っただけで消し炭になっていた。
「透!! やめてくれ!!」
「透に話し掛けないで!! お願いだから死んでよ刻越!!」
ギロリと攻撃を避けた俺を見る透。
俺を見る目じゃない、ただ獲物を見るような目だ。
本当に今目の前にいるのは俺の知る透なのか。
「透!!!」
「おぁあああああああああ!!!」
剣を抜き取り目黒を破った魔法で対峙する。
透は見る限りは鉄のガントレットを装備しているだけ。だがそんな物は恐らく補助中の補助。
透の力は俺も知っている。
刻印による身体強化。俺やリットの身体強化魔法とは格別の物だ。
破壊力、防御力、瞬発力、加速力。
本来ならその一つ一つの魔法を掛けないといけないはずが、透の刻印は恐らくそれら全てを兼ね備えている。
同程度ならいくらでも対抗出来た。
バリンッッ!!!
「ぐぅぅっ!!!」
一撃が重すぎる。
俺が剣に付与した魔力全てをガラスを割るように破壊してくる。
もはや防御にも回してくれない破壊力が襲ってくる。
今のこの世界の人間じゃあ再現できない魔法。それを今透は身に纏い十二分に発揮している。
「駆けろ光速 煌めきを恐れず!!」
俺が今使える最速加速魔法。
これを使わせてようやく同等の速度で対抗できるはず――。
「透・・・!」
澄原が透の名を口に出した瞬間だった。
「な・・・にっ!!?」
俺の剣が、受け止められた。
剣先が握られ微動だにしない。
「おぉあ!!!」
バギッと綺麗に音が鳴り響いた。
俺が持っていた剣が、片手で握り潰され、破壊されてしまった。
動きを読まれた・・・違う。
そうか、透達も、未来視か!
「ぐっ!!!」
隙を逃さないと言わんばかりに俺の顔面を殴り飛ばす。
ローブへの攻撃はダメージは軽減していると見抜いたのか、それとも完全に決めに来たのかは、わからない。
だが、今の一撃は完全に致命傷だ。
「ぁ・・ぅぅ・・ぐぅ!!!」
「何で立つのよ刻越。刻越じゃあ透に勝てないのはわかるでしょ」
顔面を殴られ、壁に激突し。それでもなお俺は立ち上がる。
立ち上がらないといけなかった。
今、目の前に大事な人がいるから。
大事な・・・人・・・?
「・・・ぐぅ、透・・聞こえ・・るか、俺の言葉は」
「無駄だって透は今・・・今透は寝てるんだから」
「寝て・・・る? 澄原・・・お前の力か」
そうゆう事か。
今の透はある種の無意識ってことか。
そしてそれをしているのは、澄原、お前か。
「なんで、こんな事して・・る! 透が望んだ事なのか!!」
「あなたのせいよ!! あなたが、あなたが透を壊したから!!!」
「壊・・し、た。俺・・が」
澄原の言葉が頭の中を掻き乱した。
壊した。俺が透を壊した、そう澄原は言っている。
俺が何を・・・。透に何を・・・。
記憶の中、透に最後に会った時、最後に目を合わせた時が脳裏に過る。
『お前が・・・お前だけが!』
目が死に焦点が合わず、顔は涙で溢れ返り、絶望しきっていた透の顔だ。
あの時の俺は、自分の事で頭がいっぱいだった。
目の前で、最後まで俺を信じようとしてくれていた透に目をやることすら出来なかった。
まさか・・・まさかあの段階で。
「透・・・お前・・、視えたのか」
「だからこれ以上!! 私達の未来を脅かさないでぇええー!!!」
澄原が叫んだ瞬間、透が一気に踏み込んできた。
そして俺はされるがままに殴り飛ばされた。
胸倉を掴まれ、何度も何度も顔面を殴られ続けた。
殴られる度、まるで透達がどんな想いで今のままで生き抜いたか容易に想像出来た・・・。
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