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再戦 1

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 立て続けに起きる衝撃音と同時に起きる地揺れ。
 リットはすぐさま部屋を後にした。
 俺もその後を追うようにして出て行く。

 俺の身体は・・・不思議と治っているように感じた。いや従来よりも身体が動けるようにも感じた。

 不思議に思った。この世界に来てからこんな気持ちになってばかりだと自覚した。
 だが今はそれどころじゃない。

「あっちはまさか、アジトが・・・?」
「レジスタンスのか」

 今も衝撃音が響いている。
 コインズの家を出た俺が目にしたのは大騒動だった。
 太陽は嫌な曇りで隠れ、街から逃げだそうと人々が必死に逃げ惑っている姿だった。

「リット。連れてってくれ」
「お、お前を!? ふざけんなそんな身体で行かせ・・・っていつの間にローブ着てたんだ」

 包帯グルグル巻きの半裸だと流石にと思い、家を出る途中に掛けてあったローブを借りた。思ったよりもピッタリだった。
 自分でも驚くくらいに着心地が良い。

「とは、言っても俺は行くけど。よかったら一緒に行きませんかってお誘いだ」
「なんだそれ。 知らねぇーからな、自分の身は自分で守れよ」
「当然」

 俺はリットに笑みを向けたと同時にその場から飛んだ。街の屋根に乗って走り、再び飛んで乗り継ぐように次の家の屋根を走る。さながらジャパニーズ忍者、こんな動き普通は出来ない。けれど何故か今の俺なら出来ると確信していた。

「本当に大丈夫みたいだな」
「ああ、スピード上げるぞ」

 付いてくるリットも俺と同じように走り続けた。
 身体強化魔法の一種であろう、恐らく俺もリットと同じような魔法を無意識に使っているのだろう。
 あの夢の中で見た白昼夢を再現するように。

 リットに細かい場所を指示されながら走る。
 時には逃げ纏う人の波に逆行する道を通りながら。当然のように人々を避けながら失速すること無く走り続けた。

 そして、街並み雰囲気が一気に逆転した場所に来ていた。
 曇りの天気で辺りが暗く思えたのに対して更に重さが加わった。本当にここはさっきまで走っていた街と同じ街なのか。

 ダウンタウン。
 そんな言葉が頭に過ぎると同時に教会騎士という存在が頭に浮かんだ。

 荒れに荒れ果てた廃墟のような空間。
 こんな物が作られたのは、その教会騎士という組織なのか。

「っ!? まだ続いているのか」
「続いてもらわなきゃ困るっての・・・行くぞ」

 ここへ近付く度に爆発する音は大きくなっていた。
 近い。もうそこまで来たのだと実感する。

 迷いは今の所無い。
 けれど、何をするのかも全く決まって無い。それでもリットの後を追い掛ける。
 周囲の風景がただ暗く不気味な物から焦げ臭い臭いと同時に見える火事の明かり目に入りながらも走りながら考える。もしまたみんなと遭遇してしまったらどうしようかと、どうすればいいのかと。

「リ、リット・・・!?」
「おじさん!!」

 答えが出ない考えを巡らせていると壁にもたれ掛かっている男の人がリットの名前を呼んだ。
 リットはすぐさま駆け寄って懐から薬を取り出し渡そうとするも、男はそれを首を振って拒んだ。

「お前逃げろ・・・レジスタンスは、もう・・・終わりだ」
「何言ってんだよ! こんな終わり方、あるわけないだろう! まだ何も出来てないじゃないか!」
「奴等の力は・・・強大・・過ぎる。我々では・・・敵わない。だから」

 男がリットに今はとにかく逃げろと告げながら衰弱していく。もう自分は長くない、そう悟っているのだと誰が見てもわかった。
 だから、俺は右手を男に向けた。

「・・・何を」
「確かにレジスタンスは終わりかもしれない。けど、だからってあんたが死ぬ必要はない。そうだろ? リット」
「・・・うん、そうだよ!」

 迷っていたリットはすぐに渡そうとした薬を、俺が回復魔法を当てている男の口元から少しずつ飲ませた。
 男は、ゆっくりと息を吸い始めて一命を取り留めたように顔色が良くなっていく。
 それを見てリットは安堵したような笑みを浮かべていたが。



「なんだ、まだこんな所に生き残りが居たのか」

 背後から俺達に向けて話し掛けてきた。
 甲冑を着込んだ5人の騎士が現れた。

 俺は助けた男に手を貸して何とか動けることを確認して行かせた。

「おいおい、今の奴。反逆者だってわかってるのが小僧共」
「知らねーよ。死にそうだったから助けた、お前も死にそうになったら助けてやるから安心しろよな」
「何だと!?」

 安い挑発に乗った。
 これが教会騎士という連中なのか? そうリットに聞こうとしたが、連中を睨み続けるリットの様子を見て確信した。
 奴等が、そうだと。

 俺達をこの世界に転移させてきた連中。

「我々に言った今の言葉、侮辱罪として・・・今ここで制裁してくれる!!!」

 話す余地も価値も無い。
 騎士の発した言葉と同時に剣を鞘から抜き、他の騎士達も一斉に動き出す。

「藍!」
「わかってる、自分の身は自分で守る。余裕があったらお前の事も守ってやる」

 懐から小型の剣を取り出すリットは俺の言葉に笑みを浮かべていた。
 俺もすぐに魔法を発動しようと大きく息を吸った。

「魅せるは強靭―――」

 詠唱。
 ただ単純な魔法だ。

 身体強化、それを瞬発的に増幅させる簡単な魔法。
 デメリットはたった一撃にしか効果が無い事。だからこそ、この一撃に全身全霊の想いをカケル。

「ただ一撃に・・・ここ身を捧げよ!!」

「何の小細工か知らんが! 死ね―――」

ゴギィッ!!!

 鈍い音と共に先頭を走る騎士を吹き飛ばした。
 残ったのは右拳を残す俺だけだった。

 その場に居た者、リットも含めみな動きを止めていた。
 動いているのはただ俺の攻撃で上半身の甲冑を粉々に吹き飛ばし白目を剥いた男が宙に浮いている姿だけだった。

 ドサッと男が地面に叩き付けられた。
 そして目の前に突き刺さた、もう動くことの無い男の剣を抜き取った。
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