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第21話 地獄
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とある一室。
1人の少女が部屋出口の前で立っていた。
何処を見ているのかすら自分でもわかない、虚ろな目。今にも消えそうな存在の少女は、微動だせずにただそこに立っていた。
髪は薄汚れ、たった一枚の服は汚れきって元の色が何色なのかもわからない物。まるで少女の存在と重なるように。
その存在に意味があるのか、服には多くの理由と用途があるはず。
着飾る事でその人間の魅力や個性を他に表現する役割もあるはずの物、多くの者はそうして服という物の存在を利用するはず。
だからこそ・・・なのだろう。
少女のボロ切れの様な服装は、その少女という存在を示す為に今存在しているのかもしれない。
「・・・・・・」
少女はただ立っていた。その意味も理解しないままただ何かを待ち続けた。
「何をぼうっとしているっ!!!!」
豊満な体の大人が少女を平手で吹き飛ばす。
勢いが余り過ぎた脆弱な少女の体は壁に激突する。
「・・・ッ」
しかし少女が声を上げる事は無かった。
まるでいつもの事の様だ、そう言っているかのように足を動かし立ち上がろうとする。
「・・んっ」
踏み外したかのように転倒してしまう少女。それはいつもと違う事だった。
痛みなんて当然のように感じない、恐怖すらも覚える事の無い心に、一瞬の戸惑いが走った。
動かなかった。
不思議以外に思う感情を少女は持ち合わせていなかったのだ。
「お見苦しい物を見せ申し訳ございません。ささ、中へどうぞ」
少女を吹き飛ばした時と全く違う言葉使いをする男。
来客。その事にようやく気付く事が出来たのは倒れたままの自分に目もくれずにゾロゾロと部屋に入っていく光景を見てからだった。
気が付いた時にはこの屋敷に居た少女。物心なんて物は今も付いて居ない少女の居場所。
もはやこのまま虚ろの存在で生涯を終える事になるであろう。そんな事すらも考えられない程に少女はあまりにも脆弱だった。
全てが薄汚れている存在。そんな者に触れる者、関わる者なんてこの屋敷には誰も居ない。
それはきっと、屋敷の外である町も、国の外も、生まれた星の中でも、変わらないモノ・・・のはずだった。
「・・・?」
両手の感触。
それは跳ね除けられる際に触れられるモノとは全くの違う物。
他の来客達とは異彩を放っている者の手が、少女に触れられて居た。包み込まれる様に、感じた事の無い感覚が手から全身に行き渡っていた。
次第に触れ合っている手が光り輝く。
少女は目が離せないで居た。時間が止まったかのような感覚、そう口にする者は多くのいるかもしれない。しかしそれは少女にとって真逆の出来事だった。
錆び付き壊れ果て、ありとあらゆる部品が皆無の歯車の部屋。それは存在したはずの少女だけの心の部屋。
朽ち果て過ぎた部屋の天井から薄っすらと日が差された事で、あったはずの存在がまるで新しく生まれたかの様に姿を現した。
「巫女様、お急ぎを」
「・・・」
巫女様。
まるで生まれて初めて覚えた言葉のように少女の頭の中はその言葉が一杯になっていた。
立ち上がれなかったはずの身体を起き上がらせた少女。もはや何故立ち上がれる様になったかなど構うはずも無く少女は言葉を口にしようとした。
「みッ・・・!」
しかし口から出た物は、言葉にならない物だった。
そして、巫女様も含めた御一行は少女に構うこと無く、部屋の中へと入っていった。
立つ舞台が違う。
まるでそう告げるかのように少女と巫女様を隔てる扉が無慈悲に閉まったのだった・・・。
もしも、他愛のない雑談で「物心付いたのはいつ?」という質問がされた時。
この少女は、間違いなくこう答えるであろう。
「実験の時間だぁああああああああああーー!!!!!」
「ッッッッッ!!????!?!?」
夢は覚めた。覚めた夢の先、現実に戻されたルージェルトは痛みで上手く身動きの取れない状態。
目を覚まし最初に認識した物は、完全防備の人物。気を失う前に見たマスクを取る前のあのインジュの姿、そして目の前にいる人物が以前のインジュとは違うとルージェルトは察した。
「どどどどど、どなた!?」
「んーー?? 保護者? いや!一児のパパかな!」
得体の知れない不審者。自らを父親と名乗る不審者。もはやそんな事を聞きたいのでは無いと説く事も出来ずにルージェルトは身の危険を感じるだけ、自分が眠って居たベッドの上で逃げるように距離を取ることしか出来ないのだった。
「来ないでぇええええええええ!!!」
「ふひひひひひ!! あの子の何処に惚れたんだい?? 馴れ初めはいつだい?? どっちから告白したんだいんんんん??? 何処まで進んだ? Aかな? B??? もしかして君達!!!? ふへへへへへへ!! ほら・・・未来のお義父さんに話してたまえよ。んんんんん????」
当然の様に会話が成り立つ訳も無く、質問攻めをしながら身を縮めるルージェルトを壁へと追い込む不審者。
未だかつて味わった事の無い恐怖感でその身はゴリゴリに固まってしまうルージェルト、不本意にもその瞳にはウルウルと揺れ動きまるで年相応の乙女のような反応を見せていた。むしろその反応があまりにも面白いと不審者は楽しんでいる説があったりなかったり。
「どうなんだい??? ねぇーー!!? どう!なぁぁん・・だい!!!?!」
攻め寄られるだけで頭が真っ白になるルージェルト。不敵に不気味に気持ち悪く笑う不審者。
そんな2人のやり取りに終止符が打たれたのは扉がとてつもない音を立てた時だった。
「何やってるんですかぁああああああー!!!!」
「あなた・・・!!」
「あ・な・た!!!!???? もうそんな関係になっていただとぉおお!!? お父さんは許してませんよぉお!!!??? おぉぉおおん???!!??」
ルージェルト自身、インジュという存在が現れた事でここまでの安心感を得る事になるとは夢にも思わなかった。
「お父さんって! ルージェルトさんが変に勘違いするじゃないですか!!!! まぁでも全然思ってないって訳じゃないですけど」
「反抗期か我が息子よぉおおお!!! お父さんは悲しいぞ!!! そして何よりその糞真面目なところで私のポイントを稼ぐのも嫌いじゃないぞ少年!!!! 次は何を作って欲しいのかね!!! でもお子さんは彼女と作ってね!!!?」
「はぁぁ!!!!!?!?!?!?」
絵に描いたような馬鹿げたコント。それを見せられて呆気に取られてしまうルージェルト。あらゆる事が一斉に押し寄せルージェルトの思考回路では処理しきれていないという様子だった。
というよりも、1番の要素としてはついこの間までほぼ敵対していたはずの自分を何の拘束をする事も訳でも無くあまつさえ放置気味にただ2人で楽しく騒いでいるという状態があまりにも追い付かない部分であった。
しかし・・・。
「はいはいはい!!! とりあえず先生は離れて下さいってば!!!」
「独占欲豊富!!! 愛おしい彼女を離したくない! 縛りたい!! 君の光鎖だけに!!!! ってkぐぁああああああああああああ!!!!!?」
不審者、先生は突如宙を綺麗に十数回も回転するように舞い、ガラクタの山の中に頭から突っ込んで行った。
魔力で不審者先生と黙らせたのは、堪忍袋の尾が切れたルージェルトその人だった。
「で?」
「で・・・と言いますと・・その、あの、これは・・・」
ルージェルトから後ずさるように距離を取るインジュは思った。
あれ? 怒らせた母様と同じだ、女の人って皆んなこんな感じで怒る人多いのかな、と。
「説明しよう!!!! 女の子には男には無いとても大変な時期が定期的に訪れるのである!!! 人それを生rぎゃぁああああああああああああ!!!!」
ガラクタから熱弁しようと飛び出した無配慮先生は再び迎撃されるように吹き飛ばされたのだった。
事あるごとにルージェルトで楽しんでいるもとい、怒らせてしまうが為に一向に話が前に進む事はなかった。
そしてようやく話が出来る状態にまで落ち着きを持てたのは、吹き飛ばされ続ける先生を横目にインジュがお茶をルージェルトに差し出してからだった。
「さて、詳しくお話し聞かせてもらおうかしら」
「これがよく東方に聞くとか説明のある。星々の座標を示す星座では無く正しく座ると呼ばれる正座か」
「なんで僕まで・・・」
ベッドの上からカップ片手に見下すような形でルージェルトは正座をする2人と相対する。
「あのー・・・ルージェルトさん、逆に良いですか?」
「・・・・・・」
恐る恐る手を上げて質問しようとするインジュに目を合わせず無言を貫く。
それを見てインジュはその意を汲み取りすみませんでした、と小さく呟き黙ってしまった。
だが、ルージェルトは口を開いた。
その内容はあまりにもインジュからかけ離れている事であり、かなりの難題かつ重い物をぶつけるのであった。
「わたくしはもう”ルージェルト”では無いわ。だからその名前を二度と口にしないで」
「はいいいいい!!?? あぁあーもしかしてそういうお病気の方です????」
茶化す先生を叩いて流石に黙らせるインジュ。サーセンとペコペコペコと適当に頭を下げる先生を置いてインジュは悩み込んだ。
「えっとその・・じゃあ何て呼べば・・!」
「・・・・・・」
「名前ーっと、ルージェ・・・さんはダメだから。えっとー・・え??? んーーっと、ッルルルル・・・ルジェさん???」
「若者特有の縮めキターー・・・すみませんはい黙りまーす」
名前を呼ぶな。自分はルージェルトでは無いからその名で自分を呼ぶな。
彼女自身とてつもない事を唐突に言っている自覚はある。しかしこの難題は今のルージェルトもとい、元ルージェルトにとっては死活問題でもあったのだった。
「ジェルト・・ジェルルさん!!?」
「却下」
無言を貫いてはずの元ルージェルトに反応があり嬉しさが一瞬だけ出たインジュだがすぐに睨まれてんやわんやし出してしまう。
「ル~ルルルルルル~・・・」
「猫かよ」
「ごめんなさい・・・」
まさかの先生にツッコミを受けてガチ目に落ち込むインジュ。
それからあれやこれやとルージェルトという言葉から一向に離れる事の出来ないインジュ。先生は最初からその題目に参加する気がなかったからか暇になり1人ジャンケンを始めている始末。
そして一通りのパターンを口に出し終えたところで折れたのは元ルージェルトだった。
「もういいですわ。好きになさい」
「じゃあルジェさんで!!!!」
「はぁ・・・」
グッと待ってましたと言わんばかりの顔のインジュとは裏腹に呆れて物も言えないとルージェルト改めルジェは、ベッドに戻り自分に布団をかけ、ふて寝を決め込むのであった。
「え・・あの・・・」
「インジュ少年、つまりは・・・そうゆう日なんd痛いっ!!!!」
本日の面会時間は終了。
閉店時間へとなってしまった事によりルジェの下水道生活1日目は、ここが下水道の一角だとゆう事も知らずに終了するのであった・・・。
1人の少女が部屋出口の前で立っていた。
何処を見ているのかすら自分でもわかない、虚ろな目。今にも消えそうな存在の少女は、微動だせずにただそこに立っていた。
髪は薄汚れ、たった一枚の服は汚れきって元の色が何色なのかもわからない物。まるで少女の存在と重なるように。
その存在に意味があるのか、服には多くの理由と用途があるはず。
着飾る事でその人間の魅力や個性を他に表現する役割もあるはずの物、多くの者はそうして服という物の存在を利用するはず。
だからこそ・・・なのだろう。
少女のボロ切れの様な服装は、その少女という存在を示す為に今存在しているのかもしれない。
「・・・・・・」
少女はただ立っていた。その意味も理解しないままただ何かを待ち続けた。
「何をぼうっとしているっ!!!!」
豊満な体の大人が少女を平手で吹き飛ばす。
勢いが余り過ぎた脆弱な少女の体は壁に激突する。
「・・・ッ」
しかし少女が声を上げる事は無かった。
まるでいつもの事の様だ、そう言っているかのように足を動かし立ち上がろうとする。
「・・んっ」
踏み外したかのように転倒してしまう少女。それはいつもと違う事だった。
痛みなんて当然のように感じない、恐怖すらも覚える事の無い心に、一瞬の戸惑いが走った。
動かなかった。
不思議以外に思う感情を少女は持ち合わせていなかったのだ。
「お見苦しい物を見せ申し訳ございません。ささ、中へどうぞ」
少女を吹き飛ばした時と全く違う言葉使いをする男。
来客。その事にようやく気付く事が出来たのは倒れたままの自分に目もくれずにゾロゾロと部屋に入っていく光景を見てからだった。
気が付いた時にはこの屋敷に居た少女。物心なんて物は今も付いて居ない少女の居場所。
もはやこのまま虚ろの存在で生涯を終える事になるであろう。そんな事すらも考えられない程に少女はあまりにも脆弱だった。
全てが薄汚れている存在。そんな者に触れる者、関わる者なんてこの屋敷には誰も居ない。
それはきっと、屋敷の外である町も、国の外も、生まれた星の中でも、変わらないモノ・・・のはずだった。
「・・・?」
両手の感触。
それは跳ね除けられる際に触れられるモノとは全くの違う物。
他の来客達とは異彩を放っている者の手が、少女に触れられて居た。包み込まれる様に、感じた事の無い感覚が手から全身に行き渡っていた。
次第に触れ合っている手が光り輝く。
少女は目が離せないで居た。時間が止まったかのような感覚、そう口にする者は多くのいるかもしれない。しかしそれは少女にとって真逆の出来事だった。
錆び付き壊れ果て、ありとあらゆる部品が皆無の歯車の部屋。それは存在したはずの少女だけの心の部屋。
朽ち果て過ぎた部屋の天井から薄っすらと日が差された事で、あったはずの存在がまるで新しく生まれたかの様に姿を現した。
「巫女様、お急ぎを」
「・・・」
巫女様。
まるで生まれて初めて覚えた言葉のように少女の頭の中はその言葉が一杯になっていた。
立ち上がれなかったはずの身体を起き上がらせた少女。もはや何故立ち上がれる様になったかなど構うはずも無く少女は言葉を口にしようとした。
「みッ・・・!」
しかし口から出た物は、言葉にならない物だった。
そして、巫女様も含めた御一行は少女に構うこと無く、部屋の中へと入っていった。
立つ舞台が違う。
まるでそう告げるかのように少女と巫女様を隔てる扉が無慈悲に閉まったのだった・・・。
もしも、他愛のない雑談で「物心付いたのはいつ?」という質問がされた時。
この少女は、間違いなくこう答えるであろう。
「実験の時間だぁああああああああああーー!!!!!」
「ッッッッッ!!????!?!?」
夢は覚めた。覚めた夢の先、現実に戻されたルージェルトは痛みで上手く身動きの取れない状態。
目を覚まし最初に認識した物は、完全防備の人物。気を失う前に見たマスクを取る前のあのインジュの姿、そして目の前にいる人物が以前のインジュとは違うとルージェルトは察した。
「どどどどど、どなた!?」
「んーー?? 保護者? いや!一児のパパかな!」
得体の知れない不審者。自らを父親と名乗る不審者。もはやそんな事を聞きたいのでは無いと説く事も出来ずにルージェルトは身の危険を感じるだけ、自分が眠って居たベッドの上で逃げるように距離を取ることしか出来ないのだった。
「来ないでぇええええええええ!!!」
「ふひひひひひ!! あの子の何処に惚れたんだい?? 馴れ初めはいつだい?? どっちから告白したんだいんんんん??? 何処まで進んだ? Aかな? B??? もしかして君達!!!? ふへへへへへへ!! ほら・・・未来のお義父さんに話してたまえよ。んんんんん????」
当然の様に会話が成り立つ訳も無く、質問攻めをしながら身を縮めるルージェルトを壁へと追い込む不審者。
未だかつて味わった事の無い恐怖感でその身はゴリゴリに固まってしまうルージェルト、不本意にもその瞳にはウルウルと揺れ動きまるで年相応の乙女のような反応を見せていた。むしろその反応があまりにも面白いと不審者は楽しんでいる説があったりなかったり。
「どうなんだい??? ねぇーー!!? どう!なぁぁん・・だい!!!?!」
攻め寄られるだけで頭が真っ白になるルージェルト。不敵に不気味に気持ち悪く笑う不審者。
そんな2人のやり取りに終止符が打たれたのは扉がとてつもない音を立てた時だった。
「何やってるんですかぁああああああー!!!!」
「あなた・・・!!」
「あ・な・た!!!!???? もうそんな関係になっていただとぉおお!!? お父さんは許してませんよぉお!!!??? おぉぉおおん???!!??」
ルージェルト自身、インジュという存在が現れた事でここまでの安心感を得る事になるとは夢にも思わなかった。
「お父さんって! ルージェルトさんが変に勘違いするじゃないですか!!!! まぁでも全然思ってないって訳じゃないですけど」
「反抗期か我が息子よぉおおお!!! お父さんは悲しいぞ!!! そして何よりその糞真面目なところで私のポイントを稼ぐのも嫌いじゃないぞ少年!!!! 次は何を作って欲しいのかね!!! でもお子さんは彼女と作ってね!!!?」
「はぁぁ!!!!!?!?!?!?」
絵に描いたような馬鹿げたコント。それを見せられて呆気に取られてしまうルージェルト。あらゆる事が一斉に押し寄せルージェルトの思考回路では処理しきれていないという様子だった。
というよりも、1番の要素としてはついこの間までほぼ敵対していたはずの自分を何の拘束をする事も訳でも無くあまつさえ放置気味にただ2人で楽しく騒いでいるという状態があまりにも追い付かない部分であった。
しかし・・・。
「はいはいはい!!! とりあえず先生は離れて下さいってば!!!」
「独占欲豊富!!! 愛おしい彼女を離したくない! 縛りたい!! 君の光鎖だけに!!!! ってkぐぁああああああああああああ!!!!!?」
不審者、先生は突如宙を綺麗に十数回も回転するように舞い、ガラクタの山の中に頭から突っ込んで行った。
魔力で不審者先生と黙らせたのは、堪忍袋の尾が切れたルージェルトその人だった。
「で?」
「で・・・と言いますと・・その、あの、これは・・・」
ルージェルトから後ずさるように距離を取るインジュは思った。
あれ? 怒らせた母様と同じだ、女の人って皆んなこんな感じで怒る人多いのかな、と。
「説明しよう!!!! 女の子には男には無いとても大変な時期が定期的に訪れるのである!!! 人それを生rぎゃぁああああああああああああ!!!!」
ガラクタから熱弁しようと飛び出した無配慮先生は再び迎撃されるように吹き飛ばされたのだった。
事あるごとにルージェルトで楽しんでいるもとい、怒らせてしまうが為に一向に話が前に進む事はなかった。
そしてようやく話が出来る状態にまで落ち着きを持てたのは、吹き飛ばされ続ける先生を横目にインジュがお茶をルージェルトに差し出してからだった。
「さて、詳しくお話し聞かせてもらおうかしら」
「これがよく東方に聞くとか説明のある。星々の座標を示す星座では無く正しく座ると呼ばれる正座か」
「なんで僕まで・・・」
ベッドの上からカップ片手に見下すような形でルージェルトは正座をする2人と相対する。
「あのー・・・ルージェルトさん、逆に良いですか?」
「・・・・・・」
恐る恐る手を上げて質問しようとするインジュに目を合わせず無言を貫く。
それを見てインジュはその意を汲み取りすみませんでした、と小さく呟き黙ってしまった。
だが、ルージェルトは口を開いた。
その内容はあまりにもインジュからかけ離れている事であり、かなりの難題かつ重い物をぶつけるのであった。
「わたくしはもう”ルージェルト”では無いわ。だからその名前を二度と口にしないで」
「はいいいいい!!?? あぁあーもしかしてそういうお病気の方です????」
茶化す先生を叩いて流石に黙らせるインジュ。サーセンとペコペコペコと適当に頭を下げる先生を置いてインジュは悩み込んだ。
「えっとその・・じゃあ何て呼べば・・!」
「・・・・・・」
「名前ーっと、ルージェ・・・さんはダメだから。えっとー・・え??? んーーっと、ッルルルル・・・ルジェさん???」
「若者特有の縮めキターー・・・すみませんはい黙りまーす」
名前を呼ぶな。自分はルージェルトでは無いからその名で自分を呼ぶな。
彼女自身とてつもない事を唐突に言っている自覚はある。しかしこの難題は今のルージェルトもとい、元ルージェルトにとっては死活問題でもあったのだった。
「ジェルト・・ジェルルさん!!?」
「却下」
無言を貫いてはずの元ルージェルトに反応があり嬉しさが一瞬だけ出たインジュだがすぐに睨まれてんやわんやし出してしまう。
「ル~ルルルルルル~・・・」
「猫かよ」
「ごめんなさい・・・」
まさかの先生にツッコミを受けてガチ目に落ち込むインジュ。
それからあれやこれやとルージェルトという言葉から一向に離れる事の出来ないインジュ。先生は最初からその題目に参加する気がなかったからか暇になり1人ジャンケンを始めている始末。
そして一通りのパターンを口に出し終えたところで折れたのは元ルージェルトだった。
「もういいですわ。好きになさい」
「じゃあルジェさんで!!!!」
「はぁ・・・」
グッと待ってましたと言わんばかりの顔のインジュとは裏腹に呆れて物も言えないとルージェルト改めルジェは、ベッドに戻り自分に布団をかけ、ふて寝を決め込むのであった。
「え・・あの・・・」
「インジュ少年、つまりは・・・そうゆう日なんd痛いっ!!!!」
本日の面会時間は終了。
閉店時間へとなってしまった事によりルジェの下水道生活1日目は、ここが下水道の一角だとゆう事も知らずに終了するのであった・・・。
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