上 下
3 / 3

しおりを挟む

 んーー!!!

 洞窟を出て背伸びする。
 なんか、清々しい気持ちだ。

 きっと、過酷な状況下になればあの人達でもジャイアントボア"なんて"倒せるだろう。
 そうすればきっと、素敵な男性達になるに決まってる。

 なんて僕はいい事をしたのだろうか。

 あれ? 待てよ。
 素敵な男性になられたらお姉さんが、本当の意味で取られてしまうんじゃないのだろうか。
 それは、それで困るな。


グ~~~~~~ッ。


「あ~そういえば朝から何にも食べて無かったや、お金はあるし。今日の冒険者稼業は終了~っと」

 まあ、何とかなるだろうという思いが大事だ。

 僕はこのまま家に帰る事にしたのだった。



 その後にあの3人組がどうなったか。誰も知る由もなかったとかあっとか。
 少なくても、あれから冒険者ギルドに顔を出す事はなかった。


 そして次の日だ。

 今日も朝から、冒険者ギルドに足を運んだ。たしか今日のお姉さんはお昼当番って言っていた気がする。

 なら、それに合わせてクエストが終わったら一度帰って例の物を持ってくる事を視野に入れてクエストを選ばなくては・・・。


「あら、ニルト君。おはよう」
「あれ? お姉さん・・・どうしたんですか?」

 ギルドの中に入ると、そこにはお姉さんがそこに居た。

 だが、いつもと違う部分。
 お姉さんは私服だったのだ。

「昨日来なかったから心配したわ、大丈夫なの?」
「は、はい。ちょっと用事が出来まして、ははは」
「そっか~、御休みもしっかり取る事も冒険者には大事だからね。何も無くてよかったわ」

 頭を撫でてくれるお姉さんについ顔が赤くなる。
 よく心配した時や、僕がちょっとした怪我をしてしまった時によくしてくれる事だ。僕は堪らなくこれが好きだ。

「本当なら昨日の内に言っておきたかったのだけど」
「え?」

「私・・・今日で、ギルド受付の仕事やめる事になったの」

 え? なんて?
 仕事・・・やめる?

「手紙でずっとやりとりしていた彼氏がね、やっとプロポーズしてくれたの」

 え!? なんて!?
 彼氏・・・プロポーズ!!?

「だから最後にしっかり挨拶出来てよかったわ。今までありがとうねニルト君! これからも冒険者、頑張ってね!!」




 それだけを僕に告げ、満面な笑みを最後にお姉さんはギルド館内へと消えて行った・・・。

 同時に僕の恋心は・・・消え去ったのだった。







 その晩は、泣きじゃくった。
 同い年の冒険者をとっ捕まえてやけ酒ならぬ妬け茶をした。

 とにかく食べまくった。飲みまくった。泣きまくった。





 そんな僕に、時間は残酷に過ぎて行った。
 いつものように日は昇り朝を迎える。

 そして僕もいつものようにギルドへと足を運ぶ。あまりにも重い足取りを引きずりながら・・・。


「おはようございます。今日からお世話になる者です、宜しくお願いします」


 それは重い足取りが一気に軽くなった瞬間だった。





お わ り
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三
ファンタジー
 一体どれだけの時間を牢獄で過ごしたのか意識が朦朧としている元騎士の"フォーズ"。  何故こんな事になったのか、自分が何をしてしまったのか。と何度も自問自答に時間を費やしたか。  何もかもを失った身で唯一手に持っている物があった。  それは神器とも呼ばれる"贈呈具"。  ただ、フォーズが手にしているのはただの刃の無い剣、"柄"だけという代物だった。  そんな柄を握り虚無の時間をただ過ごしているフォーズ。  何年も人間が訪れることの無い牢獄。  そんなある時突然物音がした。 「僕は・・! どうして・・・!!」  それは、牢獄のある国の王子の一人、ルビヤの泣き声だった。  忍ぶように、まるで誰にも聞かれないように静かに涙を流している。  そんな場面に出くわしたフォーズは、声を出してしまった。  最初はフォーズの声に驚きながらもルビヤは好奇心からフォーズと話すようになり次第に親しみ話し相手になるほどの仲になっていった。  そしてフォーズはルビヤと語り合う中でとある事実に気が付いた。 (なんで俺、敵国の牢獄に居るんだ・・・)  自分が今居る牢獄が、騎士として戦い続けた敵国である事に驚愕したフォーズは、その真相。脳裏にこびり付く『売国奴』という言葉の意味を探ると共にルビヤという少年王子を気にかけてしまうのであった・・・。 ※次世代ファンタジーカップ2作目です。 前回のダークシリアスとは真逆のギャグコメディチックな作品を目指しています。どうぞ応援よろしくお願いします! よければその前作も見て頂ければ幸いです。

悪行貴族のはずれ息子【第1部 魔法講師編】

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
★作者個人でAmazonにて自費出版中。Kindle電子書籍有料ランキング「SF・ホラー・ファンタジー」「児童書>読み物」1位にWランクイン! ★第2部はこちら↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/162178383/450916603 「お前みたいな無能は分家がお似合いだ」 幼い頃から魔法を使う事ができた本家の息子リーヴは、そうして魔法の才能がない分家の息子アシックをいつも笑っていた。 東にある小さな街を領地としている悪名高き貴族『ユーグ家』―古くからその街を統治している彼らの実態は酷いものだった。 本家の当主がまともに管理せず、領地は放置状態。にもかかわらず、税の徴収だけ行うことから人々から嫌悪され、さらに近年はその長男であるリーヴ・ユーグの悪名高さもそれに拍車をかけていた。 容姿端麗、文武両道…というのは他の貴族への印象を良くする為の表向きの顔。その実態は父親の権力を駆使して悪ガキを集め、街の人々を困らせて楽しむガキ大将のような人間だった。 悪知恵が働き、魔法も使え、取り巻き達と好き放題するリーヴを誰も止めることができず、人々は『ユーグ家』をやっかんでいた。 さらにリーヴ達は街の人間だけではなく、自分達の分家も馬鹿にしており、中でも分家の長男として生まれたアシック・ユーグを『無能』と呼んで嘲笑うのが日課だった。だが、努力することなく才能に溺れていたリーヴは気付いていなかった。 自分が無能と嘲笑っていたアシックが努力し続けた結果、書庫に眠っていた魔法を全て習得し終えていたことを。そして、本家よりも街の人間達から感心を向けられ、分家の力が強まっていることを。 やがて、リーヴがその事実に気付いた時にはもう遅かった。 アシックに追い抜かれた焦りから魔法を再び学び始めたが、今さら才能が実ることもなく二人の差は徐々に広まっていくばかり。 そんな中、リーヴの妹で『忌み子』として幽閉されていたユミィを助けたのを機に、アシックは本家を変えていってしまい…? ◇過去最高ランキング ・アルファポリス 男性HOTランキング:10位 ・カクヨム 週間ランキング(総合):80位台 週間ランキング(異世界ファンタジー):43位

すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

戦車で行く、異世界奇譚

焼飯学生
ファンタジー
戦車の整備員、永山大翔は不慮の事故で命を落とした。目が覚めると彼の前に、とある世界を管理している女神が居た。女神は大翔に、世界の安定のために動いてくれるのであれば、特典付きで異世界転生させると提案し、そこで大翔は憧れだった10式戦車を転生特典で貰うことにした。 少し神の手が加わった10式戦車を手に入れた大翔は、神からの依頼を行いつつ、第二の人生を謳歌することした。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

異世界に行ってまで平均的な能力で戦っていく

ねこげ
ファンタジー
ごく普通の生活を送っていた主人公がある日突然異世界転生をする。しかし、異世界転生をしたにもかかわらずチート能力はなく、平均的なステータスでしかなかった。そんな主人公がモンスターを一工夫で倒していく物語

処理中です...