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第11話 ジェットストリームガード!!
しおりを挟む「あぁーあー、応答されたしーー応答されたしー」
「リュル、もう良いから要件だけ伝えたら」
「それもそうだな―――っておい! あんま揺らすなってダッド!」
「いや、自分じゃなくて、ムーが!」
俺達は上空へ飛んでいた。全員肩車の状態で移動している、俺の上にダッド、その上にムーと。
そしてムーの話では戦域からミサイル型のアンダーズが上空へと飛び始めているとかなんとか言い出して、正直超帰りたい。
だって大型の砲撃ビームって話だったじゃん! なんだよミサイルって!!
ちょっと話しが違うじゃん!!
ビームを防いで弾いた時に余波の事を考えてとか、ちょっと賢い事を考えたらこれだよふざけんな!!
「なぁ、やっぱ帰らない? ミサイルだよミサイル?」
「自分達を信じてくれたのは、リュルさんですよ」
「そう、責任持って散りに行こう」
「散りたくないんですけどぉぉおー!!!」
あぁ、なんでコイツ等こんなにやる気なんだよ。あれか俺が褒めすぎたからか!?
違うって、あれはリッター・ミレスを追っ払う口実でちょっと盛っただけなんだよちょっと、ほんのちょっとさ。
「うわぁ・・・報告。ミサイルアンダーズの軌道予測・・・多分こっち」
「げぇ・・・マジかよ」
本格的にやべぇじゃねーか。ミサイルが目標地点が何処か知らねぇーけど。ワンチャン明後日の方向に飛んでってくれねぇーかなぁーなんて俺の想いは一切届かないな!
こうなったら腹括るしかねぇか。
「えーこちら3班のデコボコトリオ、3班デコボコトリオ。これより上空にてミサイル迎撃開始したいと思いまーす、繰り返すさっさと帰りたいのでミサイル迎撃を開始しまーす。以上」
報告義務を怠らない部下の鑑。
かあー、上司の心情を察してなお上司の尻拭いをするまさに理想の部下。
終わったらあの無駄にでけぇ山の一つや二つ揉みくしゃにしても罰は当たらんだろう。
相変わらず応答ないけど、まあいいか。
「よーし、お前等! ジェットストリームディフェンス開始だ!!」
「「ガードじゃなかったけ―――おわぁ!!?」」
細かい事は良いんだよ。ジェットストリームならいいんだよジェットストリームなら。
バランスを取り続ける二人を余所に一気にブレイカーの出力を上げ今だ上空にいるミサイル型へ向けて急上昇する。
「あわわわわわわわっ!!!!」
「ぐぅぅぅうぅうっ!!!」
「もっとスピード上げるぞぉー」
一応忠告だけ二人に告げて更に速度を上げる。ブレイカーがいつポンコツになるかわからないが、多分これくらいなら大丈夫だろうと思う。
そうこうしている内に風を切る音以外の不審な音が聞こえる。
俺達とは違う風を切り急速で近付く、遠くからでもはっきり聞こえるそれは、徐々に大きさを増している。
「っと、この辺でいいだろ」
「うっ・・・吐きそう」
「僕もうここまで来てる」
なんだなんだ、デコボコトリオ改めゲロ吐きトリオに早速改名が必要か?
やめてくれ、そこで吐かれると絶対に俺の顔に全て直撃する。
そんな嫌な想像をしていると目の前から黒い点がこちらに迫ってくるのがわかった・・・。
これは・・・ミサイルじゃない。
「迎撃機能も備わってるのかよ、勘弁してほしいな」
「自分に任せて!!」
うおぉお、っとダッドがストックを強く握りしめた時、俺達の目の前に透明なバリアが一枚、二枚、三枚と次々と展開された。
敵は目の前のみ。前方の攻撃のみを防ぐだけならダッドの右に出る者はいないだろう。
そして読み通り、正面から来た無数の俺達への攻撃は全て防ぎ切っている。
一枚も欠ける事無く、俺達の目の前に堂々と形成展開されている。
「ムー! どうだ?」
「まだ遠いけど、確実にこっちに近付いてきてる。第二波来るよ」
「どんと来いっ!!」
バリアを形成したまま第二波に備える。
この調子だと俺は防御に手を貸す必要は無いな。
そうなると、攻撃の部分だが。
上を見ると何やらムーはストックから何かを撃ち込んでいた。
撃ち込んでいる先を見ると、何かの術式を正面の空中に撃ち込んでいるようだった。
その正体はまだ俺はわからないでいる中、第二波が到着した。
完全に本気になったのか、第一波と比べ物にならない程のビームの嵐がダッドの展開したバリアを襲う。
ピキッ・・・。
一番手前のバリアに亀裂が走る中ビームの追撃は終わりを告げる事無く撃ち込めれ続ける。
流石にヤバいか、と俺とムーはダッドの方に顔を向けた。
「全然大丈夫!! 二人は、二人の役割を。自分は、自分の役割をー!!」
ダッドの魔力が更に高騰した。
ストックとブレイカーがダッドの魔力に共鳴するように輝きを増す。
すると展開しているバリアが大きく、そして鋭いスパイクのような形へと変貌した。
全てを受け止めるのでなく、ビームの軌道を全て流すように弾き始めた。さっきから俺の真横に無数のビームが通過していってる。
ヤバい。これはダッドが俺を信じての行動だ。
俺が二人の足となっている以上、俺が少しでもこの場を動いたりしたらこのスパイク状のバリアからはみ出てしまう。
つまり、俺は俺の役割。
ここに留まり続けるという役割を全うしないと・・・全員死ぬ。
「・・・リュル、悪いけど30センチ上に上昇出来る?」
「はぁああああ!!!?」
ずっと黙りこんで何をしているのか全く解らなかったムーが口を開いたと思えば。
動いちゃダメって話じゃないの!?
「リュルさん! 自分は大丈夫ですから! 上手く動かして下さいね」
「・・・わ、わかった。ゆっくり行くぞ・・・」
まるで針に糸を刺すかのように俺は慎重にブレイカーに意識を集中させる。
少しずつ少しずつ・・・。
ヒュンッ・・・!!!
ひぃぃい!!!
掠めた・・・今完全に掠めたぁああー! ビーム掠めたぁあああああー!!
「・・・上げ過ぎ! 10センチ下!」
「ごめんって!!!」
こうなったら目を瞑る!!
大丈夫だ、ビームは今もダッド全て防いでくれている。信じろ!
(めっちゃこえぇ・・・!!!)
「上、5センチ」
要求がきつくなってる。
くっそ、全身に力が入りきる。
ブレイカーを壊さないようにと、ダッドの為に急激な動きを出さないようにと、ムーの指示を叶えるのに・・・。
ケツから出そう・・・。
「オッケー!!! そこ!!!」
んっ・・・ふぅー。何とか脱糞は回避できそうで何よりだ。
後はこれを維持するだけでいい訳だ。
そう思い・・・俺は目を開けた・・・。
「んーーーん?」
もう肉眼で捉えられるところに。
ミサイルが目の前なんですけどおぉおぉぉぉおおおぉおー!!!!
「これで・・・。っ!!!」
一切の瞬きを禁じたムー。
トリガーを引くように魔力をストックへと注ぎこんだ渾身の一撃。
あまりに細い照射レーザーが放たれた。
ムーが撃ったレーザーは照射を続けミサイル型を貫通させた。
やったか、そう口走ろうとしたが。ミサイル型は動きを止めることが無かった・・・。
だが、貫通したレーザーはミサイル型を抜けた先で急速に角度を変え別方向へと直進し始める。
(これってまさか・・・反射って奴か)
本来なら貫通して終わりの所を、反射を利用し一瞬で何度も何度もその間を往復し続け。
いずれコアに辿り着く。
ムーの行動全てに合点が行った。
最初に撃ち込んできたのは術式は自らの攻撃を反射させる物。
こちらに直進してくるミサイルの軌道を計算して反射術式を正確な角度で設置した。
後は用意したルートへ向けて渾身の一撃をブチ込む。
その為にも少しのズレも許されない。
少しでもズレればミサイル型を追い越す、または取り残される。
だが、今俺が目にしている光景。
ムーが放ったレーザーが絶えず光速で何度も何度もミサイル型のデカイ図体を往復している。
時間の問題。もう本当にすぐそこまでミサイルが来ているというのに。
不思議と恐怖心は消え去っていった。
そして・・・。
バリィィィィーンッッ!!!!
本当に目の前だった。
目の前でアンダーズが消滅していく姿を俺は目の当たりにしている。
勢い余ったアンダーズの砂が少し幻想的に思えたでしまうほど・・・その光景は鮮やかに感じてしまった。
「・・・・・・やった」
「あぁ・・・僕達が」
二人は今ようやく現実に引き戻されたかのような表情を見せていた。
それまでに集中し続けていたのがわかる。
この光景は誰の目にも触れられていないだろう。
俺一人ではきっと出来なかった事だ。一人でこの高度まで到達して大技をぶっぱなしてもコアを確実に破壊出来る自信なんて無かった。ダッドのように防御し続ける事も出来るかも知れないが、攻撃に転じることが出来ただろうか。ムーのように一撃で撃墜出来たかも知れないが、防御せずに手元を狂わせずに出来ただろうか。
「お前等・・・」
「リュル・・・」
「リュルさん・・・」
この二人がお留守番? 上等じゃないか。この一件を俺は一生自慢し続ける自信はあるね。
あのマイスターですら為し得なかった事を、この二人、いや俺達は成し遂げたと誰が何と言おうと誇ってやるね。
「お前等は・・・最高の―――」
バァンッッ!!!!!
「あっ・・・」
「え・・・?」
「は・・・?」
あぁーもう駄目だこれねぇーー。
「「「うわぁあああああああ!!!!」」」
こうして俺達デコボコトリオ、元い。
ユース・リベリィ 第3班 お留守番部隊。
無事任務を果たしましたとさ。
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