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第5章 掃除をしにきただけなのに(新井編)
5-1 新井 優子
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新井優子は、保健委員である。大好きだった5才上の兄康友は、三年前の高校進学で、県内屈指の進学校に入れる実力がありながら、「saeki家」というよく分からない施設に就職してしまった。その背景には加奈子先生の存在があるという。優子がまだ小学五年生のころ、部屋で着替えている兄を一瞬だけ見た。背中しか見えなかったが、何かで叩かれた傷がいくつもあった。いじめられているのかもしれない。と心配したが、中川のお仕置きを見て、加奈子先生に調教されていたという確信を得た。優子は加奈子先生のことを探るために、保健委員に入り、兄とよく似た体型で最近よく保健室に呼ばれている中川に近づいていたのだった。
「優子さん、小島懸生君って知ってますか?」
加奈子先生は、一人で保健委員の仕事をしている新井に尋ねてきた。
「はい、2組にいたと思います」
「だったら、岩田君が、市原君やその小島君にいじめられていることも知ってますね」
新井は軽く頷いた。中川が慌てて知らせに来た市原のいじめは、加奈子先生も他の学年の生徒たちも何となく認識していたことだったのだ。もちろん現場に出くわして、チクりに来たのは中川が初めてだったが……
「優子さんには、その小島君にいじめをやめさせるように動いてほしいと思っているのですよ」
新井は加奈子先生の突然の提案に驚いた。
「どうして私なんですか?小島君のことも岩田君のことも知らないし、他の子に頼んで下さい。それになぜ小島君なんですか?市原君がいじめの中心じゃないんですか?」
「他の二人は私が始末します。そして小島君をあなたに頼むのは、小島君が中川君に近いものをもっていると感じたからです」
「どういうことですか?」
加奈子先生はニヤリと笑って、新井に近づいた。
「あなた、この前、中川君のお仕置きを見ていて、体が熱くなったのではないですか?『出しなさい』と命令したとき、中川を押し倒したとき、自分の中で高揚するものを感じたでしょう」
加奈子先生は、新井の中にあるSとしての本性を見抜いていた。新井は返す言葉がなかった。
「やり方は教えます。やってご覧なさい。きっとあなた自身が気付いていない本当の自分を発見できるはずですから」
加奈子先生は、小島のいじめを止める方法について語り始めた。
「そんなこと……私……」
困惑する新井の手を取って、加奈子先生はほほえんだ。
「できますよ。優子さんなら。だって、今の話を聞いている最中も、あなたは体を熱くしてたでしょう。いい加減、自分に正直になりなさい」
その後、加奈子先生は、明日から新井が取るべき行動を伝えた。
それは簡単に言うとこうだ。
図書委員の小島を、人手が足りないと行って、保健委員に駆り出す。これは加奈子先生が手を回してくれるそうだ。
そこで、小島を一人保健室におびき出し、お仕置きするというものだった。
決行の日は、十五日後の金曜日、6時間目、全校で川の清掃を行なう日の午後だ。つまり全員が体操服で一日過ごす日。それが重要なのだと加奈子先生は言った。
「優子さん、小島懸生君って知ってますか?」
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新井は軽く頷いた。中川が慌てて知らせに来た市原のいじめは、加奈子先生も他の学年の生徒たちも何となく認識していたことだったのだ。もちろん現場に出くわして、チクりに来たのは中川が初めてだったが……
「優子さんには、その小島君にいじめをやめさせるように動いてほしいと思っているのですよ」
新井は加奈子先生の突然の提案に驚いた。
「どうして私なんですか?小島君のことも岩田君のことも知らないし、他の子に頼んで下さい。それになぜ小島君なんですか?市原君がいじめの中心じゃないんですか?」
「他の二人は私が始末します。そして小島君をあなたに頼むのは、小島君が中川君に近いものをもっていると感じたからです」
「どういうことですか?」
加奈子先生はニヤリと笑って、新井に近づいた。
「あなた、この前、中川君のお仕置きを見ていて、体が熱くなったのではないですか?『出しなさい』と命令したとき、中川を押し倒したとき、自分の中で高揚するものを感じたでしょう」
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「やり方は教えます。やってご覧なさい。きっとあなた自身が気付いていない本当の自分を発見できるはずですから」
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「そんなこと……私……」
困惑する新井の手を取って、加奈子先生はほほえんだ。
「できますよ。優子さんなら。だって、今の話を聞いている最中も、あなたは体を熱くしてたでしょう。いい加減、自分に正直になりなさい」
その後、加奈子先生は、明日から新井が取るべき行動を伝えた。
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決行の日は、十五日後の金曜日、6時間目、全校で川の清掃を行なう日の午後だ。つまり全員が体操服で一日過ごす日。それが重要なのだと加奈子先生は言った。
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