クラス M

第三章 ジェンダー調査官からの報告

第１５話 ドッグトレーニングコンテスト(1)

　ここから先は、森聖喜の観察を続けてきたジェンダー調査官、私わたくしー木戸紗利衣きどさりいが事の顛末をお伝えする。どうしてそうなったかは、最後まで読んでいただくと、ご理解いただけることと思う。



　聖喜が清水家の飼い犬になってから二ヶ月が過ぎた頃、彼に一つのチャンスが訪ずれた。

　ドッグトレーニングの仕上がりを競うコンテストが催されるというのだ。このトレーニングの出来次第では、クラスをMまで戻すことができる。つまり学校に戻れるのだ。

　清水家の人達からの聞き取りによれば、その頃の聖喜はすっかり清水家に慣れ、呼ばれてもすぐに「ワン」と答えるし、「ちんちん」「お手」などに対しても素直に応えるようになっていたという。

　そしてドッグトレーニングコンテスト当日、暁とステージに上がった聖喜は五つの課題に取り組んだ。五つの課題とは、「おすわり・ふせ・まて・こい・つけ」である。この課題のために、電撃は一時的に解除され、手につけられていた拘束具も外された。つまり首輪以外は自由な状態になったのである。

　ただ自由になったからと言って、暴れたり余計なことを話したりするようなことがあれば、減点だけでは済まされない。

　聖喜の仕上がり具合は最高だった。コンテストはどれだけ素直に指示通りに動くか、「わん」としっかり声が出せているか。撫でられた時、嬉しそうにしているかなど、細かい部分まで審査される。つまりどれだけご主人様の命令に従順に動けるかを見定める審査なのである。


「イブ。ふせ！」という暁の指示に素早く応え、聖喜は「わん」と吠えて、ふせのポーズをとった。

「イブ。つけ！」の指示にも「わん」と吠えて、暁の横にピッタリついて離れなかった。そのあまりに息の合った動きに会場から拍手が起きたくらいだった。

　動作の一つ一つに対して、暁から褒められた時も、本当に嬉しそうな表情をして、アイコンタクトをとった。

　そこまで順調に進んでいた聖喜だったが、最後にお客さんの前で、お礼のちんちんポーズをさせられた時、それは起きた。

　聖喜はちんちんポーズのまま仰向けになると、自らチングリポーズでアナルを客席に見せ、左手で肛門に挿してある尻尾を動かして、アナルを刺激し始めた。そして右手でペニスをしごいて見せたのだ。

「見てー、僕のチンボ。アナルも……ああ、もっと見て、気持ちいい」

　喘ぎ声をあげながら、客達に自分の恥ずかしい行為を見せつけた聖喜は、暁の「やめ」も無視して、完全にイッてしまったのだった。

　この顛末により、聖喜はクラスVに落とされ、拘束された上で、病院に送られた。

　プライドが高く、評定会すら拒否した男子の成れの果てである。