私と運命の番との物語 改稿版

星屑

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3章 転生者

第25話 しばらくの間は……

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「シャル、封印を解いてみましょうか?そうすれば匂いを感じることができるし、自分の匂いも運命のつがいに気づいてもらえるようになるわ」

「はい、お願いします」



シャルへとゆっくりと慎重に魔力を流し、封印の鍵を外す。



……カチャリ。



これで匂いの封印が解けたはずだ。

……ブワッとシャルの匂いが溢れ出す。

私にはそれがどのような匂いかは正確にはわからないが、アレックスは甘い匂いだと感じているのだろう。



「ぐっ、これは……」

「甘い…匂い……?」



2人とも戸惑っている。

シャルもアレックスの匂いを感じれるようになって、甘い匂いだと気づいたのだろう。

甘い匂いを感じるということは、やはり2人は運命のつがいだったようだ。



「ふふっ。やっぱり、アレックス様とシャルは運命のつがいだったのね」



やっぱり、と微笑みながら言うと、アレックスが不思議そうに聞いてきた。



「サフィー様はわかっていらっしゃったのですか?」

「ええ。だってこんなに魔力の相性がいい人なんて、運命以外ありえないもの。
まるでピッタリとはまるパズルのようだわ。

ふふっ、私とルドの魔力の相性も最高でしょう?」



私がそうルドに微笑みかければ、



「もちろんだよ。当たり前だろう?
俺とフィアだからね。相性は最高だよ?」



ルドがそう言い、甘く見つめてくるため、2人の間には甘い空気が流れる。

しばらく見つめ合っていると、



「ン、…アレックス様を見るとドキドキする。……なんで…?」



シャルの甘えるような声が聞こえてきた。

シャルがアレックスの袖をつまみ、チョンチョンと軽く引く。
そして上目遣いで見つめ、尋ねていた。

可愛すぎてヤバイ、とアレックスは思っているのだろう。

顔をほんのり赤くしながら、蕩けたような瞳でシャルを見つめていた。



「ねぇ、ルド。シャルは幼児退行化しているのかしら?」



2人に聞こえないように、コソコソとルドと小声で話す。



「うん、多分そうじゃないかな?
封印されていたものが解放されたからね。

……今まで育つことのできなかった感情を戻すために、封印された時の年齢まで戻ったんだと思うよ。
シャルロットのは10歳で止まっていたようなものだし」

「それで、運命のつがいであるアレックス様に甘えているのかしら」

「うん。10歳はまだ甘えたい時期だと思うし、6年間誰にも甘えられなかった反動もあるんだと思うよ。

……信頼できる人があまりできなかったんじゃないかな。
今までは感情が動かなくて冷たい人だと思われていただろうからね」



そう2人で結論づけ、シャルとアレックスを見守ることにした。


一方、アレックスはシャルの可愛さに悶えていた。

アレックスがギュッと抱きしめると、シャルは胸元にスリスリと額を擦り付けて、スゥーッとアレックスの匂いを嗅いでいる。

……愛しい人に甘えられて嬉しくない者はいないだろう。

2人のラブラブっぷりにこちらが当てられそうである。


そして、アレックスが甘く囁くようにシャルにを言った。



「愛しいシャルロット。私のことはアレクと呼んで?愛しい貴女だけに許す呼び方だよ」

「はい……。私のことはロッティと呼んでください……」

「ふふ、嬉しいな。私以外にはその呼び方を許してはいけないよ?もしそんなことをしたら……ふふっ、絶対に守ってね?」

「はい……」



アレックスが若干怖いことを考えていそうだが、シャルはどこかボンヤリとしながらも、しっかりと答える。

少し精神年齢が上がったようだ。



「アレックス。2か月程、つがい休暇を取れ。仕事は3人でなんとかするから。フィアがいればなんとかなると思う。

1か月でシャルロットの精神年齢を戻して、1か月でつがい契約を結んでから発情期を終わらせろ。

多分、シャルロットは今までの反動でつがい契約をした瞬間に発情期になるだろう。
つがい契約をしなくても、どの道1か月後には発情期が来る。

早めにつがっておけば、その分楽だ。
他の雄をフェロモンで無自覚に誘うなんて、お前は許せないだろう?

発情期は甘やかしただけ早く終わる。

……2か月後に2人が揃って来るのを待っているぞ」



ルドが穏やかな顔をしながら、アレックスへと激励を投げかける。



「隊長、ありがとうございます!それでは2か月後に」



そう言って礼をし、アレックスはシャルを抱きかかえて足早に退出していった。



「2人が無事につがい契約ができるといいわね」

「そうだね。きっとできるよ。アレックスはアレで二面性があるからね。外面は良いけど,かなり腹黒いよ。
独占欲が俺並みに強いし、執着したものは絶対に逃がさないし諦めない。
きっとシャルロットを溺愛して離さないよ」

「ふふっ。2か月は3人で頑張りましょうね?」

「忙しいとは思うけど、フィアがいれば何とかなる気がする。」

「それは買い被り過ぎよ」

「いいや。フィアがいれば俺のモチベーションが上がるからね。作業が早くなるよ。
……何よりも癒されるし」



癒される、というだけでいいのだろうか?

実際、私がいても役に立つかどうかは分からないし、ルドを癒せるだけでは、仕事はいつまで経っても終わらない。

いくら作業が早くなるからといって、ルドにばかり負担をかけてしまう。

そんなのは絶対に嫌だ。

と、内心で思い、できるだけのことはしようと気合を入れる。


ふと、シャルの封印を解く時から一言も話さないエドワードを不思議に思い、そちらに視線を向ける……。

すると、眩しいものを見ているかのような目でこちらをジッと見ていた。



「えっ?エドワード様、どうなされましたの?」



何故そのような目で見られているのか分からず、エドワード本人に聞いてみることにした。



「不躾に見てしまい、申し訳ありません。

ただ……運命のつがいの絆というものはとても素晴らしいと思い、眩しく感じ……、自分も運命を見つけたいと強く思いました。
運命に出会うことのできたお二組には、本当に尊敬の念しかありません」



キラキラと尊敬の眼差しを向けてきたエドワードに対して何と言って返したら良いのか分からず、ルドにどうすればいいのか助けを求めるように、縋るような視線を向けた。

するとルドはその視線の意味を理解して苦笑し、私の代わりにエドワードに言葉を返してくれた。



「エドワードもきっと見つかるよ。

俺たちが仲良くしている人達はみんな運命のつがいなんだ。

エドワードの運命はまだ生まれていないだけかもしれないし、近くにいないだけかもしれない。

焦らず気長に待っていれば、そのうちきっと良縁が巡ってくるよ」

「はい!ありがとうございます!気長に待ってみますね!」



ルドに言われたことが本当に嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべていた。



「取り敢えずは大きな事件も新たにないし、今のところ解決できない事件があるという報告もないから、しばらくはゆっくり業務に慣れることから始めようか。
何せこの部隊はできたばかりだからね」

「そうね。まずは効率良く業務ができるように、基盤を作りましょう。
書類作成の方法だったり、分業化をするのもありだと思うの」

「そうだね。効率良くできる方法を探していこうか」

「ええ。私の前世の知識を生かしながらできればいいと思っているわ。
それに、いずれは産休に育休も取れるようになればいいと思っているの。
そうすれば子供ができた時に安心して産めるもの。

今後、どんな職業でも産休と育休が取れるようになれば、私達の子供が大人になった時に良いと思ったのよ。
……伴侶がどんな仕事についているかは予想できないもの」

「フィア……!そこまで考えてくれていたの?
俺たちの子供のことまで……!
……嬉しい!
ありがとう、フィア。愛しているよ」



ルドがチュッと額にキスをして、ギュッと抱きしめる。

喜びを表すかのように力強く抱きしめてきた。

ルドの背中をポンポンと叩いて苦しさを伝え、力を緩めてもらう。

そこで体を離さないのは流石としか言えない。



「俺も仕事を頑張って、フィアとの時間を沢山作るからね」



そう言って再度ギュッと抱きしめ、体を離した。




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