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3章 転生者
第23話 特別部隊
しおりを挟む「そうと決まったら、特別部隊の隊員の方に挨拶しなければならないわ!ルド、特別部隊の方達はどちらにいらっしゃるの?」
「クスクス。もうじきここに来るよ。朝話した通り、元々今日はフィアを隊員達に紹介するつもりだったしね」
「そうだったわ!
すっかり忘れてしまって…」
「ふふ。もともと今日は隊員達の顔合わせの予定だったんだ。そこでフィアを紹介できればいいなって思っていたんだよ。
まだ特別部隊ができて5日だからね。
隊員同士も顔を合わせたことがなくて、ずっと書類のやり取りをしていただけなんだ。
今日やっと書類仕事が終わって隊員達も落ち着いたから、自己紹介をしようと思って……。
俺は隊員一人一人と顔合わせと自己紹介をしたけど、大分個性が強かったかな。
フィアに失礼な態度を取らないように注意しておいたけど、もし何かあったら俺に言って?解決するから」
「少しドキドキしているけれど、大丈夫だと思うわ。きっと、なんとかなるわよね」
「本当に何かあったら言ってね?1人で抱え込んだらお仕置きだよ?」
「ふふ、お仕置き?
大丈夫よ。絶対ルドに相談するわ。だから、くれぐれも武力行使はしないでね?
……それは最終手段だもの」
「………わかったよ」
仕方ないなぁという顔をしながらもルドは頷いてくれた。
と、その時……。
……コンコンコン。
「失礼いたします。ドレッド隊長、シャルロットです。入室してもよろしいでしょうか」
「ああ、どうぞ」
「失礼いたします」
そう言って入室してきたのは、女性だった。
ふわふわで胸まである紫色の髪にエメラルドのような輝く緑色の瞳をしている。
「フィア、こちらはシャルロット・ファニー・ターヴェント。瞬発力が凄くて戦闘において動きが途轍もなく早い。魔法も得意だよ。彼女は特別部隊で唯一の女性だ。
フィアが入ってくれれば2人になるから、女性しか分からないこともあると思うし、色々と協力し合ってね。
女性の方が顔を合わせやすいと思って、彼女には一番始めに来てもらったんだ」
「はじめまして。ルドの番のサーフィリア・ルナ・アイラックですわ。
これからこの部隊でルドの補佐をすることになりました。女性同士、仲良くしましょう?よろしくお願いしますわ」
「はじめまして。ご丁寧にありがとうございます。シャルロット・ファニー・ターヴェントと申します。よろしくお願いします」
シャルは緊張しているようで、ガチガチになっている。
「ふふ、そんなに緊張なさらないで?貴女とはお友達になれたらいいと思っていますのよ?シャルとお呼びしてもよろしいかしら?私のことはサフィーと呼んで欲しいですわ」
「はい、サフィー様」
柔らかく微笑んでくれる。
どうやらシャルも私と仲良くしたいと思ってくれているようだ。
「私は人間と竜人、狐と豹のハーフなのだけど、シャルは何の種族なの?聞いてもいいかしら?」
「はい、私は黒豹と雪豹、黒兎のハーフです」
「まぁ!そうなのね!黒豹と雪豹だなんて、親近感が湧くわ。
私は狐の血が一番強くて、竜の血も先祖返りしているの」
「私は、黒豹の血が一番濃いです。父が黒豹と雪豹のハーフで、母が黒兎ですが、2人は運命だったらしいです。でも、2人とも6年前に亡くなってしまいました。私がちょうど10歳になった頃でしたね」
「まぁ、そうなのね。辛いことを話してくれてありがとう」
「いえ、私が話したかっただけですので」
初対面だが、シャルは両親のことまで話してくれた。私のことを信頼してくれるようだ。
「ということは、シャルは16歳なの?」
「はい」
「ふふ、歳が近くて嬉しいわ」
「私も、同年代の女性と話す機会があまりないので、嬉しいです」
シャルは微かに微笑んでくれた。
「私は12歳なの。シャルの方が年上ね。でも、私もシャルを頼るけど、シャルにも頼って欲しいわ」
「はい、よろしくお願いします」
無事に1人目とは顔合わせが済んだ。
シャルとは仲良くなれそうでよかった。
……コンコンコン。
「失礼いたします!ドレッド隊長、エドワードです!入室してもよろしいでしょうか!」
「どうぞ」
シャルの時とは違ってハキハキとした声が聞こえる。
「フィア、シャルロット。彼はエドワード・ギル・コントラート。剣術が得意で、怪力なんだ。コントロールはできるが、怒りに支配されると一切手加減ができなくなるから、もし何かあったら俺にすぐ連絡すること」
「はじめまして。ルドの番のサーフィリア・ルナ・アイラックですわ。特別部隊でルドの補佐をしますので、よろしくお願いしますわ。種族は人間と竜人、狐族と豹族のハーフですわ。」
「はじめまして!エドワード・ギル・コントラートです!種族は犬族と白頭鷲のハーフです!よろしくお願いします!」
ハキハキと元気良く挨拶してくれる。
ニッと笑顔を向けてくれるので、親しみやすい。
不思議と彼が近くにいても恐怖心はない。
これならフラッシュバックもなさそうだ。
全ては印象の問題なのだろうか?
それとも…相手が私に危害を加えるのか、本能で察知しているとでも言うのだろうか。
彼とも仲良くできそうでよかった。
「フィア、大丈夫そう?」
「ええ、彼は大丈夫みたい」
ホッと息を吐くと、
「ふーん、彼は平気なんだ」
気に入らないとでも言うかのようにルドがボソッと呟く。
誤解していそうなので、先程思ったことを伝えてみる。
…ルドには誤解されたくない。
「これは予想だけれど、本能で自分に危害を加えるのかどうか察知しているのだと思うわ」
「え?」
「始めの時は確かに誰にでも恐怖を抱いていたわ。でも、ルドにチョーカーとピアスを貰ってから、それを感じることは少なくなったの。ただ、本能で自分に害をなすものは見分けられるようになったみたいよ。危機察知能力が格段に上がったのだと思うわ」
「そうか……そうなんだね…」
ルドはホッと、安堵したような笑顔を私に向けた。
無事に誤解が解けて良かったと、フィアもルドに微笑んだ。
その時。
……コンコンコン。
「失礼いたします。ドレッド隊長、アレックスです。入室してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
落ち着いた声が響く。
「フィア、彼はアレックス・トム・ハワードだよ。彼は魔法と剣術の両方が得意で、魔力の量が結構多いんだ。彼は頭の回転が早いから、特別部隊で参謀みたいな役割を務めるかな?」
エドワードのときと同じ挨拶をすると……。
「ご丁寧にありがとうございます。はじめまして。アレックス・トム・ハワードと申します。特別部隊では副隊長という立場になります。隊長の補佐をしていただけるのは本当にありがたいです。隊長を制御できるような者がいなかったので……。
私の種族は狼族、虎族の白虎と獅子族のハーフです。これからどうぞよろしくお願いいたします」
とても歓迎されているようだ。
確かに、ルドを止められる人はほとんどいない……。
「アレックスは魔力の量が結構多いんだ。フィアの5分の4くらいかな?竜族の血が入っていない筈なのに多いんだよ。種族的にも瞬発力やパワーも結構あるしね」
「そうなのね。頼りになるわ」
やはりアレックスにも恐怖心は抱かない。
特別部隊のメンバーは大丈夫みたいだ。
「良かったわ。みなさんと仲良くなれそう」
「ふふ、良かったね」
ホッと息を吐くと、ルドが微笑みかけてくれる。
一緒に喜んでくれるのがたまらなく嬉しい。
これから一緒にいる時間が長いのに、常に恐怖心を抱いているのは疲れるし、何よりも相手に気を遣わせてしまう。
そうなれば、普段の仕事にも支障が出てきてしまうだろう。
そのことを一番懸念していたので、その心配がないのは単純に嬉しい。
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