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1章 運命の出会い
第13話 発情期の前兆、そして新居… ※ルド視点
しおりを挟む『ゴホンッ』
チッ、せっかくいい雰囲気だったのに。
『もう戻っていいか?もう用は済んだだろう?』
「ああ、いいよ」
『あ、そうだルード、“精霊王の王”から新居のプレゼントがあるから、パーティーが終わったらすぐこっちに来いって言ってたぞ。もう荷物は全部運び出しておいたからな?』
「新居?」
『ああ、蜜月を過ごす場所だよ。そのまま移り住んでもいいと言っていたが、ルード達はこっちの国にいるんだろう?だから、蜜月だけでもこっちで過ごして欲しいっていうのと、蜜月は色々危ないからな。
心配だからこっちで過ごせってことだと思うぞ。
やっと再会できたから、なるべくこっちにいて欲しいんだろう。少しでも顔を見せてやれ』
「ああ、そう言うことか。……蜜月はそっちで過ごすって伝えておいてくれ。パーティーが終わり次第向かう」
『ああ、伝えておく。それじゃあまたな!』
「ああ、またな」
「またお会いしましょう。とっても楽しみだわ」
「そうだね。……フィアと2人っきりだ」
「ふふ」
2人で楽しみだと微笑み合う。
「それではパーティーを再開する!」
国王が仕切り直してパーティーを再開している。
「フィア、バルコニーに行こう?」
「ええ、そうね」
フィアの手を取ってバルコニーへ向かう。
ここのバルコニーはパーティー会場が2階のため、会場へ続く扉に鍵をしてしまえば個室のような状態になる。外から見えることもないし、扉も木製の為、本当に2人きりになれる。
ルドは鍵を閉め、設置されているソファーへとフィアを誘って、座った。
フィアはルドの膝の上へ座った。
……ルドは改めて、何故フィアがあの勝負を受けたのか知りたかった。
まだ出会って数日だが、フィアなら勝負を受けたりしないと思ったからだ。
理由が知りたくなってしまった。
「フィア、どうしてあんな勝負を受けたの?」
「だって、私のルドよ?私のルドに近づくなんて、許せないわ」
フィアが俺の足を跨いで、向き合うようにして座りながら、顔を俺の顔に近づけながら言った。
……そんな可愛いことを言うなんて。嫉妬してくれたのか。
嬉しくてニマニマしていると、フィアが俺の首すじに顔を近づけてスリスリしてきた。
……フィアが可愛い過ぎてヤバイ。
しばらくそのスリスリを堪能した後、フィアの頭を撫でようとした時……。
いつの間にか俺のシャツのボタンを外して、首すじをあらわにしていた。
「ちょ、ちょ、フィア⁉︎何してるの⁉︎」
「……あの女の香水の匂いが移ってる」
少し怒ったような声でフィアが言った。
「ああ、だいぶ香水がキツかったからね。凄い臭かったよ…」
もうなるようになれと、半ば投げ出したような気持ちでいると…。
フィアが首すじをペロペロ舐めてきて、更にガブッと噛み付いてきた。
「……ッ‼︎」
……思いっきり噛みつかれたなぁ。
僅かに血の匂いがしてきたため、血が滲んできているようだ。
何故フィアが噛み付いてきたのかは分からないが、今はさっき噛んだところを一生懸命ペロペロと舐めている。
……必死になって舐めてて可愛いなぁ。
あまりにも可愛いくて、ナデナデと頭を撫でる。
「フィア、どうしたの?」
「私の匂いを付けておかないと。ルドは私のものだって周りに分からせないと、私のルドがちょっかいを掛けられちゃう」
そう言ってまたペロペロと舐め始めた。
「……グッ。グルーミングか。発情期前で本能が出始めだんだ。グルーミングが出るってことは、明日辺りから発情期かなぁ?
随分早いけど、とにかく早めに帰ろう。発情期中のフィアなんて色っぽ過ぎて他の奴なんかに見せたくないし。
なによりも獣人の血が濃く出ていると確か発情期も本能が強く出るから、自分の番が近くにいないと暴れて情緒不安定になるし、女の姿なんて見ようものなら、その女を殺そうとする。
……まぁ、フィア以外がどうなろうがどうでもいいけど」
そんな事を呟いていると、フィアは舐め終わったのか反対側もペロペロし始めた。
***
これ、どうしようかなぁ。
フィアがペロペロ舐め始めてからまだそれほど時間は経っていないが、この状態のフィアをパーティー会場へ戻すことはできない。
いや、したくない。
さて、どうしたものかと困っていると……。
《ルイン、ルイン》
父さんが念話で話しかけてきた。
「父さん?」
《ああ、そうだ》
「どうしたの?」
《ルインが困っているようなのでな。何か手伝おうかと思って》
「うん、ナイスタイミング。この状態をどうしようかと思ってたんだ。パーティー会場には戻れないと思ってさ。フィアの発情期が始まりそうになっているみたいなんだ」
《それなら、2人の複製みたいなのを創って、それに魔力を流して目的を伝えてみろ。そうすればその複製が目的を達成するために行動してくれる》
「そんな事ができるんだね。知らなかったよ」
《とにかく急げ。そろそろヤバそうだぞ》
そう言われてフィアを見てみると……うん、確かにヤバイかも。色気がダダ漏れだ。
父さんに言われたように複製を創って、フィアを横抱きにして立ち上がる。
「父さん、このまま新居まで転移したいんだけど、新居は精霊界にあるの?」
《ああ、そうだ。精霊界にあるぞ。
とりあえず精霊界に転移してこい。そこから俺が案内する》
「分かった」
そうして精霊界に転移する。
***
精霊界に転移してくると……。
《ルイン、こっちだ》
父さんがいた。
「父さん、ありがとう。そろそろ本格的に発情期が始まりそうなんだ」
フィアはもう既に発情期の症状が出てきたみたいで、息を荒く吐きながら、必死にルドの首元にしがみついている。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
大分息が荒くなって、顔が真っ赤になっている。
《確かにコレはヤバそうだな。しかし、こんなに早く発情期が来るとは……。俺たちの時より早いぞ?
ルイン、コレはどのくらい発情期が続くか全くもって予想できない。甘やかしたら甘やかしただけ早く終わると思うから、存分に甘やかしてやれ》
「甘やかしたら、甘やかしただけ……?そんなことあるの?」
《ああ、俺たちの時もそんな感じだった。それでも長かったがな…》
父さんが遠い目をしてその時のことを思い出している。
《最短で3日で終わる種族がいるというのに、俺たちは2週間続いた……。竜族でも発情期は1週間ぐらいだぞ?
……多分ルイン達も2週間は続くと思っていた方がいいと思う》
「最後までシないように頑張るよ……」
俺が苦笑しながら言うと…。
《言っておくが、新居では本当に2人きりだからな?発情期中は特に他の者を側においておくと危険なんだ。要するに、寝る時も湯浴みをする時も一緒だって言うことだ》
「マジか……」
《どこまでもつか見ものだな》
父さんがニヤニヤしながら言ってくる。
「他人事だからって……」
《クスッ。俺たちが出会った時はもうすでにお互いに成人してたからな》
「早く成人して欲しいよ…」
《ははっ。頑張るんだな》
そんな会話をしていれば、新居に着いた。
《一応小さめに創っておいたぞ。2人きりだからな。常にくっついていたいだろう?》
「……よくわかってるね」
《俺たちがそうだったからな。それじゃあ、好きな時に出てこい。いつまでいたって構わないからな?気が向いたら会いに来い。リナは特に会いたがっていたぞ。いつでもいいから会いに来てやってくれ》
「ありがとう、父さん。母さんに、発情期が終わって落ち着いたら会いに行くって伝えておいて」
《ああ、分かった。
そうだ。伝え忘れていたが、発情期中の番はとにかく甘えてくるぞ?それがめちゃくちゃ可愛い……。
普段してこないようなことをしてくるし、顔もトロンとしていて本当に可愛いんだ。
人によっては発情期中の記憶が残っていない者もいるから、注意しておけよ?
あとはたっぷり堪能しておけ。なかなか見れないものが見れるからな》
そう言って父さんはニヤリと笑い、俺を挑発してくる。
……実体験が入っているっていうのがなんとも言えない。
最後は慈愛の満ちた微笑みを浮かべ、転移をして帰っていった。
頼りになる存在ができたというのがむず痒くもあり、嬉しいという感情の方が大きい。
家族に会うことができたのは全てフィアのおかげで、本当に感謝しか無い。
腕の中にある存在がさらに愛しく感じる。
移動している間に寝てしまったフィアを抱えなおして、新居へと入っていく。
外から見た感じは、赤い屋根のレンガ造りの建物で、こぢんまりとしていて可愛いらしい。
中に入ってみると……。
玄関を入って右側がリビングとダイニングになっていて、キッチンがある。
真っ直ぐ進んでいくと、浴室があり、バスタブとシャワーがついている。その部屋の隣にトイレがあった。
左側には一つ部屋があって、主に衣裳部屋として使うみたいだ。
扉が2つあり、入って奥にある扉は執務室に繋がっていて、右側にある扉は寝室に繋がっている。執務室は寝室とも扉を隔てて繋がっている。
寝室は浴室とトイレとも扉を隔てて繋がっている。
取り敢えず寝室へとフィアを抱えていき、2人で寝ても余裕があるベットへと寝かせる。
「……ン…んぅ…」
水を取りに行こうと、フィアから離れようとすると…。
「やぁ…いっちゃヤダァ…」
と言い、服の裾を掴んで離さない。
いつの間に目を覚ましていたのか、目をパッチリと開けて、ジッとこちらを見つめている。
「…どこに行っちゃうの?離れないで…どこにも行かないで……?」
目に涙を溜めてウルウルと上目遣いで見つめてくる。
「(……可愛すぎる)」
「………?」
「大丈夫。どこにも行かないよ」
「……ほんと?」
「うん、こうしてずっと手を繋いでいるよ」
指を絡めるようにして手を繋いで見せて、笑顔で言う。
「……へへッ。じゃあ、一緒に寝よう?隣にきて?」
「えっと、それは……同衾することになるんだけど……」
眉を下げて、ちょっと困ったように言う。
「……ダメ?」
フィアが甘えるような声を出した。
……そんな甘えるように言われたら、断れるわけないじゃないか。
遂には諦め、一緒に寝ることにした。
「…分かったよ。一緒に寝よう?」
そう言って、パチンと指を鳴らしてフィアと自分に洗浄魔法をかけ、服を夜着に変える。
そうしてフィアの隣に寝転がると……。
「…ふふ。嬉しい」
と、満面の笑みを浮かべてルドの胸元に擦り寄ってきた。
ルドはそんな笑顔を向けられて悶々としながらも、疲れからかいつの間にかフィアを抱きしめて眠っていた。
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