孤独を癒して

星屑

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第1章 出会い

5.俺の番

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翼の友人たちと少し仲良くなれた。

俺の友達にもなってくれると嬉しいな。

翼は……俺のことを守って良い方へと導いてくれる。

出会ったばかりだけど、誰よりも安心できるし、俺を支えようとしてくれる。

まだ発情期がきたことがないけど…早く発情期がこないかな。

早く翼と番になりたい。



少しの間、保健室のソファで話し、俺と翼は事務室へと移動を始めようとした。



「じゃあ、僕達は僕の自由部屋でお喋りしてるね!来たくなったら来ていいよ!
別のとこで何か話したくなったなら呼んでくれればいいし!
あ!お昼はどこで食べる?一緒に食べようよ!」

「そうだな…結生はどこか食べたいところはある?
もちろん結生の分は今日俺が食べる用で作っておいた弁当があるから、それを食べていいよ。どこかでみんなで食べたいところがあるなら、そこで食べよう?」

「翼が自分で食べるために作っておいたお弁当なのに、俺が食べちゃっていいの?」



翼が自分で食べるために作っておいたのに、俺が他人の作ったものが食べられないからって、それをもらうのは申し訳ない。



「味付けとかは結生用じゃないから、多少濃いめにはなっていると思うけど、それでもよければ食べて欲しいな」

「本当に?申し訳ないよ」

「俺達は番だよ?何も遠慮することはないよ」

「ん……うん、ありがとう。じゃあ、食堂で食べてみたいな。ちょっと憧れがあったんだ。友達と一緒に学食を食べるの。
……俺は食べられないけど」

「ふふ、じゃあそうしようか」

「じゃあ、お昼に食堂で集合ね!」



そう言って椿くん達と別れる。

事務室や職員室は保健室と同じ階にあるので、割と近い。

生徒数が多いため職員も多い。

その結果、職員室、事務室、保健室は二つに分かれている。


事務室に到着し、事務の人に声を掛け、申請書を書く。



「これにて、お二方は番寮の利用、番の優遇制度の利用ができます。おめでとうございます」

「「ありがとうございます」」



書く書類が多かったため、時間がかかってしまった。

ちょうどお昼の時間だ。



「結生、お昼ご飯の時間だから、学食に行こっか」

「うん」



翼に連れられて食堂へと移動する。

食堂もまた、事務室と同じ階にあるためそれほど遠くはないが、そもそも一つの階が広いため、事務室から食堂までは少し距離がある。



「結生、疲れたよね?転校初日にこんなにバタバタしてごめんね。大丈夫?歩ける?」

「ふふ、翼は俺のことなんだと思ってるの?身長だって175センチあるし、オメガだけど男だよ?」

「性別は関係ないよ。愛しい人だから心配してるんだよ。第一、結生は身長の割に体重が軽いんだから、これから沢山食べなきゃダメだよ?これからは俺が作るから、しっかり食べてね?」



ジッと翼が見つめながら俺に言う。


一瞬で悟った。

この瞳には勝てないと。

言葉で上手く説明することはできないが、強く惹き寄せられる瞳の奥には強い意志が宿り、自然と抵抗する気持ちを忘れさせる。

まさに、”魅せられている”という言葉がしっくりくるような感じだ。

それほど透き通っているような、または底知れなさを感じさせるような瞳から目が離せず、キレイだな、と思った。



「翼の手料理は楽しみだよ。始めは沢山食べられないかもしれないけど、沢山食べられるように頑張るから…」

「クスッ。無理はしなくていいんだよ。結生のペースで進めて行けばいいんだ。俺の料理だからって無理して食べる必要はないし、残したっていい。ただ、結生が頑張りたいなら応援するし、毎日ちょっとずつ頑張って行けばいいんだよ。初めから気負い過ぎると疲れるからね。サポートするしずっと一緒にいるから心配しなくていいよ」

「ありがとう…」



優しく頭を撫でられて安心する。


そんな話をしている内に食堂へ着いた。


翼が扉を開けた瞬間……。



「「「「キャーーー!!!」」」」



鼓膜が破れるかと思うほどの悲鳴が聞こえた。
あまりの声の大きさにビクッとする。



「キャーー!!!八神様よ!」

「どうして今日はこちらにいらしたのかしら!!!」

「やった!!今日は運がいいわ!八神様に会えるなんて!」



はぁ、こんなに騒がしいの?

確かに翼が人気だろうことは予想がついていたけど、正直ここまでだとは思っていなかった。

だからお弁当を作ってきていたのか。

これは…翼に申し訳ないことをしたな。



「翼……ごめん。こんなだとは思わなくて。今からでも移動しよう?煩くてしょうがないでしょ?本当にごめん」

「結生?ふふ、大丈夫だよ。いつものことだから。まぁ、煩いとは思うけど。それよりも結生のお願いを叶えてあげたかったから…。正直あんまり気にしてなかったかな」

「それは嬉しいけど…ここじゃああんまりゆっくりできないでしょ?翼が休めないよ?」

「結生は優しいねぇ。でも本当に大丈夫だから安心して?」



翼が目を細めて優しく微笑みながら言う。



「わかった。本当に無理だったら言ってね?」

「うん。ありがとう」



入り口で立ち止まっていたが中に入ることにして、先に来ている翼の友人達を探す。



「あ!翼!結生くん!こっちこっち!」



椿くんが手を振って教えてくれる。



「待たせたな。書く書類が多くて時間が掛かった」

「全然大丈夫だよ~。みんなで楽しくおしゃべりしてたし!さ!お腹空いたでしょ?みんなでお昼にしよ!」

「ああ」



そう言うと、翼がお弁当を出してくれる。



「量が結構多いから、無理して食べないでね?食べられるだけで大丈夫だから」

「うん。ありがとう」



周りを見ると、椿くんや渚くん達もお弁当を広げている。



「みんなもお弁当なの?」

「うん!アルファは基本的に何でもできるからね。番の体を作るものは自分が料理したものがいいんだって。ただの独占欲というか支配欲みたいなものだから、あんまり気にしなくて大丈夫だよ。そういうものだと思っておけばいいし。こっちは助かるし。何より美味しいからね」

「ハハッ。椿にそんなに喜んでもらえてるなら作り甲斐があるな」

「ふふっ。うん!いつも美味しくいただいてるよ!」



ナチュラルにイチャついている中、翼はお弁当を広げてくれている。



「あれ?翼は何か買って来なくて大丈夫なの?」

「ん?ああ、大丈夫だよ。結生の余ったものもらうし。結生はほとんど食べられないと思うから、それをもらうよ」

「本当に?足りる?」



確かに俺はほとんど食べられないと思うが、翼が持って来ているお弁当を見る限り、結構大きめだ。

俺が食べてしまって足りるのだろうか?



「大丈夫だから。さ、食べよう?」

「うん」



翼のお弁当は、ハンバーグにポテトサラダ、唐揚げに卵焼きの入ったお弁当に、もう一つご飯だけが入ったお弁当がある。それにプラスでサラダだけが入ったタッパーを持って来ていた。

本当に量が多い。



「いただきます」

「ふふ、召し上がれ」

「ん!美味しい…」

「食べられそう?」

「うん!すっごく美味しい!」



ハンバーグを一口食べたが、本当に美味しい。

その後も少しずつ食べ続け、すぐにお腹がいっぱいになる。



「もうお腹がいっぱい。ご馳走様でした。本当に美味しかったよ」

「お粗末さまでした。明日からは結生に合わせて作って来るね」

「ありがとう。楽しみにしてるね」



翼は俺が残したものをあっという間に食べ切り、お弁当を片付け始めた。



「翼は足りた?大丈夫?」

「ふふ、本当にそんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「だって…」

「十分お腹は満たされてるから大丈夫」



翼は優しく笑って俺の頭を撫でてくれる。







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