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第14話 主人と犬7
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「ところで、私から言い出して何だけど、アリエルちゃん大丈夫なの? かなり危険な仕事をお願いすることになるんだけど……」
アリエル達は打ち合わせを終え、悪魔の石からなるべく近くに潜んでいる。
「完全に形を成していない、今しかありません。ただ問題は、悪魔の石が何処まで動けるのか分からないことと、回りの化け物をどうするか……ですが」
作戦の内容を一言で説明するのであれば、奇襲だ。
フランは援護の中、アリエルが特攻……そして、速やかに石の破壊。
「やっぱり危険よ、回りを化け物を退治してからじゃダメなの?」
「はい、小物を倒している最中に逃げられるのが一番厄介ですから」
フランの射撃で枝を撃ち、石を地面へと落とす。それをアリエルが弱らせ、心臓を叩き込む。
その後、化け物を退治して任務を終える予定だ……作戦と言われるほどの洗練されたものでは無いが、他に手段もなかった。
「安心してください。私は生き物じゃありません。侵食されることはありませんので」
彼女言葉に他意はないのだろう。それでもフランは、その言葉を聞き悲しそうな顔を見せた。
「そんな事を言わないの……みんなで無事に帰りましょうね?」
「はい、了解しました……。それでは準備は宜しいですか?」
フランとロムの顔を見るアリエル。どうやら準備は良いらしい……。
「では──行きます! 手はず通りに!」
アリエルは髪が赤く染まると同時に駆け出した──機械の体でこそ可能な、人知を超える早さで!!
フランの放つ銃弾は、悪魔の石の居る枝を見事抜く。しかし、まだ折れるには至らない。
「──一撃じゃ折れないのね!」
次弾を込め、もう一度狙いを定めた。
流石に気付いた化け物は、大きな音を立てた彼女を見つめている。
「これなら……どうかしら!?」
射線に存在した木の枝は、バキッ!? っと鈍い音を立て折れる。
動くことは出来なかったのか、悪魔の石は枝もろとも重力と共に落下をしていく──。
「──まったく……本当に見事な腕前ですね!?」
アリエルが大地を蹴った──二振りの刃を手にもつアリエルは、落ちてくる悪魔の石に空中でそれを突き立て、そのまま地面へと刺し、固定した!!
悪魔の石からしたら、擬態が仇になったのだろうか?
尻尾らしき部分に刺さった二振りのナイフは、動きを制限するには十分な効果があったようだ。
「これでも……喰らいなさい!!」
アリエルの早打ちが、石に向かって放たれた──一発二発どころではない、銃に込められる全弾を、刹那の間に撃ちきったのだ……。
化け物達も反応しきれなかった様で、唯一襲いかかる事が出来た一匹も、フランの援護によりアリエルにその牙が届くことは無かった。
「良かったです──今回は銃弾は通るようですね」
右手の銃を捨て、腰袋の中身を掴む。
そして、オートマタの核になる予備の心臓を、アリエルが起動させるためのコードを呟いた──。
「管理者コード:AriE─1─3。権限を……」
──しかしあろうことか、穴だらけになった悪魔の石のは、自らの尻尾を切り捨て逃走を図ったのだった!?
「しまった! 自切!?」
悪魔の石は尻尾だけを残し、フランの方角に向かい逃げる。
スライムの時の非では無い速度は、アリエルを焦らせるには十分だった──。
「──加速しない!? オーバーヒートですか!!」
アリエルの手足からは煙が上がり、髪の毛は元の白髪へと戻っていた。
追い付けない! 彼女は一瞬でその事を理解した。
「逃げて──フラン様!!」
複数の化け物達に飛び付かれながらも、アリエルは走り、弾を込め、悪魔の石に向かい発砲した──しかしそれは、石を止めるには至らなかった……。
「こ、来ないで! こっちに来ないで!」
慌てたフランは、何度も引き金を引いた。銃弾が当たる度に足を遅めるものの、石の進行を止める事までは出来なかった。
そして、彼女に起こる不幸はそれだけでは無かったのだ。
「嘘でしょ!? こんな時に──ジャムるなんて……」
薬莢の排出口に、空になった薬莢詰まっているのが見えた。
慌て取り外そうとするも、悪魔の石はもう間に合わんっとする所まで来ていたのだ。
「あ゛……あぁ……」
フランからは、声にならない声が上がる……。
恐怖と絶望のあまり、彼女は目を閉じ神頼みをした。
「──ガゥ!」
そんな時だ、聞きなれた彼女の相棒の声が聞こえた……そしてフランは、嫌な予感と共に目を開ける。
「──ロム!?」
なんと、ロムは悪魔の石に飛びかかり、擬態した肉体に歯を立てたのだ……。
「ダメ──逃げなさい!!」
フランの叫びは虚しく辺りに響く──だが時すでに遅く、悪魔の石から飛び出した赤い液体に、ロムは飲まれてしまった。
「ロムゥゥゥゥ!?」
フランは焼ける長銃の銃身を握りしめ、悪魔の石に殴りかかった。
手袋越しに熱が伝わり、顔を歪めながらも相棒を助けるため、自らの危険を忘れ一心不乱に無駄な抵抗を続けたのだ……。
「フラン様──伏せて!!」
いつしか、赤髪のアリエルの右腕は悪魔の石の中に差し込まれていた。
石は膨張し、爆発するように弾け飛ぶ──。
「──すみません……間に合いませんでした……」
化け物に噛まれた為だろうか? 機械の手足が剥き出しになった少女は、戦場に残った二つの石と自分の友を見て、悲しそうな声で呟くのだった……。
アリエル達は打ち合わせを終え、悪魔の石からなるべく近くに潜んでいる。
「完全に形を成していない、今しかありません。ただ問題は、悪魔の石が何処まで動けるのか分からないことと、回りの化け物をどうするか……ですが」
作戦の内容を一言で説明するのであれば、奇襲だ。
フランは援護の中、アリエルが特攻……そして、速やかに石の破壊。
「やっぱり危険よ、回りを化け物を退治してからじゃダメなの?」
「はい、小物を倒している最中に逃げられるのが一番厄介ですから」
フランの射撃で枝を撃ち、石を地面へと落とす。それをアリエルが弱らせ、心臓を叩き込む。
その後、化け物を退治して任務を終える予定だ……作戦と言われるほどの洗練されたものでは無いが、他に手段もなかった。
「安心してください。私は生き物じゃありません。侵食されることはありませんので」
彼女言葉に他意はないのだろう。それでもフランは、その言葉を聞き悲しそうな顔を見せた。
「そんな事を言わないの……みんなで無事に帰りましょうね?」
「はい、了解しました……。それでは準備は宜しいですか?」
フランとロムの顔を見るアリエル。どうやら準備は良いらしい……。
「では──行きます! 手はず通りに!」
アリエルは髪が赤く染まると同時に駆け出した──機械の体でこそ可能な、人知を超える早さで!!
フランの放つ銃弾は、悪魔の石の居る枝を見事抜く。しかし、まだ折れるには至らない。
「──一撃じゃ折れないのね!」
次弾を込め、もう一度狙いを定めた。
流石に気付いた化け物は、大きな音を立てた彼女を見つめている。
「これなら……どうかしら!?」
射線に存在した木の枝は、バキッ!? っと鈍い音を立て折れる。
動くことは出来なかったのか、悪魔の石は枝もろとも重力と共に落下をしていく──。
「──まったく……本当に見事な腕前ですね!?」
アリエルが大地を蹴った──二振りの刃を手にもつアリエルは、落ちてくる悪魔の石に空中でそれを突き立て、そのまま地面へと刺し、固定した!!
悪魔の石からしたら、擬態が仇になったのだろうか?
尻尾らしき部分に刺さった二振りのナイフは、動きを制限するには十分な効果があったようだ。
「これでも……喰らいなさい!!」
アリエルの早打ちが、石に向かって放たれた──一発二発どころではない、銃に込められる全弾を、刹那の間に撃ちきったのだ……。
化け物達も反応しきれなかった様で、唯一襲いかかる事が出来た一匹も、フランの援護によりアリエルにその牙が届くことは無かった。
「良かったです──今回は銃弾は通るようですね」
右手の銃を捨て、腰袋の中身を掴む。
そして、オートマタの核になる予備の心臓を、アリエルが起動させるためのコードを呟いた──。
「管理者コード:AriE─1─3。権限を……」
──しかしあろうことか、穴だらけになった悪魔の石のは、自らの尻尾を切り捨て逃走を図ったのだった!?
「しまった! 自切!?」
悪魔の石は尻尾だけを残し、フランの方角に向かい逃げる。
スライムの時の非では無い速度は、アリエルを焦らせるには十分だった──。
「──加速しない!? オーバーヒートですか!!」
アリエルの手足からは煙が上がり、髪の毛は元の白髪へと戻っていた。
追い付けない! 彼女は一瞬でその事を理解した。
「逃げて──フラン様!!」
複数の化け物達に飛び付かれながらも、アリエルは走り、弾を込め、悪魔の石に向かい発砲した──しかしそれは、石を止めるには至らなかった……。
「こ、来ないで! こっちに来ないで!」
慌てたフランは、何度も引き金を引いた。銃弾が当たる度に足を遅めるものの、石の進行を止める事までは出来なかった。
そして、彼女に起こる不幸はそれだけでは無かったのだ。
「嘘でしょ!? こんな時に──ジャムるなんて……」
薬莢の排出口に、空になった薬莢詰まっているのが見えた。
慌て取り外そうとするも、悪魔の石はもう間に合わんっとする所まで来ていたのだ。
「あ゛……あぁ……」
フランからは、声にならない声が上がる……。
恐怖と絶望のあまり、彼女は目を閉じ神頼みをした。
「──ガゥ!」
そんな時だ、聞きなれた彼女の相棒の声が聞こえた……そしてフランは、嫌な予感と共に目を開ける。
「──ロム!?」
なんと、ロムは悪魔の石に飛びかかり、擬態した肉体に歯を立てたのだ……。
「ダメ──逃げなさい!!」
フランの叫びは虚しく辺りに響く──だが時すでに遅く、悪魔の石から飛び出した赤い液体に、ロムは飲まれてしまった。
「ロムゥゥゥゥ!?」
フランは焼ける長銃の銃身を握りしめ、悪魔の石に殴りかかった。
手袋越しに熱が伝わり、顔を歪めながらも相棒を助けるため、自らの危険を忘れ一心不乱に無駄な抵抗を続けたのだ……。
「フラン様──伏せて!!」
いつしか、赤髪のアリエルの右腕は悪魔の石の中に差し込まれていた。
石は膨張し、爆発するように弾け飛ぶ──。
「──すみません……間に合いませんでした……」
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