アリエルオートマタ

リゥル

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第10話 主人と犬3

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「昨晩話した通り、今回の任務は少数精鋭による、悪魔の石の捜索が主な内容になるから」

 港町ドローム・ポートでの依頼二日目の早朝。

 フランの家に泊まり情報交換を済ませたアリエル達は、準備を整え、町の北西へと向かっていた。

「──了解です。昨晩言っていた、小型の化け物が退治された場所は、この辺りで間違いないのでしょうか?」
「えぇそうよ、この近辺に悪魔の石がことは間違いない……っと思うのだけど」

 アリエルは周囲を見渡した。

 西側は海に沿って崖が続いており、崖下を覗くと岩場で出来た断崖絶壁だ。
 そして辺り一面、木が生い茂る林になっている。

「しかしこれは……また厄介なところに込まれましたね」
「ん、逃げ込まれた? アリエルちゃんは、変わった表現をするのね?」

 不意に口ずさむアリエルの発言が気になったのだろう、フランはその事に疑問を投げ掛けた。

「えーっと……そうでしょうか?」
「えぇ、まるで悪魔の石が動くかの様に聞こえたものだから……」

 アリエルは彼女の疑問に納得をした。
 フランの口振りからするに、彼女は悪魔の石と言うものを見たことがなく、尚且なおかつ、その存在を詳しくは知らないのだろう。

「──はい、アレは動きますが」

 フランの足が急に止まる。アリエルを見つめる彼女の顔は、何処か青ざめているようにも見えた。

「全てがそうなのか知りませんが、少なくとも今まで私が出会った悪魔の石は、全て動いていました」
「は、ははは……冗談よね?」
「いえ、本当ですが?」
 
 まさかの事実に、フランは「そんなの、聞いてないわよ……」っと肩を落としているようだ。
 その姿を見たアリエルは、子首をかしげる。

「ま、まぁいいわ、やることは変わらないしね。それよりアリエルちゃん、その服装はどうかしら、動きにくくはない?」
「はい、問題ありません。これだけ動きやすければ、銃を撃つのにも支障はありません」

 アリエルは、二丁の自動式拳銃を、足に固定したホルスターから抜き、クイック・ドロウの構えをとって見せた。

 彼女の見事な早業に、ついフランは頭を抱えてしまう。

「な、なんか、アリエルちゃんみたいな年頃の子が銃を携帯しているのを見ると複雑な気分ね……」
「おかしいでしょうか? 確かに、作られてまだ十年程ですが……それでしたら、ナイフもありますが?」

 検討違いなアリエルの回答に、フランはその場にしゃがみこみ、腹を抱え笑い声を上げた。

「ふっふふ。本当、君と居ると退屈しないわね」
「私も、フラン様といると沢山勉強になります」

 アリエルにとっては初めて出来た、友人とも言っても過言ではない相手。
 彼女が喜ぶ、何げない一言が……笑い声が胸を熱くし、鼓動を早めた。
 そんな気持ちに戸惑うものの、覚えたての感情に心地よさを感じている。

 しかし、そんな二人の微笑ましいやり取りを、面白く思わないものが現れたのだった──。

「──ワンッワンワン!」
「ちょっと、ロム。くすぐったい、くすぐったいから!?」

 ロムは座り込むフランに飛び付き、顔を舐め回す。
 まるで、焼きもちでも妬いているかのように、一心不乱に自分をアピールして、尻尾を振るている。

「大丈夫、ロムも大切な相棒だから。こら、落ち着いて」

 そんな状態を見かねてか、アリエルは銃をしまい、ロムを両手で抱き上げた。

「ロム様、フラン様がお困りになっている様子です」
 
 彼女が嫌がっていると勘違いしたアリエルは、顔が向き合うようロムを持ち上げ注意を促す。
 
「──ロ、ロム様?」

 しかし、その考えを知ってか知らずか、ロムは近くにあるアリエルの頬を、唐突に舐め始めたのだ。

「──きっとね。ロムも、アリエルちゃんと友達になりたいんじゃないかな」
「私と……友達に?」

 舌を出し「キュゥーン」っと鳴くロムに向かい、アリエルは自身の素直な心情を口にした。

「……私も、ロム様と友達が良いです」っと。

「それじゃ、新たな友情も結ばれたことだし。お仕事をちゃっちゃと済ませましょうか!?」
「はい。御二方とも、改めてよろしくお願いします」

 ロムを地面へと下ろし、二人と一匹は捜索活動を再開した。
 いつしかアリエルの表情は、本人も無自覚なまま、自然な笑みが溢れていたのだった──。
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