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第20話 俺も、まだまだ青かった
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ダンジョン探索から数日が立ち、シャルも随分仕事が板についてきた。そんなとある日の早朝の事だ──。
「──マサムネさん、そこを退いてください。掃除の邪魔になります!」
「あ、あぁ……すまない……」
店のカウンターで、青色の透明な石ころを眺めていると、シャルに邪魔物扱いされた。
メイド服に袖を通した彼女は、本日も良い仕事ぶりを見せている……店の亭主が、頭が上がらないほどに。
彼女が店に来てからと言うもの、売り上げも三割増しほど増え、店の経営も中々の調子を見せている。
増えた客層は、当然男ばかり……まったく、雄と言うのは悲しい生き物だ。
部屋の中で自分の居場所を探していると、木で出来た店の扉が擦れ、甲高い音と共に開かれた──。
「──いらっしゃい」
「──いらっしゃいませ!」
早速客が来たようだ。今日も幸先の良いスタートがきれそう……。
「──二人とも、今日も私がいらっしゃいました!!」
開かれた扉からは、明るめの栗色の髪をした、齢十六歳程の、剣士の装いをした美少女が現れた……言うまでもない。
「──なんだ……サクラか」
「なんだって……私で悪かったですね! マサムネさんはもっと美人さんにでも来てもらいたかったのかな!?」
話ながらもサクラは俺の前まで詰め寄ってくると、少しあざとく頬を膨らまして見せる。
大概の男は、そんな風にされたら「別の人がよかった」とは言えないだろう──。
「いや、美少女や美人より客がよかった」
──しかし俺は違う。もう良い年のオッサンだ。
残念ながら、可愛い子の仕草や色仕掛けにかかるほど、青くはない。
どうやらサクラも、俺の返答に些か気になることがあったらしい。
口を尖らせ「マサムネさんは、本当つれないです!」と口にはするものの、何故か少し嬉しそうにも見える。
俺はそんな彼女を見て、疑問を口にした。
「なぁサクラ。ここ数日毎日来ているが、もしかして仕事が無いんじゃないか?」
「なっ! 何を言ってるのかな? マサムネさん、べ、べちゅに──!?」
あ、噛んだ……。
サクラのやつ、図星を言われ慌てているようだ。
まぁこの際、丁度いいって事にしておこうか?
「そうか。もし嫌じゃなければだが、俺からの依頼を一件受けてはくれないか?」
「──えっ……依頼?」
突然すぎただろうか? サクラは少し困惑した様子で、俺に質問の意味を問いかけた。
「そうだ、依頼だ。内容を聞き、労働をしてもらい、それに見合った対価を支払う事だな」
「い、依頼の意味は知っていますよ。内容です、内容!」
俺は大きな声で突っ込む彼女に「すまない、冗談だ」と笑って見せた。
やはり猫を被ろうと素を見せようと、彼女は彼女の様だ。
根は素直で……真面目で、それでいて真っ直ぐだ。
「実は少々、第一の箱庭に用が出来てな。護衛の為、腕の良い冒険者を探そうと思っていたんだ」
「腕の……良い冒険者?」
自分を指差すサクラを見ると、どうや満更でも無い様子がうかがえた。
俺は紙に、今回の契約金額を見せ「賃金はこれぐらいでどうだろうか?」と彼女に提示した。
内容的には、相場で二名が護衛に雇ったと仮定した時と同じ金額だ、彼女には充分その価値はある。
「こ、こんなに……? コホンッ。マサムネさんは命の恩人ですし、そんな風に言われたら、私も断る訳にはいかないかな? なんて……」
その言葉を聞いた俺は、彼女に向かい右手を差し出した。
それを見たサクラもその手を取り、固く握手を交わす。
「それでは契約は成立だ」
どちらともなく手を離すと、サクラは不意に覗き込み、悪戯な笑顔を向ける──。
「それでは、マサムネさんは私の契約主だから、旦那様とでも呼んだ方がいいのかしら?」
──っと、困らせる様な発言と共に。
ただここで、変に照れる訳にはいかない。
冒険中の主導権を握られる前に、大人の余裕を……見せてやろう!
「そうだな。せっかくならメイド服も着て貰えれば、なおよしかな?」
「うっ……。なんかマサムネさん、私のあしらい方が上手くなってないですか? 少し、悔しいです……」
本当に悔しそうに、両頬を膨らませて見せる。
可愛らしいのだが、それ。なんか癖になっていないか?
「俺みたいなのがダンジョンで生き残るには、見て、学習して……少しばかり小賢しくないと生き延びれないからな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後俺達は、出発の準備を終えシャルに簡単な引き継ぎを済ませる。
「じゃぁすまないが、留守を頼むぞシャル」
俺達の話を聞いたサクラは、ハッとした顔をした。そして、シャルに何かを耳打ちしているようだ。
すると、シャルは「ほ、本当にするんですか!」っと大きな声をあげる。
そして謎のため息の後、俺のすぐ手前まで歩きだし──。
「──え、えーっと……ご無事にお帰りになられて下さい。それではいってらっしゃいませ。だ、旦那様!」
──っと、スカートをちょいっとつまみ、可憐にお辞儀を見せたのだ。
その慣れない初々しい仕草が、可愛らしく ……なんと言えば良いのだろうか。
「これは……二人に一本とられたかな?」
今のは悪く無かったと、俺も心のどこかで思っている。
これは素直に敗けを認めておくべきだ。
そう思ってしまう辺り、俺も男であり、まだまだ青いのかも知れないな。
「──マサムネさん、そこを退いてください。掃除の邪魔になります!」
「あ、あぁ……すまない……」
店のカウンターで、青色の透明な石ころを眺めていると、シャルに邪魔物扱いされた。
メイド服に袖を通した彼女は、本日も良い仕事ぶりを見せている……店の亭主が、頭が上がらないほどに。
彼女が店に来てからと言うもの、売り上げも三割増しほど増え、店の経営も中々の調子を見せている。
増えた客層は、当然男ばかり……まったく、雄と言うのは悲しい生き物だ。
部屋の中で自分の居場所を探していると、木で出来た店の扉が擦れ、甲高い音と共に開かれた──。
「──いらっしゃい」
「──いらっしゃいませ!」
早速客が来たようだ。今日も幸先の良いスタートがきれそう……。
「──二人とも、今日も私がいらっしゃいました!!」
開かれた扉からは、明るめの栗色の髪をした、齢十六歳程の、剣士の装いをした美少女が現れた……言うまでもない。
「──なんだ……サクラか」
「なんだって……私で悪かったですね! マサムネさんはもっと美人さんにでも来てもらいたかったのかな!?」
話ながらもサクラは俺の前まで詰め寄ってくると、少しあざとく頬を膨らまして見せる。
大概の男は、そんな風にされたら「別の人がよかった」とは言えないだろう──。
「いや、美少女や美人より客がよかった」
──しかし俺は違う。もう良い年のオッサンだ。
残念ながら、可愛い子の仕草や色仕掛けにかかるほど、青くはない。
どうやらサクラも、俺の返答に些か気になることがあったらしい。
口を尖らせ「マサムネさんは、本当つれないです!」と口にはするものの、何故か少し嬉しそうにも見える。
俺はそんな彼女を見て、疑問を口にした。
「なぁサクラ。ここ数日毎日来ているが、もしかして仕事が無いんじゃないか?」
「なっ! 何を言ってるのかな? マサムネさん、べ、べちゅに──!?」
あ、噛んだ……。
サクラのやつ、図星を言われ慌てているようだ。
まぁこの際、丁度いいって事にしておこうか?
「そうか。もし嫌じゃなければだが、俺からの依頼を一件受けてはくれないか?」
「──えっ……依頼?」
突然すぎただろうか? サクラは少し困惑した様子で、俺に質問の意味を問いかけた。
「そうだ、依頼だ。内容を聞き、労働をしてもらい、それに見合った対価を支払う事だな」
「い、依頼の意味は知っていますよ。内容です、内容!」
俺は大きな声で突っ込む彼女に「すまない、冗談だ」と笑って見せた。
やはり猫を被ろうと素を見せようと、彼女は彼女の様だ。
根は素直で……真面目で、それでいて真っ直ぐだ。
「実は少々、第一の箱庭に用が出来てな。護衛の為、腕の良い冒険者を探そうと思っていたんだ」
「腕の……良い冒険者?」
自分を指差すサクラを見ると、どうや満更でも無い様子がうかがえた。
俺は紙に、今回の契約金額を見せ「賃金はこれぐらいでどうだろうか?」と彼女に提示した。
内容的には、相場で二名が護衛に雇ったと仮定した時と同じ金額だ、彼女には充分その価値はある。
「こ、こんなに……? コホンッ。マサムネさんは命の恩人ですし、そんな風に言われたら、私も断る訳にはいかないかな? なんて……」
その言葉を聞いた俺は、彼女に向かい右手を差し出した。
それを見たサクラもその手を取り、固く握手を交わす。
「それでは契約は成立だ」
どちらともなく手を離すと、サクラは不意に覗き込み、悪戯な笑顔を向ける──。
「それでは、マサムネさんは私の契約主だから、旦那様とでも呼んだ方がいいのかしら?」
──っと、困らせる様な発言と共に。
ただここで、変に照れる訳にはいかない。
冒険中の主導権を握られる前に、大人の余裕を……見せてやろう!
「そうだな。せっかくならメイド服も着て貰えれば、なおよしかな?」
「うっ……。なんかマサムネさん、私のあしらい方が上手くなってないですか? 少し、悔しいです……」
本当に悔しそうに、両頬を膨らませて見せる。
可愛らしいのだが、それ。なんか癖になっていないか?
「俺みたいなのがダンジョンで生き残るには、見て、学習して……少しばかり小賢しくないと生き延びれないからな?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後俺達は、出発の準備を終えシャルに簡単な引き継ぎを済ませる。
「じゃぁすまないが、留守を頼むぞシャル」
俺達の話を聞いたサクラは、ハッとした顔をした。そして、シャルに何かを耳打ちしているようだ。
すると、シャルは「ほ、本当にするんですか!」っと大きな声をあげる。
そして謎のため息の後、俺のすぐ手前まで歩きだし──。
「──え、えーっと……ご無事にお帰りになられて下さい。それではいってらっしゃいませ。だ、旦那様!」
──っと、スカートをちょいっとつまみ、可憐にお辞儀を見せたのだ。
その慣れない初々しい仕草が、可愛らしく ……なんと言えば良いのだろうか。
「これは……二人に一本とられたかな?」
今のは悪く無かったと、俺も心のどこかで思っている。
これは素直に敗けを認めておくべきだ。
そう思ってしまう辺り、俺も男であり、まだまだ青いのかも知れないな。
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