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第四章 新天地

423話 聖刀制作二日目

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「小僧……。おぬし、今が大事な時期だと本当に理解しておるのか? 一体、何を考えておる」

 今朝方の事だ。

 トゥナと朝帰りをした俺は、こっそりと自宅に忍び込んだ。
 ハーモニーとティアの裏をかき、普段出入りに使っている勝手口ではなく、玄関から帰宅。
 しかし驚くことに、彼女達はそれを予測していたように、腕を組み待ち構えていたのだ。
 油断していた俺は、咄嗟の機転が利かず、え無く御用。
 情けなくも、顔に引っ掻き傷とビンタの跡をつけている……。

「いや~その……。返す言葉もございません」

 そして現在、俺は情けなくも皆が集まっている鍛冶場で縮こまっているのだ。

「まぁ良いわ。昨日の続き、よもや出来ぬとは言わぬよな?」

「あ、あぁ。こんな見た目だが気持ちは充実してる。どれだけだってやってやるさ!」

 起死回生の手も見えた。後はシンシを起こすのみ‼
 これでやる気が出ない訳がない。

「そうですか~。充実、どれだけでも……。カナデさん、昨晩はさぞお楽しみだったようですね!!」

「いえ、ハーモニーさん……。そう言う意味では無くてですね?」

 つい、敬語になってしまう。

 ここ最近、怒りっぱなしで可愛い顔が台無しなハーモニー。
 なんでこう、人がやる気を出すタイミングで水を差すかな?

 そして今日も今日とて、さも当然なご様子で、トゥナ、ハーモニー、ティアの三名は俺の仕事を見守り来ていた。

「本当の所はどうなんですかね~!」っと、頬を膨らませるハーモニ。

「ねぇ、どうして朝帰りって良くない事なの?」っと、純粋無垢な瞳で問いかけるトゥナに。

 極めつけにティアの奴は「し、刺激が強すぎますね……」っと、鼻に乙女に似つかわしくない詰め物をしていた。

 この三人ときたら……。
 平常運転すぎて、世界の危機だって事を忘れそうになるよ。

「まったく、なんて情けない。男子おのこ女子おなごの御機嫌伺いなどと……」

 年長者のガイアのおっさんが、ため息交じりで土下座中の俺に説教を始めた。
 しかし、男女差別はいけない。
 何故なら今日は、彼女達だけではないのだから──。

「おとん、後でおかんに報告しとくかんな。覚悟しとき」

 自分の作ったマジックアイテムの具合が見たいと、偶然ルームが居合わせていたのだ。
 その事を忘れていたのだろう、おっさんの顔色が見る見るうちに悪くなっていった……。

「宣言撤回じゃ、女子無くして男子は生まれぬ。小僧よ、娘っ子達を怒らせるとは何事じゃ!」

「おっさん……急に手のひら返しやがって」

 こんな人が打った剣で、救われた世界。本当に大丈夫なのだろうか?

 一向に進まぬ作業、流石に見かねたのだろう──。

「え~っと御二人とも? 随分前から火も着いてますし、いい加減仕事してくれませんかね?」

 っと、火炉の火を起こしていたオルデカが、呆れ顔で俺達のやり取りに口を出してきた。
 
 しかしタイミングが悪い。
 誰にも向けることが出来なかったモヤモヤの矛先は、彼のもとへ──。

「そんなの分かっておるわい!」

「あんたの緊張をほぐすために決まってるだろ!」

 っと、オルデカに八つ当たりをしてしまうダメ鍛冶師の俺達。

 彼を含め、周囲の者皆が俺達に冷たい視線を浴びせてきた。
 
 ヤメテそんな目で見ないで‼ って、いつまでもやっていても仕方がない。いい加減気持ちを切り替えよう。
 
「常談は終わりだ。ガイアおっさん、オルデカさん──やるぞ!!」

 心機一転、火箸を使いミスリルを赤々と燃える炭の中に突っ込んだ。
 そして鞴を使い空気を送り、熱せられるのをまった……。

「カナデさんも御師匠も、流石職人ですね。さっきの雰囲気、勢いだけでうやむやにする気なんて」

 さっきの仕返しなのだろう。オルデカがジト目のまま、俺達だけに聞こえる声で呟いた。

「む、無駄話をするでない!」

「そ、そんなことより直に沸く、準備をしてくれよ?」

 シンシ復活の二日目の作業は、こんなグダグダなままスタートを切ることになったのだった……。
 
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