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第四章 新天地
419話 心に熱を
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「ここに来て、今さらこんな事言うのもなんですが……。貴方の最高の仕事に、本当に俺なんかが槌を振ってもいいのかと思いまして」
遣り甲斐のある仕事、それは言い換えれば、責任と呼ばれる重圧。
今回が桁違いなのは、言うまでもない。
「オルデカ何を言っておる! 臆したか!?」
「そりゃ師匠……ビビりもしますよ」
オルデカは顔を伏せ、誰とも目を合わせようとはしない。
震えながら怯え、周囲の様子をうかがっている子犬の様だ。
「だ、だって師匠の元から逃げた俺が、こんな大舞台に立なんて……場違いってもんでしょ?」
「オルデカ……何を腑抜けた事を」
根っからの職人気質であるガイアのおっさんは、彼の物言いに納得がいかないみたいだな。
でも俺は、彼の気持ちは分からなくもない。
それに今回は、いままでで一番困難な仕事になる。仕方がないから助け船を出すか。
「まぁガイアのおっさん、そう責めてやるなよ」
さらに温度を上げるため、炉に炭を放り入れた。
人の情熱も炎と同じだ。例え消えかけていても、燃料を入れ空気を送る、そうすればまた燃え上がると信じて──。
「俺にも気持ちは分かるから。師匠が偉大過ぎると、弟子はプレッシャーや劣等感を感じるものなんだよ」
そして強い意思は燃え移る。
俺が出会った時は、確かに彼は腑抜けていたかもしれない。
しかし、ガイアのおっさんから譲り受けたと聞いたあの包丁には、一点の曇りも見られなかった。
逃げ出しても尚、おっさんに尊敬の念を抱いていた証拠だ。
「カナデさん……あんたはどうして平気なんですか?」
「平気って訳でもないんだけどな? 偉大なその相手を、越えるのが夢だから。立ち止まれないだけだよ」
鞴で空気を送り、さらに炭を足す。
「カナデさん……」
作業の手を止める気など無い。何故なら、彼は必ずまた槌を握る。
あれだけ切れる研磨の技術は、真剣に鉄と向かい合った者にしか身につける事は出来ないのだから。
「オルデカ、あんたはどうなんだ? おっさんに追い付きたい、越えたいなんて思ったことは一度も無いのか!?」
ミスリルを、温度の上がった火炉に入れた。
後は、熱が移るのを待つのみ!!
「俺も手を貸す。だからあんたも手を貸してくれないか? 一緒にそこのおっさんの心残りをなくして、引退に追い込んでやろうぜ!」
俺の一言に、オルデカは驚いた顔を見せた。
そして「カナデさん、貴方にはいつも驚かされる。くっく、師匠を引退に、悪くないですね」と、笑い始めたのだ。
やっと笑顔を見せたな?
俺も彼に向け「だろ?」っと笑って見せる。
「こら、まだまだ辞める気など無いわ!! ……じゃが、お前さんもわしの元から逃げ出してもなお鍛冶屋に居たのじゃ、ただほっつき歩いてただけではあるまい。その成果、この機に存分に振るってみせるのじゃ」
「師匠……」
オルデカの目に、心に情熱の火が灯ったのを感じた。
今はまだ小さな灯火でも、鉄を叩けばきっと強く燃え上がる。
俺達鍛冶屋ってのはそんな、単純な生き物だからな──。
「なに、それに失敗しようが責任は主で槌を振る小僧じゃ、心置きなく胸を借りるがよい」
「そ、そうかもしれないけど……。あれ、俺が今度は緊張してきたぞ?」
俺達、職人だけじゃない。
ギャラリーのトゥナもハーモニーも、ティアも皆が、声を上げて笑った。
さぁミスリルも俺達も、程よく熱を帯びた!
俺は、近くにあった手拭いを使い、袖が邪魔になら無いようにたすき掛けで固定する。
そして右手に小槌、左手に火箸を握り、火炉の中から、燃えるように赤く染まったミスリルを引き抜き、金床の上に置いた──。
「さぁ、オルデカ──来い!!」
右手に持った小槌で、叩くべく目標を二度叩いて見せた。
するとオルデカは振りかぶった大槌を「はいでさぁー!!」っと、目一杯い振り下ろしたのだ!
その一打は、金属を叩く大きな音を響かせ、魔力を含ませた七色の火花を散らしたのだった──。
遣り甲斐のある仕事、それは言い換えれば、責任と呼ばれる重圧。
今回が桁違いなのは、言うまでもない。
「オルデカ何を言っておる! 臆したか!?」
「そりゃ師匠……ビビりもしますよ」
オルデカは顔を伏せ、誰とも目を合わせようとはしない。
震えながら怯え、周囲の様子をうかがっている子犬の様だ。
「だ、だって師匠の元から逃げた俺が、こんな大舞台に立なんて……場違いってもんでしょ?」
「オルデカ……何を腑抜けた事を」
根っからの職人気質であるガイアのおっさんは、彼の物言いに納得がいかないみたいだな。
でも俺は、彼の気持ちは分からなくもない。
それに今回は、いままでで一番困難な仕事になる。仕方がないから助け船を出すか。
「まぁガイアのおっさん、そう責めてやるなよ」
さらに温度を上げるため、炉に炭を放り入れた。
人の情熱も炎と同じだ。例え消えかけていても、燃料を入れ空気を送る、そうすればまた燃え上がると信じて──。
「俺にも気持ちは分かるから。師匠が偉大過ぎると、弟子はプレッシャーや劣等感を感じるものなんだよ」
そして強い意思は燃え移る。
俺が出会った時は、確かに彼は腑抜けていたかもしれない。
しかし、ガイアのおっさんから譲り受けたと聞いたあの包丁には、一点の曇りも見られなかった。
逃げ出しても尚、おっさんに尊敬の念を抱いていた証拠だ。
「カナデさん……あんたはどうして平気なんですか?」
「平気って訳でもないんだけどな? 偉大なその相手を、越えるのが夢だから。立ち止まれないだけだよ」
鞴で空気を送り、さらに炭を足す。
「カナデさん……」
作業の手を止める気など無い。何故なら、彼は必ずまた槌を握る。
あれだけ切れる研磨の技術は、真剣に鉄と向かい合った者にしか身につける事は出来ないのだから。
「オルデカ、あんたはどうなんだ? おっさんに追い付きたい、越えたいなんて思ったことは一度も無いのか!?」
ミスリルを、温度の上がった火炉に入れた。
後は、熱が移るのを待つのみ!!
「俺も手を貸す。だからあんたも手を貸してくれないか? 一緒にそこのおっさんの心残りをなくして、引退に追い込んでやろうぜ!」
俺の一言に、オルデカは驚いた顔を見せた。
そして「カナデさん、貴方にはいつも驚かされる。くっく、師匠を引退に、悪くないですね」と、笑い始めたのだ。
やっと笑顔を見せたな?
俺も彼に向け「だろ?」っと笑って見せる。
「こら、まだまだ辞める気など無いわ!! ……じゃが、お前さんもわしの元から逃げ出してもなお鍛冶屋に居たのじゃ、ただほっつき歩いてただけではあるまい。その成果、この機に存分に振るってみせるのじゃ」
「師匠……」
オルデカの目に、心に情熱の火が灯ったのを感じた。
今はまだ小さな灯火でも、鉄を叩けばきっと強く燃え上がる。
俺達鍛冶屋ってのはそんな、単純な生き物だからな──。
「なに、それに失敗しようが責任は主で槌を振る小僧じゃ、心置きなく胸を借りるがよい」
「そ、そうかもしれないけど……。あれ、俺が今度は緊張してきたぞ?」
俺達、職人だけじゃない。
ギャラリーのトゥナもハーモニーも、ティアも皆が、声を上げて笑った。
さぁミスリルも俺達も、程よく熱を帯びた!
俺は、近くにあった手拭いを使い、袖が邪魔になら無いようにたすき掛けで固定する。
そして右手に小槌、左手に火箸を握り、火炉の中から、燃えるように赤く染まったミスリルを引き抜き、金床の上に置いた──。
「さぁ、オルデカ──来い!!」
右手に持った小槌で、叩くべく目標を二度叩いて見せた。
するとオルデカは振りかぶった大槌を「はいでさぁー!!」っと、目一杯い振り下ろしたのだ!
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