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第四章 新天地
第380話 魔法
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「なんで一人でなんですか~! 私も連れてって下さいよ!!」
大声を上げながら、ハーモニーは俺の服を掴む。
しかし、こちらも引くことは出来ない。
「いや駄目だ、連れていくには危険すぎる。今回は俺一人で行く。これは絶対だ!」
「でも、危険なのはカナデさんも同じじゃ無いですか~! なんでカナデさん良くて、私は駄目なんですか!?」
「それは……」
この先を言葉にできず、俺は飲み込んだ。
大切な仲間達相手に、口にすることは気が引けたのだ。
困り果てた俺は、情けなくもキサラギさんに目線を送り助けを求めた。
すると、察してくれたのだろう。
「──ハーモニー、聞き分けるのじゃ」
っと、助け船を出してくれたのだ。
ハーモニーも、年長者であり、元自分が住んでいた里長。
そんな人の話を無視するなど、出来はしないだろう。
「つまるところ、わっちらが居たのでは足手まといになると、そう言いたいのじゃろ?」
「……はい、言い方は悪いですが。トゥナが本当に魔王の討伐を考えているなら、グローリアの町へ向かっている気がするんです。俺一人なら、例え魔物の軍勢でも無心で姿を隠せるから……」
これが考え抜いた上で、一番安全で可能性の高い手段だ。
トゥナと合流さえすれば、二人でなら逃げ切るぐらいは……。
「そんなの──そんなの納得出来ません!!」
「ハーモニー……」
「ハーモニー様……」
彼女が納得できないのは仕方がない事だろう。
これは最善の手段であり、最良の手段ではない。
なんせ、彼女達の気持ちは置き去りなのだから……。
「トゥナさんには悪いと思います……。でも置いていくぐらいなら行かないで下さい! もし行くのなら、私も連れていって……」
心の底から絞り出したかのような悲痛な叫びが、俺の胸を打つ。
子供のように人目を憚らずボロボロと涙を流し、ハーモニーは訴え掛けた──。
「もう嫌なんですよ~離れるのは……。わがままで嫌われても良い、カナデさんと離れるぐらいなら」っと……。
そんなハーモニーを、ふとティアが後ろから抱き締める。
同じように涙を流し、何度も何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しながら……。
ティアが何を思って謝っているのか、はっきりとは俺には分からない。
しかしハーモニー同様に、ティアにも大切な思いがあり、彼女が流す一粒一粒の涙と「ごめんなさい」は、小さな少女が次の言葉を言うのを思いとどまらせるには十分だった。
俺は知っている。口ではあんな風には言ったが、ハーモニーはとても優しくて強い女性だ。
だからトゥナを見殺しになどできないし、今もティアの手を振りほどけずに居るのだと──。
「カナデ様……お願いします! フォルトゥナ様を……フォルトゥナ様を連れて帰って下さい。それを無事に成し遂げることが出来るのは、きっと世界中でも貴方だけなので……。情けない、本当に情けない話です。結局私は、いつも誰かにすがる事しかできないのですね……」
「そんな事は無いよ、ハーモニーが……ティアが。そしてトゥナが居たから、俺は大切なものがこうして出来た。そして皆で笑いながら生活を送る……それは俺の願いでもあるんだから」
その言葉を聞いたハーモニーは、きっと引き留めることも、連れていってもらうことも無理だと理解したのだろう。
小さく「そうですよね……」っと呟き、俺を見つめた。
「カナデさん……。私、やっぱり嫌われたくないです。後、今酷いこと言ってしまいました、トゥナさんにも謝らないといけません。絶対……絶対に、二人揃って戻ってきてください」
「あぁ、約束するハーモニー。だから信じて待っていてくれ」
俺は片膝を着き、そっとハーモニーのアゴに手を伸ばす。ゆっくりと顔を寄せ、唇を重ねた。
すると先程までの涙は晴れ、照れたようにはにかんだ笑顔を見せてくれたのだ。
なんとか納得をしてくれたみたいだ……よかった。
立ち上がると、今度はハーモニーを後ろから抱き抱えたままのティアと目が合う。
「無事にお帰りになられるのを、心から御待ちしております」
「あぁ、トゥナの事は任せろ。俺の留守を頼んだぞ?」
手を彼女の首の後ろに回し、引き寄せるように唇を奪った。
自分には無いと思っていたのだろうか? ティアは顔を染め、俺から視線を外してしまう。
彼女の瞳に浮かんでいた滴も、接吻と言う魔法で、何処かに消えてしまったのだった──。
大声を上げながら、ハーモニーは俺の服を掴む。
しかし、こちらも引くことは出来ない。
「いや駄目だ、連れていくには危険すぎる。今回は俺一人で行く。これは絶対だ!」
「でも、危険なのはカナデさんも同じじゃ無いですか~! なんでカナデさん良くて、私は駄目なんですか!?」
「それは……」
この先を言葉にできず、俺は飲み込んだ。
大切な仲間達相手に、口にすることは気が引けたのだ。
困り果てた俺は、情けなくもキサラギさんに目線を送り助けを求めた。
すると、察してくれたのだろう。
「──ハーモニー、聞き分けるのじゃ」
っと、助け船を出してくれたのだ。
ハーモニーも、年長者であり、元自分が住んでいた里長。
そんな人の話を無視するなど、出来はしないだろう。
「つまるところ、わっちらが居たのでは足手まといになると、そう言いたいのじゃろ?」
「……はい、言い方は悪いですが。トゥナが本当に魔王の討伐を考えているなら、グローリアの町へ向かっている気がするんです。俺一人なら、例え魔物の軍勢でも無心で姿を隠せるから……」
これが考え抜いた上で、一番安全で可能性の高い手段だ。
トゥナと合流さえすれば、二人でなら逃げ切るぐらいは……。
「そんなの──そんなの納得出来ません!!」
「ハーモニー……」
「ハーモニー様……」
彼女が納得できないのは仕方がない事だろう。
これは最善の手段であり、最良の手段ではない。
なんせ、彼女達の気持ちは置き去りなのだから……。
「トゥナさんには悪いと思います……。でも置いていくぐらいなら行かないで下さい! もし行くのなら、私も連れていって……」
心の底から絞り出したかのような悲痛な叫びが、俺の胸を打つ。
子供のように人目を憚らずボロボロと涙を流し、ハーモニーは訴え掛けた──。
「もう嫌なんですよ~離れるのは……。わがままで嫌われても良い、カナデさんと離れるぐらいなら」っと……。
そんなハーモニーを、ふとティアが後ろから抱き締める。
同じように涙を流し、何度も何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しながら……。
ティアが何を思って謝っているのか、はっきりとは俺には分からない。
しかしハーモニー同様に、ティアにも大切な思いがあり、彼女が流す一粒一粒の涙と「ごめんなさい」は、小さな少女が次の言葉を言うのを思いとどまらせるには十分だった。
俺は知っている。口ではあんな風には言ったが、ハーモニーはとても優しくて強い女性だ。
だからトゥナを見殺しになどできないし、今もティアの手を振りほどけずに居るのだと──。
「カナデ様……お願いします! フォルトゥナ様を……フォルトゥナ様を連れて帰って下さい。それを無事に成し遂げることが出来るのは、きっと世界中でも貴方だけなので……。情けない、本当に情けない話です。結局私は、いつも誰かにすがる事しかできないのですね……」
「そんな事は無いよ、ハーモニーが……ティアが。そしてトゥナが居たから、俺は大切なものがこうして出来た。そして皆で笑いながら生活を送る……それは俺の願いでもあるんだから」
その言葉を聞いたハーモニーは、きっと引き留めることも、連れていってもらうことも無理だと理解したのだろう。
小さく「そうですよね……」っと呟き、俺を見つめた。
「カナデさん……。私、やっぱり嫌われたくないです。後、今酷いこと言ってしまいました、トゥナさんにも謝らないといけません。絶対……絶対に、二人揃って戻ってきてください」
「あぁ、約束するハーモニー。だから信じて待っていてくれ」
俺は片膝を着き、そっとハーモニーのアゴに手を伸ばす。ゆっくりと顔を寄せ、唇を重ねた。
すると先程までの涙は晴れ、照れたようにはにかんだ笑顔を見せてくれたのだ。
なんとか納得をしてくれたみたいだ……よかった。
立ち上がると、今度はハーモニーを後ろから抱き抱えたままのティアと目が合う。
「無事にお帰りになられるのを、心から御待ちしております」
「あぁ、トゥナの事は任せろ。俺の留守を頼んだぞ?」
手を彼女の首の後ろに回し、引き寄せるように唇を奪った。
自分には無いと思っていたのだろうか? ティアは顔を染め、俺から視線を外してしまう。
彼女の瞳に浮かんでいた滴も、接吻と言う魔法で、何処かに消えてしまったのだった──。
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