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第四章 新天地

第378話 迎え2

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「ふっふ、またお義母さんと呼んでくれるのね、嬉しいわ。中に入りましょうか? どうぞお座りになって」

 侍女が車椅子を押し、トゥナのお母さんを部屋に居れると、テラスの大きな窓ガラスは閉められた。

 俺も進められるがまま彼女の対面となる、置いてある椅子へと座る。

「ありがとう、貴女は下がって。カナデ君と、二人っきりで話したいの」

「はい、かしこまりました。あまり御無理なさらないよう御願いします……」

 侍女の女性は心配そうな面持ちで深々と頭を下げた後、部屋から立ち去った。

 確かにトゥナのお母さん……以前より痩せて居るだけじゃない。
 化粧で隠してあるものの、それでも彼女の目元にはクマが見られる。

 流石に心配だ……。

「──それにしても、巫女の言う通りね。貴方が直接来たと言う事は、あの子を向かえ入れる準備が整った………っと言うことかしら?」

 巫女? あぁ、もしかして前にトゥナが言ってた占い師の事か。
 なるほど、俺がここに来る事が分かっていたと……まるで未来予知だな。

「はい、今日はトゥナを迎えに来ました」

「そう、嬉しいわ。しっかり約束を守ってくれたのね……」

 トゥナのお母さんに差し出された手を、俺は取った。
 彼女の細く、冷たくなっている手と握手を交わす。

「あ、あの……差し出がましい様ですが、体のお加減、宜しくないのでしょうか?」
 
「大丈夫ですよ。少し心配事があって、あまり眠れていないだけですから……」

 心配事で寝れてない…?
 それって、グローリアが滅びた事に関係が?
 いや、彼女のこの表情……何か、胸騒ぎが──。

「……あの──トゥナは何処に?」

 問いかけに対し、トゥナのお母さんは俺から目を背けた。

「ごめんなさい、カナデ君。実はあの子は……もう、ここにはいないの」

 やはりそうか……。

 彼女が寝れていない理由、それはやはりトゥナかここから居なくなったからだ。
 前の家出とは違い、今の彼女の体は呪いに蝕まれている。心配しない親が居るはずがない……。

「まったくあの家出娘め! 今度は何処でほっつき回ってんだよ」

「いえ、今回はそうじゃないの。あの子は今頃グローリアへ……騎士団を引きつれて支援へ向かったのよ」

「──っ!?  あんな体で……ですか?」

「えぇ……」

 なんで、その可能性を考えなかったんだ……。
 あれだけの大事件、確かにトゥナの性格じゃじっとしてられる訳がない。

「あまり怒らないでやってくださいね。あの子が向かった理由……それはあなたのためでもあるの」

「俺の……ため?」

 どういう意味だろう、今まで俺達と親しくしてきた人達を助ける、そう言う意味だろうか?

「……実はこの事は、他国へも口外してないらしいのですが──」

 この時は思いもしなかった。
 彼女の口から、その名前が飛び出すとは……。

「巫女の予言では──彼の魔王が復活したと……」

「魔王の……復活!?」

 それでどうしてトゥナが……。
 そんなの各国が手を取り合い、事に当たれば良いだろ!? 別に彼女が行くことは──。

「当然、討伐には勇者の孫であるあなたの名前も上がったわ。大臣や一部の貴族達は、断れないことを知っていて協力させようって……」

 きっと開拓村を人質にって事だろう、それは、十分考えられた事態だ。しかし……。

「でもね、あの子が『私が絶対に魔王を倒すから、カナデ君を巻き込まないで!』っと、リベラティオ王……私の夫に進言したのよ」

「トゥナが……俺の代わりに魔王討伐を──?」


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