異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第四章 新天地

第371話 魔物の大移動

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「──ご無沙汰しております。エルピスの皆様」

 先程のギルドの職員の代役だろう女性が、挨拶と共にこちらに向かい歩いてきた。

 彼女は確か、ギルドでララちゃんの薬を取り扱いたいと言った職員の……名前はウルドさんだったはず──。

「こんにちは。えーっと、ウルドさんでしたよね? ご無沙汰してます」

 軽い挨拶を済ませると、彼女は俺達に向かいに座る。 

 上の者を連れて来るって言ってたが、この人それなりに偉い人だったのか。
 言われてみれば、あの時も自分の考えで交渉を進めていたな……。
 少なくともあの場で決定権を持つ程に、偉いと言う事なのだろう。
 
「こちらは仲間のハーモニーです。それでこちらが、ギルド職員のウルドさんだよ」

 互いを知っている俺が仲介を済ませ、本題へと移ることにした。

「それで、今回は少し教えてほしいことがありまして」

「──魔物の異変について、ですよね? 先程の彼女からうかがっております」

 どうやら先ほどの職員、まったく話を聞いていなかったと言う訳では無いらしい。

「話が早くて助かります。それで、こちらでは何か情報を掴んでいたりは……?」

 ウルドさんは地図を出し、カウンターに広げる。
 そして俺達が通ってきた塩湖のすぐ近くを、指で示した──。

「皆様は、この町とアウラダの間にあるダンジョンはご存知でしょうか?」

「はい知ってます。ここに来るまでにすでに二度、横切ってますから」

 俺は視線を隣に送り「おかしなところは無かったと思うけど……」と答えると、ハーモニーも頷いた。

「実はですね、不可解なことに私共ギルドでは異例の目撃例がありまして……。随分前から幾度となく、無数の魔物がダンジョンに入っていくのを確認しております。今まで中から外に出てくることはあっても、その逆は例が無かったのですが……」

 魔物達が、ダンジョンの中に入って行く?
 そう言えば、魔物の誕生の地なんて誰かから聞いたっけ。里帰り……って訳じゃないよな。

「それもここのダンジョンだけではなく、全世界の管理されている他のダンジョン全てで、一斉に魔物の奇行が確認されているようです」

「一斉にですか~!? そんな話、今まで聞いたことがありませんね……」

 なるほど、そんなことが。
 だからここ最近、魔物との遭遇が無かったのか。

「何度か調査隊を差し向けましたが、それらは全てグローリアに向けて進んでいると思われます……」

「なっ!? もしかして、グローリアは魔物に──むぐ!?」

 ハーモニーの手は、慌て俺の口を塞いだ。

 そうだ。リベラティオはまだ、グローリアが滅びたことを公開していなかったんだ。

 しかしウルドさんの様子を見ると、聞き返す素振りもなく微笑んでいる。
 彼女、もしかしたらグローリアの事を知っているのかもしれないな。

「私共が、現在知っている情報は以上です。何かしらの参考になられたでしょうか?」

「ありがとうございます。胸のつかえがとれました」

 油断は出来ないが、それなら帰り道も平和に済むだろう。
 ただ、どうしてそんなことになっているかが問題だ……。

 もしかしたら、魔族がまた何かを企んで?
 十分考えられる、嫌な予感しかしないな。

 まぁここで考えても仕方がないか。
 ティアはこの事を知らないかもしれない、一応伝鳥で連絡を入れておこう。

 そうだ、折角ウルドさんが目の前に居る。
 ついでにララ達の様子を、確認しておこうか?

「ウルドさん。それともうひとつ、お聞きしたいことが……」

 俺がララちゃん一家について聞こうとした、その時だった──。

「お兄さん! お兄さんじゃないですか!?」

 ──いつぞやに聞いた懐かしい少女の声が、俺の耳に届いたのだった。
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