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第四章 新天地

第359話 幸せの形

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 なんとか、無事話がまとまった……。

 具体的には、ルームを連れていくこと。
 伝鳥を使った定期連絡を入れることで、手を打つことに成功した。

 その辺り、若干ハーモニーは不服のようだったが。

「まぁティアさんとは、皆が揃うまでは抜け駆け禁止と約束しましたしね~」

 ──っと、最終的には納得していた。

 確かトゥナも、前にそんなようなことを……。

 良く分からないが当事者を置き去りで、彼女達の間で密約が行われているらしい……まぁ、仲良くしてくれるならいいんだけど。

 しかし男女の関係。自分で言うのもなんだが、何が起こるか分からないからな。
 ティアとしても、二人っきりの状況はまったく安心できなかったのだろう。

「──ところでカナデ様、ラクリマまでの移動は何を使われる御予定でしょうか?」

「んっ? いつも通り馬車でいくつもりだけど。急にどうした?」

「あー……実はですね、言い忘れてた事がありまして」

 言い忘れたこと? 
 これ以上、まだ何かあるのかよ……。

「えっと……カナデ様は一度傷付くのと、二度傷付くのどちらが宜しいでしょうか?」

「傷付くこと前提か……嫌な選択肢だな。嫌な事を何度も繰り返したくはないから一度で頼むよ」

「分かりました、ではついてきてください」

 ついてこいって……。
 
 結局俺は、謎の不安を抱えたままハーモニーと共に、ティアの後に着いていくことにした──。

「──あ~……ここって、なんの変哲もない普通の厩舎だよな? ユニコーン達専用の。あいつらに何かあったのか?」

 前にユニコーン達と約束した、彼等だけのマイホーム。
 村の外に出掛けることが多く、ティアや村人に面倒を見てもらって居たのだが……。

「まぁ、中に入って貰えば分かるかと」

 なんだそれ。この中に、俺が嫌がる何かがあるって事なのか。
 う~ん……こうしてても仕方がないか。覚悟を決めて、中に入ろう!

 俺は恐る恐る足を踏み入れた。
 二頭のために作られた建物。よって、中はさほど広くはない。
 精々六頭程が同時に生活ができる、それぐらいの広さだろう。

 そして目の前には、二頭の人影……いや、二頭の馬影が見える──って!?

 向こうもこちらに気付いた様だ「ヒヒーン」と、馬が鳴く声が聞こえた。

『カナデ!! 少しお腹のおっきなメスコーンが「んまぁ!? 久しぶりね。祝福しに来てくれたのかしら?」って言ってるカナ』

 そう……ミコの言う通り、いつの間にかメスコーンの腹には膨らみが見え、それは新たな命を宿していると理解した。

「い、いつの間に……」

 めでたい、非常にめでたいのだが、何故か素直に喜べない。
 完璧に先を越されて、ショックを受けている自分が──って、ティアが言ってた意味はこの事か! 

『カナデカナデ「歓迎に来てくれたのか? ありがたい。む、さか俺様が父親になる日が来るとはな。次はお前の番だ」って言ってるカナ、ちょっと気持ち悪いシ』

 オスコーン。こいつ、完全に人が……馬が出来てるじゃないか。
 子の親になる、それがこんなに馬を変えるとは。

 負けてられないか、俺も大人にならないとな──。

「おほん! あぁ~二頭とも。この度は、誠におめでとうございます」

 うっ、つい敬語になってしまった。
 先を越されたことで、本能的に心の何処かで優劣を作ってしまったのかもしれない……。なさけない。

「と、ところでハーモニー。さっきからなぜ、こっちをチラチラ見てるのかな? あとティア、クネクネしない!」

 分からない! この二人の言いたい事なんてぜ~んぜん、分からないからな!

『やれやれカナ……』

 あの、ミコさん? 前にも言ったけど、念話でため息をつくのはやめようね。

「あ~なんだ。二頭には今まで頑張ってもらったしな。そう言う事なら、今回は他の馬に頼むよ」

 流石に、この状態の二頭に頼むのは酷と言うものだ。
 こいつらも大切な仲間。素直に彼等には幸せになってほしいと思うしな。

「──お前達、元気な子を産むんだぞ?」

 激励の言葉をかけ俺はその場を去った。
 別に、二頭の幸せな姿が眩しかった……そういう訳では無い。
 
 外に出ると、相変わらずの嫌な空模様。
 原因はハッキリとは分からないけど、ユニコーン達の子供が生まれる頃には、この変な天候も良くなって、太陽に祝福されるといいな。

「ん~よし、俺も頑張らないとな!」

 あいつらの主人が、負けてなんて居られない。
 俺も頑張って、あいつら以上の幸せを掴んで……。

「──カナデ様、私達はその……」

「──いつでもいいんですよ~?」 

「何の事だよ……」

 別に馬を借りるべく、移動すると言うていで、俺はその場を小走りで逃げ出した。
 ハーモニーとティア、二人の熱い視線を背中に受けて……。

 

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