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第四章 新天地

第344話 問題解決2

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「凄いな! これ、一体どうやってくっついてるんだ?」

 ミスリルスライムが出した謎の液体。
 それをハンググライダーの穴の周りに塗り、先程切り出したバルログの飛膜を宛がうと──あら不思議! 落ちずに、見事に張り付いたのだ。

 その後、二匹のミスリルスライムが両面から補修箇所にくっつき、何かを始めたみたいだけど……。

「完璧にくっつくのはもう少し先スラ。作業中にあまり触ると、剥がれるスラよ」

「そ、そうなのか? それにしても便利だな……接着剤みたいなものか」

 この二匹、持ち帰りたいな……そんな事をボンヤリと考えていると──。

「──人間……やっぱり帰るスラか?」

 深刻そうな顔で、ミスリンが俺を覗き込む。

「まぁ、ミスリルを探してからだけどな? そうだミスリン。あのヒビが入った外皮、俺にくれないか?」

「それは良いスラけど……」

 何て言うか、元気がないな。
 今すぐ出て行くって言ってる訳じゃないんだ、しんみりするにはまだ早いだろ?

「どうした、何か気になることがあるのか? 聞いてやるから言ってみろよ」

「…………人間、僕も着いて行ったらダメスラか?」

 肩から飛び降り、地面から俺を見上げるミスリン。
 着いてくるつもりで……だから深刻そうな顔を。

「悪いことは言わない……やめとけって。一時の感情で動くと、後で後悔するぞ?」

「一時の感情じゃないスラよ。ずっと……ずっと昔から憧れてたスラ」

「昔からの……憧れ?」

 ミスリンが言う昔が、どれ程の話かは分からない。
 ただ、曇った空をボンヤリと眺める。
 そんな彼の遠い目を見ると、十年二十年じゃ無いことは推測できた。

「実は昔、ず~っと昔にも、この島のミスリルスライムが危機に陥ったことがあったスラ。その時も、人間が助けてくれて……」

「その人間って、もしかして……?」

 もしかしてじいちゃんか? 
 聖剣を打つためにここにミスリル取りに来たとしたら充分考えられるが……まさかな?

「あの時はまだ話せなくて、着いて行くことは無理だったスラ。でも今は違うスラよ……。人間、僕を連れて行って欲しいスラ──そしたら僕も、にんげんになれるかな?」

「このタイミングでそのネタかよ……ツッコまない、ツッコまないからな‼」

 こいつ、実は元ネタを知って……いや、考えるのはよそう。それより──

「でも、他の仲間達も居るだろ? ボスのお前が抜けるのは、流石に不味いんじゃないか?」

「グサ! っスラ……」

「ん?」

 ミスリンが急にその場で倒れて倒れて見せた……。
 顔のある面を地面にくっつけたのだから、死んだふりか何かだとは思うんだけど……分かりづらい。
 
「僕は──ボスじゃ無いスラ……」

「い、今なんて?」

「──だからボスじゃないスラよ!? 随分昔にボス争いに負けたスラ!」

 違ったのか……。

 行動力があるし、一匹だけ話すしで、勝手に彼が群れのボスだと思い込んでいた。
 いや、一時はボスしてたみたいだし、見立ては間違いとは言いきれないかもしれないが……。

「お、おぅ……それはすまなかった」

 取りあえず、謝っとけ。
 しかし、効果は今一つのようだ。むしろ「謝らないで欲しいスラよ!?」っと、泣く始末。

 うーん、どうしたものか……。

 連れて帰ってもいいけど、話せると言っても魔物だしな。
 でも、それはユニコーン達も同じか?

 ただ懸念は、ミスリルスライムは経験値が豊富……そのままだと、人間に見つかったら狩られるよな……。

「僕を連れてけば……いつでも新鮮なミスリルが取れるスラよ?」

「詳しく聞こうか──!」

 ミスリンの話によると、どうやら失われた外皮は十日もあれば完成するらしい。
 つまり外皮が出来次第、古いミスリルを使い外皮を割り、またミスリンが新たな外皮を作り出す……。

 時間は多少かかるものの、その繰り返しでミスリルが取り放題、って事らしい。

「──その手が……」

 俺も扱かった事の無い金属……ミスリルだって、どれ程要るかは分からない。
 なるほど、確かに魅力的な提案だ。

「どうスラか、お互いに持ちつ持たれつの関係スラよ。……やっぱり駄目スラか?」

 ずっと共に居た仲間と離れてまでも、憧れや夢の為に俺に着いて来たい。
 ったく、そんなの粋な理由……断れるわけがないじゃないか!

「まったく、交渉上手な奴め。ちょっと待ってろよ?」

 確か、マジックバックの中に……あった!!

「確か、赤い布を魔物の一番危険なところに結び付けるんだよな?」

 前にユニコーンにもつけたな。
 これが、飼い慣らされた魔物の証になるはず。

 テイムした魔物なら、いくらなんでも無闇に襲われることはあるまい。
 ところで、こいつの一番危険なところって何処だよ……時折問題発言するから口か?

 試行錯誤するものの、結局ハチマキの様に頭にしか付ける事は出来なかった。

「これで良し、まぁ、こんな所かな?」

 赤のハチマキを装備したその姿は、何処か誇らしげにも見える……。

「これでこれからは、本当に人間の仲間スラ……よろしくスラよ!」

「あぁ、よろしくな──ミスリン!」

 この時を境に、新たな仲間にミスリンが加わったのだった。

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