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第四章 新天地

第325話 ツーカー?

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 村を出て、何日ほど立ったのだろうか?
 辺りが間だ薄暗い早朝、目的地のミスリルスライムの島に向け、俺は走っていた。

「──カナデ! ボク、カナデが昨日話してたハンバーグが食べたいかな!」

 おかしい、何故こんなことになった。

 昨晩焚き火の火をミコと囲み、お互いの思い出を語り合っていたはずが、いつしか食べ物の話へ変わっており、それを聞いたミコのおねだりが度々行われていたのだ。

 そして現在も、この調子である。

「だから何度も言ってるだろ? 無事に事が済んで村に帰ってからだって!」

 早朝、まだ日が昇り始めの青い空に、凛とした冷たい風。
 昨晩の失敗を修正すべく、話題をクールに変えて見せる。

「それにしても、いつからだろうな? こんなふうに自ら危険におもむくなんて、この世界に来たばかりの俺じゃ考えもしなかったな……」

 哀愁漂う表情で、俺は呟いた。
 この雰囲気。流石のミコでも、食の話題から離れるだろう……。

「カナデ! ボク、カナデが昨日話してたスパゲッティーが食べたいかな!」

「──って恰好付かないだろ! 少しで良いから雰囲気を察してくれよ……」

 ダメだった。
 どうしてもこの子、頭の中はご飯で一杯らしい。

「カナデカナデ!」

「──今度はなんだよ!」

 どうせあれだろ? 昨晩の話の内容を考えると、きっと「お寿司ってのを食べたいカナ!」だ、何でもお見通し……。

「村を出た時の覚悟はどうしたのカナ。今のカナデは昔とは違うシ、過去より未来を見るべきカナ!」

 してやられた、こいつ……まさかこのタイミングで真面目な話だと?

「ミコ、今のはもう一回ボケるところ……いや、何でもない。それより見えたぞ、あれが目的の山じゃないか?」

 目の前には、錆びた鉄のような色をした巨大な岩の山が見えてくる。
 まるで、エアーズロック見たいな山だ。

 俺達は近くによって眺めてみる……。
 うん、急斜面だがそれでも何とか登れそうだ。
 
 その岩山に、足を踏み入れようとした時だ──。

「カナデ、さっき言い忘れたシ。ボクも一緒に頑張るカナ。だから弟をお願いだシ……」

「ミコ……あぁ、頼りにしてるからな!? だからミコも俺を信じてくれ」

 困難な山道だろうと、ミコが傍にいればきっと乗り越える事が出来る。
 険しい勾配の登山だろうと、笑い合いながら登ると不思議と苦にはならなかった──。

「ん~! 山頂についたぞ」

 山頂からは周囲が一望できた。

 地図で言うところの東側は海が広がり、近場には小さな切り立つ山が無数に見える。
 まるでそれが遠目に見える島への海路を遮っているようだ。

「あれが……ミスリルスライムの島」

 島の中央付近には、富士山のようななだらかな形状の山が見える。
 
 あの島の何処かに、目的のミスリルスライムが……。

「さて、早速組み立てるか!」

 気合いを入れ、マジックバックから畳まれているハンググライダーを取り出した。

 テントよりは、少しばかり大きい……っと言うよりは長いか?

 フレームやセイルと呼ばれる部品が、何かの皮で出来ているだろう入れ物に納められている。

 そのフレームの中でも、手で掴む部分、コントロールバーを最初に三角に組み上げていく。
 それをひっくり返し、コントロールバー軸に全体を斜め立て掛けた。

「次は両翼を手で広げ、ワイヤーを張るんだな?」

 何度もルームと練習した組み立てを、念のために説明書とにらめっこしながら次々と組つける。

 外付けのフレームを付け足し、各所固定、確認が終われば……。

「完成だ!」

 正味一時間かからなかった位か? まったく、これで空が飛べるんだから見事なものだよ。

 今から飛んでいけば、太陽が真上に上がる頃には現地につけそうだ。

「よしミコ、飛ぶぞ! 無銘に入ってくれ──」

 ハンググライダーを飛ばせる準備を完了する。
 ミコが無銘に入るのを確認すると、俺は勢いをつけ駆け出した。
 
 地面を踏みしめ滑走すると、体は浮き上がり俺達は晴天の空へと飛びあがったのだった──。  
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