286 / 469
第三章 リベラティオへの旅路
第273話 念願
しおりを挟む
「さて、まずはようこそ勇者の孫とそのお連れの方、とでも挨拶をさせてもら……」
「──貴方が遊んでいる間に、もう既になさいました」
女王様のまさかの突っ込みが入った。
彼女は隣に座る、リベラティオ王に冷たい視線を浴びせたのだ。
なんだろう……この素直に緊張させてくれない雰囲気は。
「お、おほん! そうかそうか、ではトゥナタ……フォルトゥナよ。勝手に城を抜け出すやつがいるか! 私とフォルテアが、どれだけ……」
「──それも既に申し上げました!」
目の前で、文字通り夫婦漫才が繰り広げられているのだが……。──この国、本当に大丈夫なのか?
「そ、そうなの? じゃぁ私は何を話したらいいのだろうか?」
女王とトゥナが同時に頭を抱えた。
血が繋がった親子と言うわけでもないのにまったくの同時にだ。
彼女のこの癖、もしかしたら王様が原因なのかもしれないな……。
「知りません……と、言いたいところですが御客人が困っておりますね。まだアレの事は話しておりませんので、それをなされたらいかがでしょうか?」
あれ? あれとは何の事だろうか?
リベラティオ王は彼女の言葉を聞くと、先程までの緩みきった顔ではなく、その眼光は鋭いものへと変わっていく。
「──フォルトゥナよ、どのような形であれ結果は結果だ。実のところそなたの動き……つまり、カナデ殿を連れ出したことで、グローリアとの緊張状態が少し緩和しておる」
「やはり……グローリアはカナデ君を祭り上げようとしていたのね?」
「おそらくは、その通りだ。しかしそれで全てが解決したわけではない。とある筋から連絡は受けているが、グローリアは未だ裏で怪しい動きを見せている。油断は出来ない状況だ」
そこまで話すと、彼の表情が急に崩れた。
何て言うか、本当にオンとオフの激しい人だ、疲れないのか?
「そこでだ。ここで報酬と言う訳ではないが、フォルトゥナ、カナデ君。二人には一つずつ、面白い話をしよう」
「面白い……話ですか?」
俺の問いかけに、「よいよい、そんな畏まらなくても。普通に話してくれ」と言い放った。
トゥナには悪いけど……何て言うか、その辺のオッサンみたいだな、この人。
「お父様、あまりふざけないで下さい。皆が困ってるでしょ?」
「はっはっは、まったく嫌われたものだ……パパ寂しいぞ? フォルトゥナ、いいから少しだけ黙って聞きなさい」
リベラティオ王はその場で立ち上がり、両手を広げ空をあおいだ。
「この度、君が予てより願っていた混血の待遇の改善を、エルフの国、獣人の国と共同で行うことが決定した」
「──う……嘘?」
「嘘ではない、我がリベラティオを含め三国の敷地の交わる場に、混血達の村を作ることを各国が合意してくれたのだよ」
──驚いた……。
俺の認識では混血は忌み嫌われ、人権もなく、それどころか迫害を受けるような人達だと思っていたが。
そんな彼らに、自国の領地を与えるなんて……実はこのオッサン、やるときはやるタイプなのか?
「キサラギ殿からの強い希望もあって、何とか落とし所が決まったのだよ。残念ながら、厄介払いにも似た方法になってしまったがな?」
「キ、キサラギ……さんが?」
な、なんだって! まさかこんなところで彼女の名を聞こうとは……。
まったく、あの人は本当に人を驚かすのが好きだな?
「お父様、ありがとうございます! それにしても、良くそんな無理を各国が聞いてくれたわね……信じられないわ……」
驚き、手で顔を覆いながらも彼女が心から喜んでいる事が分かった。
声が弾み、耳がピクピクしてるからな。──本当におめでとう、トゥナ。
「しかし、誉められた方法じゃないけどね。彼の存在……つまり、勇者の孫存在が、各国の重い腰を上げさせたのさ」
…………はっ?
「──貴方が遊んでいる間に、もう既になさいました」
女王様のまさかの突っ込みが入った。
彼女は隣に座る、リベラティオ王に冷たい視線を浴びせたのだ。
なんだろう……この素直に緊張させてくれない雰囲気は。
「お、おほん! そうかそうか、ではトゥナタ……フォルトゥナよ。勝手に城を抜け出すやつがいるか! 私とフォルテアが、どれだけ……」
「──それも既に申し上げました!」
目の前で、文字通り夫婦漫才が繰り広げられているのだが……。──この国、本当に大丈夫なのか?
「そ、そうなの? じゃぁ私は何を話したらいいのだろうか?」
女王とトゥナが同時に頭を抱えた。
血が繋がった親子と言うわけでもないのにまったくの同時にだ。
彼女のこの癖、もしかしたら王様が原因なのかもしれないな……。
「知りません……と、言いたいところですが御客人が困っておりますね。まだアレの事は話しておりませんので、それをなされたらいかがでしょうか?」
あれ? あれとは何の事だろうか?
リベラティオ王は彼女の言葉を聞くと、先程までの緩みきった顔ではなく、その眼光は鋭いものへと変わっていく。
「──フォルトゥナよ、どのような形であれ結果は結果だ。実のところそなたの動き……つまり、カナデ殿を連れ出したことで、グローリアとの緊張状態が少し緩和しておる」
「やはり……グローリアはカナデ君を祭り上げようとしていたのね?」
「おそらくは、その通りだ。しかしそれで全てが解決したわけではない。とある筋から連絡は受けているが、グローリアは未だ裏で怪しい動きを見せている。油断は出来ない状況だ」
そこまで話すと、彼の表情が急に崩れた。
何て言うか、本当にオンとオフの激しい人だ、疲れないのか?
「そこでだ。ここで報酬と言う訳ではないが、フォルトゥナ、カナデ君。二人には一つずつ、面白い話をしよう」
「面白い……話ですか?」
俺の問いかけに、「よいよい、そんな畏まらなくても。普通に話してくれ」と言い放った。
トゥナには悪いけど……何て言うか、その辺のオッサンみたいだな、この人。
「お父様、あまりふざけないで下さい。皆が困ってるでしょ?」
「はっはっは、まったく嫌われたものだ……パパ寂しいぞ? フォルトゥナ、いいから少しだけ黙って聞きなさい」
リベラティオ王はその場で立ち上がり、両手を広げ空をあおいだ。
「この度、君が予てより願っていた混血の待遇の改善を、エルフの国、獣人の国と共同で行うことが決定した」
「──う……嘘?」
「嘘ではない、我がリベラティオを含め三国の敷地の交わる場に、混血達の村を作ることを各国が合意してくれたのだよ」
──驚いた……。
俺の認識では混血は忌み嫌われ、人権もなく、それどころか迫害を受けるような人達だと思っていたが。
そんな彼らに、自国の領地を与えるなんて……実はこのオッサン、やるときはやるタイプなのか?
「キサラギ殿からの強い希望もあって、何とか落とし所が決まったのだよ。残念ながら、厄介払いにも似た方法になってしまったがな?」
「キ、キサラギ……さんが?」
な、なんだって! まさかこんなところで彼女の名を聞こうとは……。
まったく、あの人は本当に人を驚かすのが好きだな?
「お父様、ありがとうございます! それにしても、良くそんな無理を各国が聞いてくれたわね……信じられないわ……」
驚き、手で顔を覆いながらも彼女が心から喜んでいる事が分かった。
声が弾み、耳がピクピクしてるからな。──本当におめでとう、トゥナ。
「しかし、誉められた方法じゃないけどね。彼の存在……つまり、勇者の孫存在が、各国の重い腰を上げさせたのさ」
…………はっ?
0
お気に入りに追加
481
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる