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第三章 リベラティオへの旅路
第235話 エルクシル(下)
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「完全には治せないって……キサラギさん、その理由も説明してくれるんですよね?」
「うむ、その娘の病……呪いと表現したこと、覚えておるかの?」
確かに言っていた、病と言うより呪いだって……。
先程の会話から察するに、まさかトゥナの体を蝕んでいるものって!?
「呪いと言うたのは、肉体の許容を超えるほどの加護を、受け入れてしまっているからなのじゃ」
やっぱり加護が原因なのか……でも種族の弱点を補うものだろ、それがどうして?
「す、すまないキサラギさん……少し意味が理解できない。もう少し詳しく教えてくれないか?」
「そうじゃな……一般的な、ヒューマンと獣人のハーフをモデルに考えるのじゃ」
普通のハーフってことだよな?
うちの集団で言えば、組み合わせは違うものの、ティアが該当するな?
「理屈は知らんが、それぞれの加護がバランス良く分配されるようになっとる。ヒューマンの加護四割、獣人の加護六割、と言った風にな。……実のところ、この組み合わせによるハーフは、純血のヒューマンと比べると、短命になることが多いのじゃが、今回の件とは少々外れる故、割愛させてもらう」
ヒューマンと獣人のハーフは短命……なのか?
いや、それは今度にでも調べればいい。優先順位が高いのはこの後の話だ!
「さて、本題はここからじゃ。ぬしらの気にかけるその娘、その者の中には、それぞれの加護が分配されることなく、十割ずつ与えられておる。つまるところ、普通の人間の倍の加護を受けておるのじゃ」
「加護が普通の人より多いってことですよね~? それって特なんじゃ……」
ハーモニーの質問に対して、キサラギさんは首を横に振る。──どうやらそう言う事では無いらしい。
「歳の頃合いは、十五から十八と言ったところじゃろう? ヒューマンの加護も獣人の加護も、その辺りで肉体に定着する……。しかし、人間が許容できる加護は合わせて十割まで──その娘も例外ではないじゃろうな」
そうか……生き物には、加護を受け入れることの出来る許容量が決まっているってことだな?
「今その娘の中では、加護と加護が居場所の奪い合いをしておる。苦しんどる理由はそんなところじゃ。キメラであったための不幸……じゃな」
「そんな……加護が多すぎるからって~!」
ハーモニーが大声を上げる気持ちは分かる。トゥナ自身は何一つ悪くないじゃないか。
それなのにこんな仕打ち……あんまりだ!
「そこで、今回わっちの用意する薬──名をエーテルと言うのじゃが、加護の働きを麻痺させる効果がある。特にヒューマンの加護に強く影響するのじゃ。エーテルを与えてやれば、しばらくの間は元の……普通のハーフの様に生活できるじゃろう」
なるほど……加護が体に負担をかけるなら押さえつければいい。エーテルとは加護に特化した麻酔薬なのか。
「効果のほどは理論上の話にすぎん。その効果がどの程度続くのかも分からん。十年効くのか、はたまた五年か……一年続かぬ可能性もある。……あやつには間に合わなかったからのぅ……すまぬ」
「もしかして、キサラギさんがこの病に詳しいのって……」
「察しがいいの。わっちの養子娘そうじゃった……」
悲しそうな顔を見せたキサラギさんは、目の前で手のひらを上に向ける様広げて見せた。
すると、手のひらには七色の美しい蝶が現れその一頭を飛ばして見せた。
「すぐにダイロンに準備させる。今しばらく待っておれ」
完治はしないかもしれないが一先ず良かった……後はトゥナが治ったら、リベラティオの王様にお願いしよう。
なに、王はトゥナのお父さんだ、一緒に完治する手段を探してもらえばいい。国家規模で動けば見つからない事もないはずだ……きっと。
「──ところでぬしよ。話は変わるが、ハーモニーの事をどう思っとるのじゃ?」
………………へっ?
「うむ、その娘の病……呪いと表現したこと、覚えておるかの?」
確かに言っていた、病と言うより呪いだって……。
先程の会話から察するに、まさかトゥナの体を蝕んでいるものって!?
「呪いと言うたのは、肉体の許容を超えるほどの加護を、受け入れてしまっているからなのじゃ」
やっぱり加護が原因なのか……でも種族の弱点を補うものだろ、それがどうして?
「す、すまないキサラギさん……少し意味が理解できない。もう少し詳しく教えてくれないか?」
「そうじゃな……一般的な、ヒューマンと獣人のハーフをモデルに考えるのじゃ」
普通のハーフってことだよな?
うちの集団で言えば、組み合わせは違うものの、ティアが該当するな?
「理屈は知らんが、それぞれの加護がバランス良く分配されるようになっとる。ヒューマンの加護四割、獣人の加護六割、と言った風にな。……実のところ、この組み合わせによるハーフは、純血のヒューマンと比べると、短命になることが多いのじゃが、今回の件とは少々外れる故、割愛させてもらう」
ヒューマンと獣人のハーフは短命……なのか?
いや、それは今度にでも調べればいい。優先順位が高いのはこの後の話だ!
「さて、本題はここからじゃ。ぬしらの気にかけるその娘、その者の中には、それぞれの加護が分配されることなく、十割ずつ与えられておる。つまるところ、普通の人間の倍の加護を受けておるのじゃ」
「加護が普通の人より多いってことですよね~? それって特なんじゃ……」
ハーモニーの質問に対して、キサラギさんは首を横に振る。──どうやらそう言う事では無いらしい。
「歳の頃合いは、十五から十八と言ったところじゃろう? ヒューマンの加護も獣人の加護も、その辺りで肉体に定着する……。しかし、人間が許容できる加護は合わせて十割まで──その娘も例外ではないじゃろうな」
そうか……生き物には、加護を受け入れることの出来る許容量が決まっているってことだな?
「今その娘の中では、加護と加護が居場所の奪い合いをしておる。苦しんどる理由はそんなところじゃ。キメラであったための不幸……じゃな」
「そんな……加護が多すぎるからって~!」
ハーモニーが大声を上げる気持ちは分かる。トゥナ自身は何一つ悪くないじゃないか。
それなのにこんな仕打ち……あんまりだ!
「そこで、今回わっちの用意する薬──名をエーテルと言うのじゃが、加護の働きを麻痺させる効果がある。特にヒューマンの加護に強く影響するのじゃ。エーテルを与えてやれば、しばらくの間は元の……普通のハーフの様に生活できるじゃろう」
なるほど……加護が体に負担をかけるなら押さえつければいい。エーテルとは加護に特化した麻酔薬なのか。
「効果のほどは理論上の話にすぎん。その効果がどの程度続くのかも分からん。十年効くのか、はたまた五年か……一年続かぬ可能性もある。……あやつには間に合わなかったからのぅ……すまぬ」
「もしかして、キサラギさんがこの病に詳しいのって……」
「察しがいいの。わっちの養子娘そうじゃった……」
悲しそうな顔を見せたキサラギさんは、目の前で手のひらを上に向ける様広げて見せた。
すると、手のひらには七色の美しい蝶が現れその一頭を飛ばして見せた。
「すぐにダイロンに準備させる。今しばらく待っておれ」
完治はしないかもしれないが一先ず良かった……後はトゥナが治ったら、リベラティオの王様にお願いしよう。
なに、王はトゥナのお父さんだ、一緒に完治する手段を探してもらえばいい。国家規模で動けば見つからない事もないはずだ……きっと。
「──ところでぬしよ。話は変わるが、ハーモニーの事をどう思っとるのじゃ?」
………………へっ?
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