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第三章 リベラティオへの旅路

第214話 キルクルス→エルフの集落へ

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「──なぁ……これってどういう事なんだ?」

 宿に来るときは、咥えられ運ばれていたので気づかなかったのだが、ユニコーン達の見た目にちょっとした細工がされていた……。

「何を言ってるんですか、カナデさんがこの町に来た時に言い出したんですよ?」

 お、俺、何か言ったっけ?
 少なくとも、こんな事を頼んだ記憶は一切無いのだけど。

「なぁ、全く意図が理解出来ないんだけど?」

「も~う、察しが悪いですね。手を打っておくって言ったじゃないですか?」

 手を打つ……あ~確かハーモニーをった時にそんな様な事を言っていたな。
 ハッキリと思い出したぞ、手綱を放置したときの!

「──って、その上でこの結末かよ!」

 手を打たれた結果、なんとユニコーンの角は紐で縛ってあり、その先端が顎の下で結ばれていたのだ。
 この角は、飾りですよ? 的な偽装のつもりだろう。

「え~何が駄目なんですか? 完璧なカモフラージュじゃないですか?」

「か、完璧ってどこがだよ!? こんな穴だらけの完璧、始めてみたわ!」

「カナデさん、急ぎなんですよね? 目的地に向かいながら結果を見てください!」

 う……確かにこんな事を言ってる場合ではない!
 それにしても彼女のどこから、その自信が出てくるんだろうか?

 俺とハーモニーはオスコーンとメスコーンを馬車に繋ぎ、御者席に乗り込んだ。

「それじゃあ急ごう、ハーモニー頼んだ」

「はい~!」

 手綱を叩く音と共に、ユニコーン達は歩みを進め馬車が動き出す。
 人々の往来の中をゆっくりと俺達は進んで行く。
 そして、しばらく進み衝撃の事実に気付かされた。

「──う、嘘だろ?」

 相も変わらず、ユニコーン達は注目を浴びてしまう……。
 しかし今回は、普段とは若干反応が違った。

 周囲からは「あの御馬さん達、ユニコーンさんだ~」「あら? あの角飾りオシャレね?」っとの声が聞こえるのだ。

「ほら言ったじゃないですか? ユニコーンは希少なのですよ~。町中にいる方が信じられないのです」

 マジでか……これだけで? 悪い夢でも見ているのではないだろうか。

「あ、あぁ~認めるしか無いみたいだな……。でも、オスコーンのご機嫌はすこぶる悪そうだけど」

 時折、俺の事をを睨んでるような……。角、角の紐のせいだよな?
 もしかして、俺からメスコーンの涎の臭いがするからじゃないよな?

 町の中を抜け、行きに通った橋を渡る……。
 ハーモニーが手綱を叩くと、馬車の速度が上がる。
 
 この速度なら、行きより時間はかからないだろ。まってろよトゥナ。必ず……必ず……。

「──カナデさん……せっかくの二人っきりの旅なんですし、同乗者がそんな怖い顔をしていたら私は悲しいですよ~?」

 突如、ハーモニーが俺に声をかけていた。笑顔で茶化しながらも、どこから瞳は憂いを帯びている。

「トゥナさんが心配なのは私も同じです。しかし俯いていても、助ける事は出来ませんよ? 大変だからこそ肝心なときに動けるよう、常に張り詰めているのはよくないと思います~」

「ハーモニー……」

 確かに……そうかもな? 少し気を張り続けていたかも知れない。
 暗い顔ばかりしていても、周りに気を使わせるだけか。

 空を見上げると、青空が広がっている。トゥナの瞳と同じ、透き通った青い空……まるで、トゥナに見透かされているようだ。

「そう……だな。笑う門には福来るって言うし」

「何ですか、それは? 初めて聞きましたけど、何かいい響きですね……」

 手綱を片手でもったハーモニーは、不意に俺の手の上に自分の左手を重ねた。──ど、どうしたよ? 急に積極的になって……。

 ただ、手を繋いでいるだけの状況なのにドキドキが止まらない……。
 童貞には、これでも充分刺激が強いのだ。

「……カナデ、ハモハモ。いい雰囲気の所悪いカナ。でも、ボクもいるカナ……」

 ミコの突然の登場に、慌てるように手は離された。──こ、こいつが居たこと、完全に忘れてた!

 どうやら、俺に恋愛的な展開はまだ早いようだ……。
 なに、まだまだ一緒にいれる時間は山ほどある。何にしても、焦る事は何もないさ。

 ミコの「ボク、おじゃま虫だったカナ……?」の疑問の声に、答えるものは居なく、俺達は苦笑いを浮かべつつも急ぎ馬車を走らせるのであった。
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