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第三章 リベラティオへの旅路
第212話 優柔不断
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「なぁ、さっきの様子からすると、ティアは知っているんだろ? ハーモニーの言ってたキメラって、何の事なんだ?」
もしかしたら、それを知ることで助ける方法がわかるかもしれない。
例え無理だと分かっていても、目の前で大切な人が苦しみ、大切な人達が悲しむ光景など、放って置く事など出来るはずがないだろ?
「……キメラとは、一般的に母体の中で双子が融合する事で産まれる……極々、稀に起こりうる事象の一つです」
意識のないトゥナを見つめたまま、涙混じりに彼女は説明をしてくれた……その瞳は絶望の色が濃く、ただ事ではないのが一目で分かる。
「そ……それって、何か良くないのか?」
ティアはこちらを見ないまま、首を横に振った。
「多少のハンデはあるものの、一般的なキメラの方なら普通に生活する方もいると聞いたことがあります」
「それなら、何でこんなこと……「──しかし! ハーフの場合は別です!」
俺の言葉を遮るように、ティアは大きな声を上げた。
落ち着いた大人の女性。そんな姿は、今の彼女からは微塵も感じられない。
「過去の文献にはキメラの……ハーフの事例が二人程載っておりました。しかし…………御二方とも、命短くして亡くなられております」
──なっ! そんなのおかしいだろ!?
ハーフだから駄目とか、ハーフだから助からないとか、そんな理不尽な事が何で起きるんだよ!
「何とかする手立てはないのか! だってここは、魔法がある世界だろ? 魔法で治したり……」
「──助けられるなら、私が知りたいですよ! 何でフォルトゥナ様がこんな目に遭わないといけないんですか! 誰か、教えてくださいよ! お願いします……カナデ様。いつもみたいに私達を……フォルトゥナ様を助けてください……」
ティアは突如俺を掴み、すがるように地面に膝をついた。
瞳からは止めどなく涙が溢れだし、無力な俺は拭うことも出来ない……。
いつの間にか飛び出していたミコも、トゥナに頬を擦り寄せながら「トゥナン……元気になるカナ。もう、誰かに会えなくなるのは嫌カナ……」と、泣き声を上げた。
部屋には何人かの啜り泣く声と、時折苦しむトゥナの声が響く……。
俺はまた、助けることが出来ないのか……いや絶対、絶対に諦め無い! 大切な人を失うなんてゴメンだ!
そんな事を考えている最中、隣から俺の服を誰かが引っ張った。
「……カナデさん。少しお話があるのですが?」
深刻そうな面持ちで、ハーモニーが俺に声を掛けてきた。
「どうかしたか……ハーモニー?」
ハーモニーはティアの方を見ると「ここではちょっと……」っと言葉を渋った。
人が居ると、言い出しにくい事なのだろうか……?
「分かった……部屋の外に出よう」
皆を置いて、俺とハーモニーは部屋の外に出た。彼女の表情から見ても、きっと良い話では無いのだろう。
部屋から出て、俺は通路の壁に背中を預けた。
「それで……話ってなんだ?」
俺の問いかけに、ハーモニーはうつ向きながら声を絞り出すように答えた。
「カナデさんは……私とトゥナさん、ティアさんの中で……誰が一番好きですか~……?」
「こ、こんな時に何を言ってるんだ……?」
質問の意図が分からなかった……何故今、ハーモニーがこのタイミングでその様なことを言い出したのか。
「──こんな時だからです! カナデさん、いいから答えて下さい~!」
ハーモニーは右手で俺がもたれ掛かる壁をドンっと押さえ退路を絶ってきた。
そして彼女は俺を見上げ、真剣な眼差しで返事を待っているようだ。
「そんなの……選べる分けないだろ? 俺は、三人ともとても大切だと思っている。三人だけじゃない……ミコもルームも皆大切なんだ……」
ハーモニーは俺を見つめながら、ポロポロと大粒の涙を流す。
「誤魔化さないで下さい。カナデさんは……やっぱり私が小さいから、女としては見れないんですか~?」
理由は分からないけど……これだけは分かる。
彼女は今──誤魔化しや飾らない、本気の想いを聞きたがっているんだと……。
「すまない。俺、優柔不断だからさ、三人とも……女性としても、同じぐらい好きなんだわ。こんな俺が誰が一番を選ぶとか、そんなの失礼だろ?」
──最低の答えだ……。
付き合いたいとか、好きだとか思わなかったわけではない。ただ今の関係が楽しくて、見て見ぬふりをしていたんだ。
「それが本心なのですね~……」
ハーモニーは手で涙を拭い、俺に微笑み掛けた。
「三人ともって事は、同列でもカナデさんの一番好きな人は私って事いいんですよね~!?」
必死で作りあげたのであろうその笑顔は、少し歪だが、なぜか印象に残った。
こんな状況でもなければ、俺はつい、彼女を抱き締めていたかもしれない……。
「カナデさん……実は、トゥナさん助けることが出来る方法が一つだけあるかもしれません……」
「──ほ、本当か! ハーモニー!」
俺は彼女の言葉につい嬉しくなってし待った俺は、この直ぐ後に遅めの抱擁をしたのであった。
彼女が何故、このタイミングで先ほどの言葉を口にしたか……考えもせずに。
もしかしたら、それを知ることで助ける方法がわかるかもしれない。
例え無理だと分かっていても、目の前で大切な人が苦しみ、大切な人達が悲しむ光景など、放って置く事など出来るはずがないだろ?
「……キメラとは、一般的に母体の中で双子が融合する事で産まれる……極々、稀に起こりうる事象の一つです」
意識のないトゥナを見つめたまま、涙混じりに彼女は説明をしてくれた……その瞳は絶望の色が濃く、ただ事ではないのが一目で分かる。
「そ……それって、何か良くないのか?」
ティアはこちらを見ないまま、首を横に振った。
「多少のハンデはあるものの、一般的なキメラの方なら普通に生活する方もいると聞いたことがあります」
「それなら、何でこんなこと……「──しかし! ハーフの場合は別です!」
俺の言葉を遮るように、ティアは大きな声を上げた。
落ち着いた大人の女性。そんな姿は、今の彼女からは微塵も感じられない。
「過去の文献にはキメラの……ハーフの事例が二人程載っておりました。しかし…………御二方とも、命短くして亡くなられております」
──なっ! そんなのおかしいだろ!?
ハーフだから駄目とか、ハーフだから助からないとか、そんな理不尽な事が何で起きるんだよ!
「何とかする手立てはないのか! だってここは、魔法がある世界だろ? 魔法で治したり……」
「──助けられるなら、私が知りたいですよ! 何でフォルトゥナ様がこんな目に遭わないといけないんですか! 誰か、教えてくださいよ! お願いします……カナデ様。いつもみたいに私達を……フォルトゥナ様を助けてください……」
ティアは突如俺を掴み、すがるように地面に膝をついた。
瞳からは止めどなく涙が溢れだし、無力な俺は拭うことも出来ない……。
いつの間にか飛び出していたミコも、トゥナに頬を擦り寄せながら「トゥナン……元気になるカナ。もう、誰かに会えなくなるのは嫌カナ……」と、泣き声を上げた。
部屋には何人かの啜り泣く声と、時折苦しむトゥナの声が響く……。
俺はまた、助けることが出来ないのか……いや絶対、絶対に諦め無い! 大切な人を失うなんてゴメンだ!
そんな事を考えている最中、隣から俺の服を誰かが引っ張った。
「……カナデさん。少しお話があるのですが?」
深刻そうな面持ちで、ハーモニーが俺に声を掛けてきた。
「どうかしたか……ハーモニー?」
ハーモニーはティアの方を見ると「ここではちょっと……」っと言葉を渋った。
人が居ると、言い出しにくい事なのだろうか……?
「分かった……部屋の外に出よう」
皆を置いて、俺とハーモニーは部屋の外に出た。彼女の表情から見ても、きっと良い話では無いのだろう。
部屋から出て、俺は通路の壁に背中を預けた。
「それで……話ってなんだ?」
俺の問いかけに、ハーモニーはうつ向きながら声を絞り出すように答えた。
「カナデさんは……私とトゥナさん、ティアさんの中で……誰が一番好きですか~……?」
「こ、こんな時に何を言ってるんだ……?」
質問の意図が分からなかった……何故今、ハーモニーがこのタイミングでその様なことを言い出したのか。
「──こんな時だからです! カナデさん、いいから答えて下さい~!」
ハーモニーは右手で俺がもたれ掛かる壁をドンっと押さえ退路を絶ってきた。
そして彼女は俺を見上げ、真剣な眼差しで返事を待っているようだ。
「そんなの……選べる分けないだろ? 俺は、三人ともとても大切だと思っている。三人だけじゃない……ミコもルームも皆大切なんだ……」
ハーモニーは俺を見つめながら、ポロポロと大粒の涙を流す。
「誤魔化さないで下さい。カナデさんは……やっぱり私が小さいから、女としては見れないんですか~?」
理由は分からないけど……これだけは分かる。
彼女は今──誤魔化しや飾らない、本気の想いを聞きたがっているんだと……。
「すまない。俺、優柔不断だからさ、三人とも……女性としても、同じぐらい好きなんだわ。こんな俺が誰が一番を選ぶとか、そんなの失礼だろ?」
──最低の答えだ……。
付き合いたいとか、好きだとか思わなかったわけではない。ただ今の関係が楽しくて、見て見ぬふりをしていたんだ。
「それが本心なのですね~……」
ハーモニーは手で涙を拭い、俺に微笑み掛けた。
「三人ともって事は、同列でもカナデさんの一番好きな人は私って事いいんですよね~!?」
必死で作りあげたのであろうその笑顔は、少し歪だが、なぜか印象に残った。
こんな状況でもなければ、俺はつい、彼女を抱き締めていたかもしれない……。
「カナデさん……実は、トゥナさん助けることが出来る方法が一つだけあるかもしれません……」
「──ほ、本当か! ハーモニー!」
俺は彼女の言葉につい嬉しくなってし待った俺は、この直ぐ後に遅めの抱擁をしたのであった。
彼女が何故、このタイミングで先ほどの言葉を口にしたか……考えもせずに。
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