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第三章 リベラティオへの旅路

第208話 対決、ストーキングキング

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「貴様……この俺をコケにしやがって!」

 おかしい、これでも結構紳士な対応をしたつもりだったのにな?

 サーベルを構え、臨戦態勢を取るストーキングキング。
 
 さて……相手がどう思ってるかは知らないが、向こうが真剣を抜いている以上これは試合ではない……死合だ。
 気を抜くわけには行かない。

「貴様、そんな木剣で俺様と殺し合う気か? 舐めるのも大概にしろよ!」

「ん? お前にはこれが玩具おもちゃにでも見えるのか?」

 左手に持っている木刀を見せつける。──確かに本来、訓練用の物ではあるのは間違いない。しかし、奴は勘違いしている……名に刀と付くのは伊達ではない!

「刃は着いていないが、これでも相手を殺すことが出来る。そして、ストーキングキング! 今からこれが、お前の心と意志を殺すんだ。それにはコイツが適してるんだよ」

「──その呼び方やめい! くそ……舐めやがって。後で後悔しても知らないからな!」

 ストーキングキングは叫び声をあげ、片手で下段にサーベルを構えたまま距離を詰め寄ってきた。

 俺に向かい、サーベルを下段から斬り上げた。それを半身下がり、ギリギリの所で回避する。──初撃は……様子見だな?

「──上手いこと避けるじゃねぇか!」

 大きく踏み込むストーキングキングは、今度は振り上げたサーベルを力強く斬り下ろした。──遅い……避けるのは簡単だが! 

 タイミングを計り、俺は木刀を鞘から引き抜いた!
 そして抜刀の一振りは、金属に当たる甲高い音を響かせたのだ。

「──っな!」

 ストーキングキングは、木刀で真剣を弾いたことに驚いている様だ。
 それもそうだろう、普通に打ち合えば木刀に刃が食い込むか、場合によれば斬れるハズなのだから……。
 相手からしたら、驚くのは当然だ。

 しかし、そのカラクリはそう難しいものではない。
 刀身ブレード部分の側面に木刀を当てた……ただ、それだけの事なのだ。

「き、貴様、一体何をしやがった!」

「ん、見えなかったか?」

 これ以上ティアに付きまとわせない為にも……ここでヤツの心を刈り取らないといけない……。──本気で行く!!

「──力動眼!」

 俺のスキル発動と共に、ストーキングキングが動き出した。
 奴が、全身を強ばらせているのが分かる。次は、一撃や二撃だけでは無い!

 ストーキングキングは、右に左に、上に下にと次々とサーベルを振り回した。
 その攻撃は、型などの洗練されたものではなく、ただひたすら我武者羅がむしゃらに振られるものだ。

 力動眼で相手の動き出しを先読みし、タイミングを合わせ、ストーキングキングの斬撃を抜刀で、全て切り落としてやった。──どうだ! 剣士であれば、心が折れるほど屈辱だろ!

「──く、くそ! 当たれ!」

 攻撃が一切当たらず、奴の顔が次第に歪んでいく。
 次々と放たれる連撃は次第に遅くなって行き、ストーキングキングの表情に疲労の色が見える。
 そして何十本も打ち込むと、ストーキングキングの攻撃は止まった。

「おい──この程度か?」

 周囲にはいつの間にか人集りができていて「お、おい、アイツ何者なんだよ……」との声も聞こえる。
 よくよく見ると、さっきギルドにいた人間も大勢見られた。──野次馬かよ……止めに入れよな。

 相当疲れたのだろう、肩で息をするストーキングキング。
 それもその筈だ。特別大きくはないサーベルとは言え一キロ以上はあり、長さも七百mm程あるんだ。
 そんなものを無呼吸であれだけ振るえば、疲れない訳がない。例えるなら、バットを振り回す様なものだからな。しかも奴は片手でだ。

「──はは……はっはっはは」

 ストーキングキングは、サーベルを持っていない手で額を抱え、急に笑いだしたのだ。

 なんだアイツ……急に笑いだして、俺がやり過ぎておかしくなったか?
 
「あ~認めよう、貴様は強い! 俺様が貴様の事を、ライバルと認めてやる!」

 ……い、いや。遠慮したいんだけど。

 左手を前に真っ直ぐ向け、手を開いて俺に向けてきた。──こいつ……結局の所、何が言いたいんだ?

「貴様はもちろん、俺様が片手で剣を振っていたことには気づいていただろ? 何故片手剣士が盾も持たないのか……って思ってたんだろ?」

 いや、片手なのは知ってたけどそこまでは……。
 って言うか、正直なところ、お前にはそれほど興味は無いよ、怒りそうだから言わないけど……。

「理由を教えてやろう! それは、俺様が魔法も使う剣士だから、なのだよ!」

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