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第三章 リベラティオへの旅路

第192話 教会外、脱出

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 にじり寄るゾンビ達を次々斬り捨てているものの、俺達は徐々に追い詰められていく。
 止まる事を知らないゾンビ達に一歩、また一歩と……。

 そしてしまいには、建物の四隅の一角から、二、三メール程の所まで追い詰められてしまった。

「カナデ君、何してるの? 早く逃げないと流石に手に負えないわよ!」

「逃げるって、あの黒いマジックバックに突っ込んだら装備も何もかも持ってかれるかもしれないんだぞ? それでも良いなら一か八かでもいいけど……」

 人に見せれるほど、裸には自信がない!
 くそ……それを覚悟で、出口に特攻するか?

「カナデ君、いつからそんなお行儀良くなったの!? 出口が無ければ、作れば良いでしょ!」

 出口を……作る?

「──そ、そうか!」

 トゥナから若干、辛辣しんらつな言葉が聞こえた気がしたが、今はそれどころじゃない!
 すっかり忘れていたが、無銘なら壁だろうが外壁だろうが、その気になれば斬れるはずだ!

「トゥナ少しの間、背後を頼む! 今出入り口を作る!」

「分かったわ、任せて!」

 まったく、本当に壁を斬ることになるとは……。

 俺は振り返ると同時に、先ほどまで背後にあった壁に詰め寄った。
 無銘を鞘から引き抜き、抜刀で二度斬り、そして一度鞘に納める。その後、素早くもう二度壁を斬り、教会の外壁に四角の切れ込みをいれた。

「穴よ──あけぇぇ!!」

 叫びながらも切り込みが入った壁を蹴り飛ばすと、教会の外壁に人が十分通れるほどの大きな穴が空いた。
 そして外からは、うっすら見えた希望の様な、薄暗い光が射し込む。──すげぇ、本当に出来たぞ! まるで斬○剣のようだ!

「よし空いたぞ! 出口が塞がれる前に、早く外へ!」

「分かったわ!」
「うんカナ!」

 急ぎ外に飛び出ると、教会から出た場所は来るときにも視界に入った墓場だった。
 変わった事と言えば、地面にはいくつもの穴が開いているぐらいで……。

 ここの村人達を追ってなのか? ゾンビは居ないようだ。
 しかし、足の無いゾンビはその場で這いつくばっており、非常に気味の悪い光景だ……。

 墓石がそのまま残っており、地面が抉れていない所もあることから、白骨化したものは流石に操ることができないと俺は推測した。

 そんなことを考えていると、教会の出入り口を塞いでいた黒いマジックバック消え、そこにあったはずの窓や扉も、跡形もなく消えていた。──非常に風通しの良い教会になったものだ。

「──出てきたわね……」

 トゥナが、息を呑みながら言うように。教会から、次々とゾンビが出てくる。
 その中にシンシの姿が見えない、まだ教会内にいるのだろうか?

「それじゃ、広いところにも出たし……気は進まないけど」

 多勢に無勢……仕方ない。
 相手が生きていない以上、俺も本気を出させてもらおうか。

「ミコ、新技でゾンビの数を削る。無銘の中に入ってくれないか?」

 魔力の消費が激しいからな。使いたくは無いが、これだけの人数相手だと、そう言ってる場合でも無いだろう。

「うん……分かったカナ」

 光の粒子になったミコが、無銘の中へと入っていく。
 実戦での使用は初めてだけど、何も考えず突き進んでくるこいつらには好都合だ。

「カナデ君……何をするつもりなの?」

「このままだと、どっちらにしてもまた囲まれるからな、その前に一気に数を減らしておく。トゥナは危険から、俺の前に出ないようにしてくれ!」

「分かったわ」と、トゥナが離れたことを確認すると、無銘を鞘ごと腰帯から引き抜き左手に持った。

 ──ミコ、準備いいぞ! 修行の成果を出す時だ!

『分かったカナ! カナデ……邪魔物をやっつけるシ!』

 俺が眼を閉じると、無銘が鞘越しに先端から徐々に発光を見せる。
 最終的に、薄暗い世界を徐々に照す光は無銘の全てを包み込んだ。

「いくぞミコ!」

 眼を見開き、ゾンビ達に向かい一目散に走る。
 そして、奴らの目前で無銘を引き抜き叫びを上げた。

「──灯心とうしん 濤乱とうらん!!」
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