異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第三章 リベラティオへの旅路

第156話 NGワード

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 馬車を手にいれた俺達は、俺の見事な手綱捌きの元、宿屋に向かった。

 ……何て言うのは嘘だ。

 実は言葉が分かる彼達に手綱はほとんど必要なく、ほぼ言葉の指示だけで馬車は動いている。

 まぁ、当然言うことを聞かないオスコーンには「オスコーン……分かってるな? 言うこと聞かないと、今晩は俺とお前達で、町の外で野宿だからな?」と、事前に耳打ちをしてある。

 まるで「二人の夜を邪魔するな!」と言わんばかりに俺の言うことを聞くオスコーン。──オスって生き物はまったく……チョロいぜ。

「カナデ様、悪い顔になってますよ……?」

 俺の表情を見て、ティアが突っ込みを入れてきた。
 どうやら考えが顔に出ていたらしい。

 人込みをかき分けるように馬車は宿に向かう。
 日本の道とは違い、無駄に広い……と言っても細かな交通規則が一般の人すべてに浸透しているわけじゃない。
 人を引かないようにだけは注意を払わないといけない。──宿屋までは五分と言ったところか? 人通りの多い町の馬車の操作は怖いな。

 緊張しながらも馬車を操る俺に、ティアが世間話を振って来る。
 緊張でもほぐそうとしたのだろうか?

「まったく……驚きました。カナデ様があそこまでフォルトゥナ様の事を気遣ってくれるとは……正直なところ、あのように言われるとは思っておりませんでした」

 にこやか……って言うよりは、彼女本来の若干含みのある笑顔と言う感じだろうか?
 多分、純粋に嬉しかったんだろうな? 自分の大好きな相手が下心無く優しくされて。──このトゥナ大好きっ子め。

「自覚してますよ。気の利く方ではないですからね、俺」

 ティアに言われる前に自分で言ってやった。
 実のところトゥナの体調不良は心配……も当然なのだが、罪悪感みたいなものも薄っすらと感じている。

 冒険の道中、周囲の警戒と魔物退治はほとんどすべて彼女に任せっきりだからな……。
 彼女の鼻の良さと耳の良さについ甘えて、負担をかけていたのかもしれない。

「まったくです」と、口を手で覆いながら腹を抱えて笑うティア……。
 不覚だ。意図的に作られたわけではないその笑顔を、少しだけ可愛いと思ってしまった。──いつもこうならな……。

「それに、彼女はある意味命の恩人みたいなものですしね? 出会ってなければ野垂れ死んでるか、グローリアで何かしら利用されてたと思いますし。そんな彼女を心配するのは当然ですよ」

 本人には面と向かって言い出しずらいが、コレは常々思っている。
 いくら感謝しても感謝しきれないほどに。

 それはそうと、ティアには前から一つ気になっていた事があるんだよな。

「それよりティアさんは、なんでそこまでトゥナの事が好きなんですか?」

 確かに可愛いが、トゥナの外見だけってことはないだろう?
 それだけでトゥナ信者のようにはならない……っとは言い切れないが、そんな浅はかな理由じゃない気がする。

 俺の質問に「あら~カナデ様、その事を聞いちゃいますか?」っと、おばちゃんの会話中の仕草のように、手を前後に動かす。──突っ込むべき……ではないだろうな。

 前々から、気にはなってはいたんだよな。
 彼女が好きすぎて本にまでするって、考えてみれば凄いことだしな?

「長くなりますけど? よろしいでしょうか?」

 急に目の色を変えるティア……。
 この手の長くなるは、本当に長くなる気がする。

「一応確認させてもらいますが、どれぐらいかかりますか?」

「大丈夫です、カナデ様。次の朝日が昇るまでには終わりますので」

 ──それってまだ半日近くあるだろう!

 しかし、ティアの目を見れば分かる……冗談では無いと。

「かいつまんで、あの角を曲がるぐらいで……」

「──無理です!」

 即答かよ! しまったな……これ完全にNGワードだったみたいだ。

「えっと……宿屋に着くまででお願いします」

「──不可能です!」

 どうやら……交渉の余地は存在しないらしい。
 トゥナの所まで行けば助かるだろう……。
 そんなことを考えながら、俺はトゥナとティアの馴れ初めを聞くことになったのであった。
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