異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

文字の大きさ
129 / 469
第二章 海上編─オールアウト号─

第117話 実食!!

しおりを挟む
「──流石船長様ですね、その事にお気づきになるとは……」

 俺には、ティアの言ってる意味も、船長のいっている意味も全く理解できなかった。──それほどに美味しいと言う事なのだとうか?

「なるほどなるほど、これは材料に鳥のササミ……豆乳と卵を使っているのかな?」

「正しくその通りです! そして、カツオも少々……。筋肉に必要とされる、ありとあらゆるを、豊富ほうふに含んだ食材を、これでもか! っと言うほど、ふんだんに扱った一品です」

 あ、扱っちゃったかぁ……。

 それにしても、確かにタンパク質っぽい食材ばかりだ。
 脂質も比較的控えめで、地球のボディービルダーにも愛されている食材ばかり。
 前に言ってた知識量……あながち間違っては無いみたいだな。
 確かに間違ってはないんだけど、方向性が間違っちゃったな?

 そんな事を考えていたら、俺は先程の調理風景を思い出した。

「──じゃ、じゃぁ、フランベは! フランベは何のためにやったんですか!?」

「あれですか? 一度やってみたかったに決まってるじゃないですか!」

 気持ちは分かるけど、間違いなく断言できる。
 その料理には必要ないだろ?

「冗談ですよ。香りがつき、味も美味しくなると聞いたことがありましたので挑戦してみたのです!」

 今までの説明と内容で理解した、机上きじょうの空論ってやつだ。 
 初心者に有りがちな話だ……知識はあったとしても、レシピ通りの物を作らずオリジナルに走る事。
 アレンジ程度でやめておけばいいものを。

 でも何となく彼女の気持ちもわかる。そのめられないまらない気持ち。

 可愛らしくウインクをして「液体状にすることで体内吸収も良く、手軽にとれるのが売りなんですよ?」っと話すティアの発言に、頭を抱えため息をついてしまった。

「しかし正直な所、美味しいとは言いがたいな。よく言えば素材の味そのもの……悪く言えば味がない! 粉っぽさも残っているし、香りも正直ひどいものがあるな」

 ダメ出しのオンパレードだった。
 筋肉に良い、以外の褒め言葉がまったくない。
 今思えば、それが褒め言葉なのかも怪しいのだが。

 そして、その感想に肩を落とすティアとトゥナ。

「ところで一応確認するけど、味は何でつけたんだ?」

「味付け……ですか? 素材の味を最大限に発揮できるようにですね」

 俺の質問に顔を背け、明らかにばつが悪そうにするティア。──まさかな?

「普段から作ったことない品なら……勿論、味見ぐらいしたよな?」

「「…………」」

 沈黙が物語る。──こいつら、絶対に味見していないだろ?
 俺は無言でトゥナとティアの厨房に向かい、スプーンを取りに行った。
 そしてプロテインをすくい上げ、彼女達の目の前に差し出した。

「ほら、これで味見できるだろ?」

 二人は顔を向き合い、頷き合う。その後、深刻そうな面持ちで俺に向かって声をかけてきた。

「カナデ君、一つ相談があるの……」

「な、なんだよ?」

「あのですね、カナデ様。少々言い出しにくいのですが、味付けを忘れました。一掴み、一掴みでいいのです! 塩を入れさせては頂けないでしょうか?」

 俺は、彼女達のまさかのお願いに、あきれ果てため息をついてしまった。

「──どうぞ、好きにしてくれ」

 文字通り、敵に塩を送る事になろうとは……。

 そんなやり取りをする中も「うむ、不味い! もう一杯!」と、何かが癖になってしまったのであろう船長の姿があった。
 薄々気づき始めていたが、もうコレは料理の対決ではなくなっているのでは?

「それでは次は、こちらのたこ焼きとやらを頂こうか?」

 プロテインをテーブルに置き片手にフォークを持つ船長が、五つあるたこ焼きの中から一つ刺し、口へと運んでいく。

 ──ん、おかしいぞ?

 この時、俺は気づいてしまった。
 本来ここには七つのたこ焼きが無いといけなかった事実に……。
 そして、無くなった理由も何となくだが察しがついている。
 動機もそろっているんだ、たぶんカバンを開けば証拠もすぐに見つかる。──しかし、まだその手段が分かっていないのだ。

 これだけの観客の視線の中、それをばれないように犯行に及んだ方法が……。──もう少 しだけ、犯人を泳がせてみようか?

 熱々……っとはもう言えないたこ焼きを、一口で頬張る船長。
 目を閉じ、静かに味を堪能するように噛みしめている。そして──ゆっくりと飲み込んだ。

「な、なんなんだこれは……」

 たこ焼きを食べた船長は、驚きとも取れる表情で、フォークを床に落としてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 439

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...