上 下
119 / 469
第二章 海上編─オールアウト号─

第107話 船修理中─今日俺は死ぬかもしれない2─

しおりを挟む
「カナデ君あのね……私も結構恥ずかしい思いをしてるんだけどな?」

 トゥナは無防備に詰め寄り「コメントは無いのかしら?」と声を掛けてきた。
 わざとでは無いと思うのだが、腕で胸を挟み込み、強調するようなポーズを取るのだ。──無自覚、恐るべし……。

「と、とても似合ってると思うよ……」

 彼女の姿にドキドキで、上手く思考が出来ない。
 そもそも女性を褒める経験なんて、今まで全くと言っていいほど、無かったんだよ!

「カナデ君、それだけなの? ハーモニーの時とすごく違うけど……」

 肌が触れるのでは? っと思う程グイグイと来るトゥナに、俺はドキドキのたじたじだ。
 なんでハーレム物の主人公は、こう言った状況でも直視できるんだよ……その秘訣を教えてもらいたい!

 そしてトゥナから反らした目線の先では、ハーモニーが俺を見つめていた。

「カナデさん、私の時とえらく反応が違いますね? 大きいからですか? 大きいのが好きなんですか~?」

 と、彼女は俺の無銘に手を伸ばす。

 本能で何かを感じ、ハーモニーに触れられる前に慌てて無銘を抱き抱える。──何故かハーモニーにだけは触らせてはならない気がする!

 それにしても、なんで美少女二人に詰め寄られてるんだよ! 俺は、今日はまだなにもしてないだろ? 

 根本的に悪い気分ではない、悪い気分では無いのだが、こうもガツガツ来られるとどうしていいものか……。
  草食系の童貞男子には、荷が重くないでしょうか?

「お二人共落ち着いてください、カナデ様が困ってますよ? 本日は喜ばせたかったのですよね?」

 言い寄られる姿を見かねてか、俺を気遣うティアの発言が聞こえた。
 それを聞いてだろうか? 二人は俺から少し距離を取ったのだ。──まさか、このタイミングでこの人に助けられるとは、複雑な気持ちだがありがとう。

 ──ってもしかしてティアも!?

 少しの期待と、よこしまな気持ちでティアを見てしまう。
 しかし残念ながら、彼女はダボダボのパーカーに身を包んでいたのだ。

「あ、あれ? ティアさんは水着じゃないんですか?」

 つい口走り、俺はしまった! っと言う顔をした。
 当然の事ながら、トゥナとハーモニーの視線が痛い。

「あら? フォルトゥナ様とハーモニー様のお姿だけじゃ、物足りなかったんですか? とても素敵だと思うのですが……」

「いやいや! 二人とも十分に素敵ですよ。ただティアさんが準備したって聞いたので……」

 俺の発言に、何故かまんざらでもない顔をする二人。
 彼女達の水着姿が魅力的なのは間違いはない。
 しかし、正直なところティアの水着姿も見たいんだよな……。

 性格を除けば容姿端麗ようしたんれい才色兼備さいしょくけんび
 トゥナやハーモニーもそうだが、ティアも同じく言葉では言い表せないほど魅力的な女性なのだ。
 期待するなって言う方が無理だろ?

 そんな俺の心中を察してなのか、クスリと笑いかけてくるティア。──これが大人の余裕なのだろうか?

 トゥナの純粋無垢じゅんすいむくな美しさとも違い、ハーモニーの幼い可愛らしさとも違う。
 これが、妖艶ようえんな大人の魅力……ゴクリッ。

「カナデ様はさん、ですね? しかたがありません……」

 そう言いながら、俺の近くまでゆっくりと近づいてくる。
 そして、パーカーの前のボタンを上からゆっくりと、一つ、また一つと外していくのだ……。

「んっ……中々外しにくいですね、このボ・タ・ン」

 くそ、絶対にわざとだ! 俺を焦らしにかかってるのか?
 そのなまめかしい仕草は、周囲の注目を集め、同性である二人でさえ見いっている。

 散々焦らしながらも、すべてのボタンを外し終わった。しかしティアは、中が見えないように手で押さえているのだ。

「この恰好を殿方に見せるとなると、中々に恥ずかしいものですね。やっぱり止めてしまっても……」

 そう言いながら、彼女は頬を赤らめ後ろを向いた。──さ、流石にここまで来てそれはないだろう。でも、周りの目もある……。
 
「ま、まぁ、無理する事は無いと思いますよ?」

 精一杯の強がりだ。
 他の女性メンバーが居る以上、ここは紳士に行こう! 非常に残念だが……。
 あえてもう一度言おう、非常に残念だが!

「カナデ様はお優しいのですね?」

 優しくなどない、ただチキンなだけだ!
 少なくとも今日の判断を数日は引きずる自信があるぞ?
 
 しかし、どうやらその必要は無い様だ。

「──あのですね。自分で羽織ものを取る勇気が無いので……カナデ様にお願いしたいのですが?」

「……はい?」

 ティアの発言に一瞬思考が停止した。 
 つまり脱がせろって事か……? さ、流石にそれは不味いだろ!
 俺は、トゥナに助けを求めるように視線を送ると「取ってあげたら?」と、まさかの回答が返ってきた。──本当トゥナはそういう無頓着むとんちゃくなところがあるな!

 これはどうするべきなのか?
 なに、ティアの上着をとるだけだ、簡単簡単……。
 指がカタカタと震えるものの、俺は彼女の上着を取るために動きだした。

 その俺の姿を見てだろう、恥じらい顔を染めていたはずのティアが、突然笑いだしたのだ。

「ふっふっふ、すみません。カナデ様のリアクションが余りに初心うぶだったので、ついからかってしまいました」

「あ、あぁ~……そうだよね? そりゃそうだ……」

 完全にしてやられた! そりゃテンパりもするだろ、ほら見てみろ?
 ハーモニーなんて頭から煙を噴いてるぞ……って、大丈夫かよ!

 そんな慌てる俺をみて、ティアはとても満足した顔を向ける。──間違いない、これは本のネタにされるだろう。

「今日は、日頃頑張ってくれている、カナデ様へのご褒美でした。忘れるところでした」

 ティアはパーカーを両手で掴み、俺の前で普通に脱いで見せたのだ──。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

処理中です...