上 下
109 / 469
第二章 海上編─オールアウト号─

第97話 女子会2

しおりを挟む
「あ、あのですね? フォルトゥナ様。例えお付き合いしたとしても。それは、イコール結婚ではないのですよ?」

 今はまず話題を変えよう! 場を落ち着かせてから誤解を解いていけば良いではないですか……。
 焦ってはダメです、ティア!

「そうなんですか?」
 と、無垢むくな瞳を向けるフォルトゥナ様。
 控えめに言っても、清らかの最上級じゃないですか……眩しすぎます!

 今更ながらですが、フォルトゥナ様とカナデ様が絡むと、いつもやらかしてしまいます……。
 これはいい加減、反省しなければなりませんね?

 私が物思いに更けていると、すぐ隣で「わ、私の耳を無茶苦茶にしたのに……。カナデさんは、誰彼構わずフラグ立てすぎですよね~?」と、ハーモニー様は付近にあった鋭利物えいりぶつを握り締めました。

 どうやらハーモニー様は、ツンデレさんじゃなくてヤンデレさんでしたね。
 カナデ様には、後で謝っておいた方が良さそうです。テヘッ。

 すると突然、ハーモニー様がハッと我に帰ったような顔をしました。
 そして彼女からも、問題発言が飛び出してしまったのです……。

「そ、それでこの前、率先して口移しをしたんですか、ティアさん~!」

「な、な、何を言って!」

 あまりにも突然の事に、大人の余裕を見失ってしまいました。
 彼女の言うこの前とは、おそらくワイバーン戦で瀕死の怪我を負ったカナデ様を助けるために、私がポーションの口移しを自発的にした事を言っているのでしょう……。

「で、でも、それを言ったらフォルトゥナ様も、ハーモニー様もおこなったではありませんか!」

  わ、私にだって、あのような行為をしたことに理由があるのです!
 確かに、衝動的に動いてしまった部分があったことは否定しませんよ?
 しかしあの時は、カナデ様が本当に危機一髪だったんです──。


 ワイバーンの尾の一撃を受け、意識を失ったカナデ様に、一番近いフォルトゥナ様が、真っ先に解毒薬を口に含み、カナデ様が受けたワイバーンの毒を解毒したのです。

 それを見た私は、フォルトゥナ様も怪我をしていたので、私が持っているポーションをカナデ様に、フォルトゥナ様は自身の回復を行ってもらうように指示をしました。

 不謹慎ふきんしですが、フォルトゥナ様との間接キスのためだ、っと一瞬、脳裏をよぎってしまったのですよね……。
 躊躇ちゅうちょ無く、カナデ様の唇を奪うことができました!

 そ、それでも? あの時はカナデ様が心配でって気持ちが一番でしたよ! 本当ですから!?
 そしてあの時、飲ませ終わった後にカナデ様の容態を確認して気づきました。

「私のポーションだけでは足りない……」と……。

 私はその後、ハーモニー様を見つめました……カナデ様を助けるために、あなたに持たせていたポーションも頂きたいと。

 そして、ハーモニー様は何を思ったのか、御自身もポーションを口に含み、カナデ様に唇を重ねたのです……。

 別にあの時は、ハーモニー様がする必要もなかったのですがね。
 私に渡してもらえればよかったので。
 今思えば、結構濃厚になさってましたね……。

  あの時の、私達の救命処置もあって、カナデ様は無事命を繋ぎ止めた訳だったのです。


「──だから、あれは人命救助だったのですよ! 率先して行うのは当然ですよね?」

 そうは言ったものの、あの時少しでもやましい気持ちを抱いてしまった自分が恥ずかしいです……。
 その為か、ついその話題をハーモニー様に出され、少々冷静さを欠いてしまいました。

 必死で反論をした、その時です──!。

「あの……二人とも。少しいいかしら?」

 若干熱くなってしまった私達を見てなのか、フォルトゥナ様が間に割って入ってきたのです。

 そして、ゆっくりと口を開き「ハーモニー! ティアさん! 私達。あの時カナデ君とキスしてしまったけど……。こ、子供とか出来たらどうしよう」と、慌てるように口にしたのです。

「「──っえ?」」

 衝撃的でした……彼女の清らかさは天井知らずだったのです。

「お、お父様が常々言っていたのよ! 男の人と接吻をすると、赤ちゃんができて、夏の方位から朱雀様が子供を連れてくるって!私、知ってるんだから!」

 げ、原因はリベラティオ王でしたか……。
 それにしても、先程の発言だけで黒パン3つぐらい行けてしまいそうです! 困りました!

「だから、男の人と、無闇に唇を重ねてはダメだって教えられてたわ……どうしよう……」

 普段は凛として、尚且つ愛らしいと言う、神々の奇跡によって生まれた美しさをもつ、あのフォルトゥナ様が慌てていらっしゃいます。
 私は今、猛烈に思います。女に産まれてきてよかったと!

 私は悩みました。
 このまま本当の事を話すと、フォルトゥナ様を汚してしまうような説明をしないといけなくなってしまいます……。

 その時、ハーモニー様と目が合いました。それだけで、彼女の気持ちが解ったのです。── 彼女も、子供が産まれるまでの説明はしたくないと!

 フォルトゥナ様に、嘘をつくのは心苦しいのですが……致し方ありません!

「大丈夫ですよ? フォルトゥナ様。あの日は朱雀様もお休みの日です。お子様は産まれませんので安心して下さい」

 かなり無理が有りましたか? でも、私のフォルトゥナ様なら……。

「本当? よかったわ……まだ、子供を育てる自信が無いもの」

 あぁ~もう! 可愛いですし、ちょろいです。
 そして、フォルトゥナ様の子を孕みたいです! あ、今なら行けそうな気がします……。
 
「トゥ、トゥナさん。ティアさん。そろそろ寝ましょうか? 明日になれば、魔力切れのカナデさんも目覚めてると思いますし。皆さんで様子見に行きましょう~!」

 強引に寝かしつける作戦ですね? 仕方ないですね、今晩は雲行きが怪しいですし、私も乗っかっておきましょうか?

「そうですね、私達も今日はかなり濡れてしまいましたし。カナデ様が起きられた時に私達が風邪など引いていたら、逆に心配をかけてしまいます。そろそろ寝ましょうか?」

 まぁ、いくらかのネタも仕入れることができました。今日のところはよしとしましょう……。

 さて、今からは──フォルトゥナ様の寝顔を拝見させて頂く時間です!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

処理中です...