上 下
94 / 469
第二章 海上編─オールアウト号─

第83話 船の修理材

しおりを挟む
 トゥナとの決闘が翌日持ち越しとなった俺は、今船長と共に格納庫の廃材置き場に来た。

「──じゃぁ、ここにある廃材を使ってくれ。持っていってもらっても構わないから好きにしていいぞ」

 彼は廃材と言っているが、俺にはそれが宝の山に見えた。

「好きにって、思ってたより良い材料が多いのですが……」

 修理か何かで使われた残りの様だが、ソコソコのサイズの木材や、錆びているが磨けば使えそうな金属部品。
 特に気になったものでは、銅板まである。──こんなもの、船の修理に使うのだろうか?

「構わないぞ。小さな物なんかだと、船の修理には向かないからな。資材もイードル港で仕入れたばかりだ、かえって持っていってくれた方が片付ける手間が省けるってもんだ! その分筋トレに時間が割ける!」

 そう言いながらポージング【サイドチェスト】をとる船長。──確信した、この人筋肉マニアだ! 異世界住人ってこんな人ばかりなのか?

「それでは、船長さんそう言うなら本当に貰っていきますよ?」

 そう言いながら、俺は船長の目の前でマジックバックに入るものを次々と入れて行く。
 流石の船長も、その光景には驚いているようだ。

「いやぁ、君達には驚かされっぱなしだな! そんなマジックアイテムまで持っているとは……。それだけ詰め込むと、重量は中々の物ではないのかい?」

 驚く所ソコかよ……。
 この人はマジックバックに何を期待してるんだよ? ダンベル変りにでもする気なのか?

「ご期待には添えませんよ?」

 彼の目の前で、軽々と振り回して見せた。──そこまでガッカリしなくても、マジでダンベル変りに使いたかったのか?

 あの筋肉は置いておいて、俺は入る分だけの廃棄資材をマジックバックに入れるだけ入れさせてもらった。
 使えないような木材でも、乾いていれば薪変りにもなるしな。
 全部持っていってしまえ。

「まったく、本当にマジックバック様々だな」

 前に検証したらバックに入りさえすれば大体なんでも入るし、ミコに頼めば保存状態のコントロールもある程度できる。
 食べ物も、入れておけば痛まないのが最高だ。

「あ~……でもそう言えば」

 それでも水をダイレクトに入れたら、バックがビシャビシャになったな。
 あの時はミコに怒られたっけか?

『そうカナ! 普段からマジックバック沢山使ってるシ、ボクにもっと優しくすカナ! それと水の件は、今でも根に持ってるシ。プンプンだシ!』

 いや、絶対に忘れてただろ? 悪かったよ、本当にミコはいざという時便りになるよな!

『そうカナ、便りになるモン! エッヘン』

 考えても見れば、今ではマジックバックのない旅は考えられない。
 ミコが言う通り、少しは誉めてやってもいいかもな?

「よし、詰め終わった。本当にほとんど頂いちゃいましたけどよろしかったんですか?」

「構わない構わない。それでは、明日の為の木剣作りを頑張ってくれ! 加工用の工具は後で持っていかせるからな?」

 そう言いながら、去り行きざまにワンポーズ【フロントラットスプレット】をして船長は去って行った。
 
 イードル港では普通に見えたのに、海上に出て異常性が目に見えて増してきてるな……。
 この世界の海に、そんな魔力があるなら嫌だな……っとか思いながら、俺も自分の船室に戻ることにした──。

 ──自室に戻ると、俺の部屋の前から走りさっていく小さい筋肉……もとい船員がいた。
 そして扉の前には工具箱が置かれている。

  良く見ると、工具箱には『明日楽しみにしてるぜ!』っとの書き置きが。
 期待が重いから止めてほしい!

 俺は、ため息をつきながら部屋のドアを開けた。
 室内は八畳ほどの大きさの個室だ。

 船室をあてがわれて中を見た時は、こんな広い部屋を一人で使っていいのか? っと驚いたもんだ。

 ちなみにエルピスの他のメンバーは、もっと大きな部屋で同室だ。向こうは華やかなんだろうな……ってべ、別に寂しくなんかないしね!

  そんなことを考えながらも、木刀作りの材料を取り出した。
  実は夏休みの自由工作で、小学生の頃に一度作ったことがあるんだよな。

『お前はワシの孫じゃ! 刀に縁のあるものにしなさい』って、じいちゃんに無茶振りされたんだよな……懐かしい。

「さて!  懐かしんでても仕方ないな? 材料は何を使おうか。」 

 俺は、見た目の違う木の板を並べながら頭を悩ませる。
 正直、どれがいいかまでは分からない。──そうだ! 鑑定を使って耐久度の高い物にすればいいんじゃないか?

 俺は思い立ったまま「鑑定!」っと唱えた。

 イチョウの木、えんじゅに……本赤樫ほんあかかし
 おっ? これは中々に良さそうだな……あ、栗の木なんかもあるぞ?

 正解は全く分からない! でもまぁ、耐久力がかなり高いし、これでいいか?

 数ある木の板の中から、本赤樫の板を手に取った。
 横幅がかなり細く何とか使えそうだ、長さにも問題ない、厚みも……うん、ギリギリでかえって加工の手間が省けそうだな。

「よし、良く分からないが本赤樫に決めたぞ!」

 まるで木刀や木剣作りの為にあるようだな。
 五、六枚あるし、失敗しても作り直せそうだ。
 道具箱を開けると、中には綺麗に整理されているいくつもの道具がある。

 ノコギリにヤスリ、金づちにのみ、釘、カンナまであるじゃないか…見たこと無いものまで。船の修理に使う道具だけあって、ずいぶん品揃えがイイことで……。

 船室から覗く窓の外を見つめると、うらめしいほどの快晴だ。──明日……雨で中止にとかならないかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...