異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第一章 グローリア大陸編

第73話 ワイバーン戦 上

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 俺が飛び出すと、それに並走するようにトゥナも走り出した。

 そして少し後方では、バリスタのパーツを抱え物陰に向かって走り出すハーモニーとティア。──よし! まずは、予定通りのスタートをきったぞ。

 このまま起きない間に、接近して倒せれば万々歳ばんばんざいなのだが……。

 なんとか、ワイバーンとの距離を十メートル程まで詰め寄る事に成功した。
 もしかしたらこのまま行けるのでは? っと無銘に手を置いく……。

「──ちっ……そんなに甘くは無いよな?」

 あと一歩と言うところまで近づいたが、残念ながらワイバーンの爬虫類の様なその瞳は大きく見開かれたのだ。

「──くそぉ! 届けぇぇ!」

 俺は無銘を抜刀し、トゥナはレーヴァテインを抜いた。俺達の攻撃は届くか? っと思われたのだが。

 ──残念ながらその矢先、突如今まで経験した事の無い激しい暴風が、俺達を襲った。
 俺とトゥナはその風に抗うことが出来ず、あと一歩届かぬまま飛ばされてしまったのだ……。

 何とか受け身を取り、無事に着地をして体勢を立て直す。

「──後少しだったのに!」

 悔しそうな声をあげてはいるが、トゥナも何とか無事なようだ。

 俺達の攻撃が届かなかった事を、まるで嘲笑あざわらうかのように「ギシャァグァァ!」と、ワイバーンが叫び声を上げた。

 翼を羽ばたかせたたずむ光景は、幼い個体ながらも竜種の風格を身にまとっている……。──この迫力で子供……それでこの威風堂々いふうどうどうで立ち……。驚きしかないな……身体中の毛が逆立ちそうだ。

 俺とトゥナは、アイコンタクトと共に左右に間隔を取る。
 俺は鑑定眼を発動させ、無銘を握った。トゥナも同じく、レーヴァテインを抜き構えを取る。

「トゥナ……来るぞ? 覚悟はいいな?」

「えぇ……。カナデ君も気をつけて!」

 ワイバーンは二本の脚を俺達に向け、まるで鳥が獲物を捕らえるかの様に急降下してきた!

「早い!」

 俺は体を回転させるようにその一撃を避け、その最中さなか抜刀を行った。
 しかし、刃が通り斬れはするものの、思っていたより早い攻撃に、カウンターのタイミングが合わず、ワイバーンへ与えた傷は浅いものとなった。

 横目でトゥナを見ると、追撃に向かった彼女も俺とほぼ同様の結果のようだ……。

 これは、予想してたより厄介かも知れないな。リーチの違いが明白だ……。

 俺の抜刀術なら、自らを省みず攻撃だけに専念すれば相手より先に斬りつけれる自信はある。
 だがもし、カウンターを決めたとしてもワイバーンからの回避不能な攻撃が来たら……あの質量だ、一撃で立てなくなりそうだ……。

「そんなもん……当たったら死んじまうな……」

 しかもワイバーンは、俺達のカウンターを受けてか、武器が届かない高さでホバーリングを始めた。

「それなりに頭も切れるようだな……」

 反撃と言わんばかりに、ワイバーンは脚を使い、射程外から次々と引っ掻いてきた。
 次々と来る攻撃に、俺達は防戦一方になってしまう。──まるでこちらを弱らせに来ている様だな……。

 さっき程はないが、羽ばたく度に突風が俺らを襲う。強い風で立ち回りにくく反撃に転ずることが出来ない。
 俺はどうしても避けるのに手一杯になってしまう。

 トゥナの方は、それでもちょくちょくとカウンターを試みる余裕があるようだ……。
 しかしリーチと風の為か、一撃一撃の踏み込みにいつもの切れがない。

「このままだと不味いな……」

 手応えがまったくないまま、同じような攻防が続く。
 俺も慣れてきた為、少しずつワイバーンの攻撃に対応してきてはいるが、かすり傷程度しか与えられずワイバーンの体力が一向に削れるようすがない。

 このままでは、俺達のスタミナが切れることは火を見るより明らかだ。
 そんなことを考えていると、一瞬トゥナと目が合う。

「──カナデ君、私に任せて! いつものフォーメーションで!」

 トゥナの台詞を聞き、俺がトゥナの後ろへと下がった。
 彼女は攻撃をやめ、すべての行動を回避に専念し始めた。

「──舞姫まいひめ!」

 彼女が叫ぶと、彼女の体にもやがかかる。無駄のない、最短距離での回避を行っていたトゥナは、動きに緩急をつけ始めた。

「こ、これがトゥナのスキルか……」

 靄を身にまとい、的が絞れなくなったのだろう。目に見えて、ワイバーンの攻撃の命中精度が下がっている。──前に聞いたことがあるぞ……。たしか彼女の持つ、回避率上昇のスキルだったか?

 先程まで二人で受けてた攻撃を、すべて踊るかのように避けきるトゥナ……。その動きは可憐で、つい見いってしまいそうになった。

 ワイバーンも攻撃が当たらず、苛立ってきているのか? 明らかに攻撃が荒くなってきている。
 先程までより、大きな振りの一撃をトゥナが危なげ無く避けた。

「──これはチャンスだ!」

 それを見た俺がすかさず飛び出し、抜刀の一撃を浴びせた。

「──グギャァァァァァ!」

 くそ! まだ足りない!
 
 翼を狙ったものの、どうしてもリーチが足りず咄嗟とっさに足に切り替えた。
 無銘の攻撃力と抜刀術の速度があっても、届かぬ事には斬ることは叶わない。
 だがしかし──俺はその中、何とかワイバーンの指を二本飛ばす事に成功したのだ。

「ギュグァァァ!」

 目に見えて痛がるワイバーンに、二人掛かりで追撃に転じるがすかさず大きく羽ばたき暴風と共に空に逃げられた……。

 これは非常に厄介だ……。
 考えても見れば、今のを恐れ逃げ出す可能性もあるじゃないか!?

 赤い血を垂れ流しながらも、俺達を見つめながら上空を大きくグルグルと飛び回り始めた……。──取りあえず……逃げる心配は無さそうか?

 ワイバーンの飛行速度がどんどん上がり、それでもその行為が止まらない──アイツ……何をする気で。

 納得する速度まで到達したのか? 突然飛んでくる方向を変え、落下の速度を利用しながら、こちらに向かって真っ直ぐと飛んで来たのだ……。──おいおい……まさか! あの速度で体当たりを仕掛けてくるのか!

「トゥナ、ヤバイのが来る……逃げろ!  」
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