異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

文字の大きさ
56 / 469
第一章 グローリア大陸編

第52話 腐葉土とぬか喜び

しおりを挟む
 実は俺が、トゥナから報酬金をもらって買いに行ったのは腐葉土の雨よけだ。
 そして、これを被せることによって保温効果が見込める。はずだけど……。

 本来であればビニールがよかったが、異世界にそんな物が無いことを完全に失念していた。
 そして、急遽きゅうきょ黒い魔物の皮を代用品として購入してきたのだ。──これがまた高くて高くて……。異世界に来てから本当に金が貯めれないな、俺。

『カナデ本当に浪費家カナ……。絶対なにかに取りつかれてるシ』

 ──おう、良く分かったな? 絶賛、お前にとりつかれてるよ。

 ダメなおっさん達の中で、悪い方に頭角を現しているシータは、俺の表情を読み取ってか「でも、お金かかってるっすよね? わっしら無一文っすよ、支払いとか絶対に無理っすよ」と、顔をひきつらせる。──いくら俺でも、勝手に買ってきて強制請求なんてあこぎな商売はしないぞ……。

「金なんか取らないよ。お前達の就職祝いみたいなもんだ、持ってけ」

 そう言いながら、俺は魔物の皮を子分達に照れ隠しで投げつけた。

  子分達はそれを受け取ると「兄さん有り難うございます!」と次々に涙し始める。──コイツら、本当に暑苦しいな……。こうも感情を素直に出されると照れくさい……でもまぁ、悪い気はしないか?

「ほれ、早く穴に被せろ、ひとまずそれで完成だから」

「はい、喜んで!」

 四人は魔物の皮の端を持ち、バサッ! っと、まるでア○プスの少女のような勢いで飛び上がりながら広げるように張った。
 それは穴の上で広がり、そのままゆっくりと地面に置かれた。その後、飛ばないように近くにあった石で周りを固定した。

「完成でヤンス!」との掛け声で、泣きながら喜びをあらわにする子分達。
 大の大人がウサミミを付けて、手放しで喜びを表現している姿は、胸のモヤモヤが止まらず、張り裂けそうになるな……。

 こいつら完成って叫んでたけど、さっきも言ったがひとまずだからな? ひとまず。喜んでいる子分達には、水を指すようで非常に悪いんだが……伝えないとだよな?

「喜んでるところ悪いが、実際の腐葉土が出来るのは早くて三ヶ月以上先だぞ? 野菜を植えて収穫できるのは、さらに先になるな……」

 俺の言葉に四人は、目を見開き耳をピーンっと立てたのだ。──驚いたときの野ウサギのようだな? コイツらは動揺を全く隠せてない……。あれだ、野生で生きてたら、真っ先に狙われるタイプだ。

「あっしらのやって来た事は無駄だったでヤンスか!」

「兄さんに騙されたっすよ! わっしらヤッパリ無駄働きだったっすよ!」

「何でそんなひどいことするの? 頑張ったんだよぉ? 本当に嬉しかったのに……」

「ウサウサウサウサ」[泣き声]

 いやいや……言いたいことは分かるぞ? ただ結果が出るのが先の話だって言っただけだろ?
 仕方ないだろ……俺が提案できる知識で、最善だと思ったのがこれだったのだから。

「お前ら、落ち着けって」

 でもまぁ、コイツらも必死なのだろう、やっと見つけた安住の地な訳だ。
 そこでの初仕事の結果が出るのがまだまだ先だと言われたのだから。文句も言いたくなるか?

「この教会も、すぐさま金がスッカラカンになる訳じゃないんだから。まずはお前達が、がんばって何とかしろよ……。畑をもっと広げるとかあるだろ?」

 石がゴロゴロ埋まってるし、雑草も生い茂っている。土地はまだ空いてるようだし、やることは山のようにあるだろうに……。

 俺の発言を聞いてか、ハーモニーが「何でカナデさんがウチの経済状況知ってるんですか?」と突っ込みを入れてきた……。

「ま……まぁそれは見てればわかるさ。いざとなったときに売れそうなものも残ってるしな? 食料の蓄えもあったし……」

「そう言うことなんですね~」

 と、寝てる子供達の頭を撫でるハーモニー。──経済的な理由を知ってる理由……。まぁ、別に隠すわけじゃないんだけどな……。

「とりあえず、俺達が次来るのは二日後ぐらいだ! それまでにハーモニーに仕事を教えてもらうんだぞ! お前たちならできる!」

「「「「はい、喜んで!」」」」

 相変わらず返事だけはいいな……。しかし、危機感が感じられん。

「真剣に取り組まないと……」

 俺はそう言ってトゥナを見た。

 子分達はその意味に気付いたのだろう、今日一番の声で「「「「イェッサー!」」」」っと叫んだ。その声で起きる子供達……。
 
 俺は、睨み付けてきたトゥナとハーモニーに、訴えるかのように元子分達を指さした。犯人はアイツらだと……。

「ひどいっす! 兄さん!」

「僕たちを売らないでよぉ~」

「死にたくないでヤンス! 死にたくないでヤンス!!」

「ウサウサ~ウサウサ~ウサウサ~!」[号泣]

 売らないでとか言うなよ、俺を巻き込むな!

 俺は「じゃぁ、また来るから頑張って働けよ?」と捨て台詞を残し、競歩で教会の出口へと向かった。 同じ過ちを二度は起こさないのだよ!

『カナデ……すごく格好悪いカナ……』

 い、いいんだよ! 残念ながら、俺が格好いい試しなんて無いんだから……。
しおりを挟む
感想 439

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...