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1章
第64話 エトラと話
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「はぁ、はぁ、ここが左軍か……」
俺は息を切らしながら、左軍の陣に着いた。
すると左軍の隊長は、俺を見つけるとゆっくりと近づいてくる。
そして俺の目の前に来ると、跪き口を開いた。
「カーメンさん、た、大変です」
左軍の将軍は傷だらけだ。
恐らく敵を食い止めるために全力を尽くしたんだろう。
「エトラはどこだ? 魔王軍はどうなっている?」
俺は傷だらけの将軍に質問する。
すると将軍は重々しく口を開いた。
「さ、先ほど左軍に突然上位種の魔物が大量に出現し、一気に形勢が逆転されました。ですがエトラさんは諦めず、ありとあらゆる軍略を用いて魔物の侵攻を止めました」
傷だらけの将軍は悔しそうに呟く。
被害を最小限に……か、エトラは凄いな。
だが俺は左軍を見渡すと、かなり多くの兵が傷ついていることが分かる。
「ではどうしてエトラがいないんだ? 魔物を押し止めていたんだろ?」
俺がそう聞くと、傷だらけの将軍は下を向きながら答える。
「今エトラさんは天幕にて治療中です。かなり重傷のようで……」
「だ、誰にやられたんだ? エトラを守る兵士は精鋭だったはずだ!」
「そ、それが、突然現れた銀髪の男にやられたと」
俺はその言葉を聞いて、膝から崩れ落ちた。
その話を聞いた時、頭が真っ白になった。
その銀髪の男というのは間違いなく魔王だろう。
原作ではボスキャラの中で最恐のキャラだ。
だがこの世界は原作のストーリーとだいぶ異なってしまっている。
そのため魔王が侵攻しているかどうか分からなかったのだが。
「取り合えずエトラと話がしたい。通してくれ」
俺がそう頼むと、将軍はゆっくりと頷く。
そして俺は天幕に入っていくのであった。
★
天幕に入ると、エトラはベッドに横たわっていた。
その横では医者らしき人がエトラを治療している。
そしてエトラが俺に気づくとゆっくりと口を開いた。
だがその目は虚ろで生気がない。
俺は治療中の医者に許可を取り、エトラの横まで行く。
「エトラ!」
「カ、カーメンさん、すみません……」
エトラは辛そうに呻く。
その姿はかなり痛々しい。
俺がそんなことを考えていると、エトラは辛そうな目のまま、ゆっくりと口を開く。
「左軍は序盤劣勢でしたが、私が軍略を駆使してなんとか持ち堪えました。しかし、突然現れた男によって一気に形勢が逆転しました。その男の魔力量は桁違いで、私達では到底敵いませんでした」
エトラはそこまで言うと、ゆっくりと息を吐く。
そしてさらに話を続けた。
「今は予備軍を投入し、前線は何とか持ち堪えていますが、もう長くは持ちません。銀髪の男が前線にいる限り、いくら兵士がいてもあの魔力量によって焼かれてしまいます」
俺はエトラの報告を聞き、思わず地面を叩く。
このままでは前線が崩壊し、すぐに魔物がこちらまで攻めて来るだろう。
「前線にて精鋭兵の隊長達が銀髪の男を足止めをしていますが、もう長くは持たないでしょう」
エトラはそこまで言うと、大きく息を吐く。
俺はそんなエトラを見ながら、思わず口を開いた。
「ありがとうエトラ、君はよく戦った。後のことは俺が何とかしよう」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
今の現状を把握して、これから何をすべきか考えなければ。
そして天幕から出ていこうとすると、エトラが俺を止めるかのように声を出す。
その小さな声は俺にしか聞こえないような声で俺の耳に届いてきた。
「奴はいくつか魔法書を持っていました」
エトラはゆっくりと俺の目を見ながら、そう言った。
魔法書……おそらくSS級のアイテムだろう。
各国に1つ存在するかぐらいのレア物。
つまり奴には魔術の才能があり、魔力量が常人と桁違いということだ。
だがそれは俺も同じだろう。
「ありがうエトラ。ゆっくり寝ててくれ」
俺はそう呟いて天幕から出る。
そして辺りを見渡し、決心を固める。
「さて、やるか」
俺は息を切らしながら、左軍の陣に着いた。
すると左軍の隊長は、俺を見つけるとゆっくりと近づいてくる。
そして俺の目の前に来ると、跪き口を開いた。
「カーメンさん、た、大変です」
左軍の将軍は傷だらけだ。
恐らく敵を食い止めるために全力を尽くしたんだろう。
「エトラはどこだ? 魔王軍はどうなっている?」
俺は傷だらけの将軍に質問する。
すると将軍は重々しく口を開いた。
「さ、先ほど左軍に突然上位種の魔物が大量に出現し、一気に形勢が逆転されました。ですがエトラさんは諦めず、ありとあらゆる軍略を用いて魔物の侵攻を止めました」
傷だらけの将軍は悔しそうに呟く。
被害を最小限に……か、エトラは凄いな。
だが俺は左軍を見渡すと、かなり多くの兵が傷ついていることが分かる。
「ではどうしてエトラがいないんだ? 魔物を押し止めていたんだろ?」
俺がそう聞くと、傷だらけの将軍は下を向きながら答える。
「今エトラさんは天幕にて治療中です。かなり重傷のようで……」
「だ、誰にやられたんだ? エトラを守る兵士は精鋭だったはずだ!」
「そ、それが、突然現れた銀髪の男にやられたと」
俺はその言葉を聞いて、膝から崩れ落ちた。
その話を聞いた時、頭が真っ白になった。
その銀髪の男というのは間違いなく魔王だろう。
原作ではボスキャラの中で最恐のキャラだ。
だがこの世界は原作のストーリーとだいぶ異なってしまっている。
そのため魔王が侵攻しているかどうか分からなかったのだが。
「取り合えずエトラと話がしたい。通してくれ」
俺がそう頼むと、将軍はゆっくりと頷く。
そして俺は天幕に入っていくのであった。
★
天幕に入ると、エトラはベッドに横たわっていた。
その横では医者らしき人がエトラを治療している。
そしてエトラが俺に気づくとゆっくりと口を開いた。
だがその目は虚ろで生気がない。
俺は治療中の医者に許可を取り、エトラの横まで行く。
「エトラ!」
「カ、カーメンさん、すみません……」
エトラは辛そうに呻く。
その姿はかなり痛々しい。
俺がそんなことを考えていると、エトラは辛そうな目のまま、ゆっくりと口を開く。
「左軍は序盤劣勢でしたが、私が軍略を駆使してなんとか持ち堪えました。しかし、突然現れた男によって一気に形勢が逆転しました。その男の魔力量は桁違いで、私達では到底敵いませんでした」
エトラはそこまで言うと、ゆっくりと息を吐く。
そしてさらに話を続けた。
「今は予備軍を投入し、前線は何とか持ち堪えていますが、もう長くは持ちません。銀髪の男が前線にいる限り、いくら兵士がいてもあの魔力量によって焼かれてしまいます」
俺はエトラの報告を聞き、思わず地面を叩く。
このままでは前線が崩壊し、すぐに魔物がこちらまで攻めて来るだろう。
「前線にて精鋭兵の隊長達が銀髪の男を足止めをしていますが、もう長くは持たないでしょう」
エトラはそこまで言うと、大きく息を吐く。
俺はそんなエトラを見ながら、思わず口を開いた。
「ありがとうエトラ、君はよく戦った。後のことは俺が何とかしよう」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
今の現状を把握して、これから何をすべきか考えなければ。
そして天幕から出ていこうとすると、エトラが俺を止めるかのように声を出す。
その小さな声は俺にしか聞こえないような声で俺の耳に届いてきた。
「奴はいくつか魔法書を持っていました」
エトラはゆっくりと俺の目を見ながら、そう言った。
魔法書……おそらくSS級のアイテムだろう。
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つまり奴には魔術の才能があり、魔力量が常人と桁違いということだ。
だがそれは俺も同じだろう。
「ありがうエトラ。ゆっくり寝ててくれ」
俺はそう呟いて天幕から出る。
そして辺りを見渡し、決心を固める。
「さて、やるか」
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