無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

そらら

文字の大きさ
上 下
33 / 72
1章

第33話 ゴーレム

しおりを挟む
「今は何階層だ?」
 
 俺は横を歩くセレスに話しかける。
 
 現在、俺たちは数体の魔物を狩り終えて、約二時間ほど経過した。

 タイムリミットが7時間な為、少しずつペースを上げていかないといけない。
 
「今はおそらく6階層だ」
 
「なら順調に攻略できているな」
 
「ああ、だがここからは今までのように簡単には行かないかもしれない」
 
 セレスは難しい顔をしながらそう言う。

 それはもちろん俺もわかっている事だ。

 当たり前の事ながら、ダンジョンというものは階層が上がる事で難易度が上がっていく。
 
 最初は難なく進むことができているが、階層が上がっていくにつれて攻略の時間が掛かっていくだろう。

 俺はそう考えつつ、気を引き締めて歩いていると、リアが突然口を開く。
 
「さっきからループしてませんか?」
 
 リアはそんな質問をしてくる。

 確かに俺もおかしい部分があったことに気づく。

 さっきから同じ道を何度も通っている気がするのだ。
 
「ループになる原因は大体《幻覚魔法》が掛けられているか、ダンジョン内にある鉱石だろうな」
 
「ああ、だけど俺らに幻覚魔法はかけられていないから、これは後者の確率が高いか……」
 
 ダンジョン内には様々な鉱石が埋まっている。

 それらの鉱石には魔力が宿っており、魔力の影響でループする事がある。
 
「だが鉱石がこのダンジョン内にあったか? 俺は見ていないんだが」
 
俺はセレスに問う。

 するとセレスは難しい表情を浮かべ、ゆっくりと口を開いた。
 
「鉱石が近くに埋まっていないとなると……魔物に鉱石が埋め込まれているかもしれない」
 
魔物の中には鉱石を自分の意思で埋め込むことができる魔物が存在する。

 そいつは《ゴーレム》と呼ばれており、石でできた人形の魔物だ。

 奴は自分の体内に鉱石を埋め込み、それを武器として戦う事ができる。
 
「ゴーレムはS級指定の魔物です。戦うとなると非常に厄介かと」

冒険者であるクレハがそう忠告する。
 
ゴーレムはS級指定の魔物だ、安全を考えればこのダンジョンから出るべきである。
 
「だがここまで来たんだ、なんとかこのダンジョンを攻略するぞ」
 
「そうだな、相手が誰であろうと私たちは戦うだけだ」
 
セレスがやる気に満ちた顔でそう答える。

 するとクレハが突然、大声で叫ぶ。
 
「伏せて!」
 
俺たちはその声を聞き、咄嗟に地面に伏せる。

 すると俺の頭上を何かが通過した。
 
 俺はその物体が飛んでいった方を見る。

 するとそこには、1匹のゴーレムがいた。

 そのゴーレムは全長3メートルはある巨大な人形の化け物で、体には様々な鉱石ガ埋め込まれている。
 
(まさか、もうお出ましとはな)
 
俺はそう思いつつも立ち上がり、魔法を発動する準備をする。
 
「前衛は私とクレハに任せろ」
 
そう言ってセレスとクレハはゴーレムに向かって走り出し、同時に剣を振る。
 
だがゴーレムはその攻撃を、腕を使って防ぐ。
 
《ゴガァア!》 
 
するとゴーレムは咆哮を上げ、その長い腕を振り回してくる。

 セレスとクレハは後ろに下がりながら、その攻撃を躱す。
 
「やはり今までの魔物とは格が違うようだな」
 
俺はそう言いながらも、援護するために魔法を発動させる。
 
《上級魔法 風刃》 
 
俺が放った魔法により、風の斬撃がゴーレムを襲う。

するとゴーレムは腕でガードし、風の斬撃を防ぐ。

 やはりゴーレムだけあって、硬すぎるな。

 そう思っているとゴーレムから魔力が溢れ始めた。
 
《ジョ、ジョウ、キュウマホウ 風刃》 
 
そして咆哮を上げながら、俺と同じ魔法を使ってくる。
 
その攻撃は俺とリア、セレス、そしてクレハを同時に襲い、全員が吹き飛ばされる。
 
「あ、あいつ、俺の魔法をコピーしたのか!」
 
俺はそう叫びつつ、立ち上がる。

 すると後ろからリアの治癒魔法がかけられる。
 
「最近覚えたばかりですが、これで治るはずです」
 
リアの治癒魔法により、俺らは全回復する。
 
「凄いじゃないかリア、いつのに治癒魔法まで覚えたんだ?」
 
セレスがそう質問すると、リアが嬉しそうに答える。
 
「ロランお兄様に教えて貰ったんです!」
 
確かにこの数日前、リアに治癒魔法を教えていた。

 だがここまで治癒魔法を使いこなせるとなると、リアはおそらく天才だろう。
 
俺はそう考えながらも、ゴーレムの方を向き戦闘準備をする。
 
『ゴガァァァァァァ!』
 
ゴーレムが咆哮を上げ、こちらに向かってくる。
 
《炎斬ッッッ!》
 
《雷光一閃ッッッ!》
 
するとクレハとセレスが同時に、斬撃を放つ。
 
その攻撃はゴーレムの体を斬り裂き、大きなダメージを与えているように見える。

 だがゴーレムはその傷を物ともせず、こちらに向かってくる。
 
(おかしいな、ダメージは通っているはずなんだが)
 
俺はゴーレムの動きに違和感を感じる。
 
確かに奴ら魔物は生物だ。

 だからダメージが入れば怯み、動きが止まる。

 だがこのゴーレムは怯みもせず、ただ俺たちに向かってきている。
 
「そういうことか」
 
俺は瞬時にゴーレムの正体に気づく。
 
そして俺は魔法を放つ準備をした。
 
《上級魔法 炎波ッッ!》
 
俺が放った炎波は、ゴーレムの鉱石に直撃する。

 するとその鉱石は綺麗に消滅し、体の一部にヒビができた。
 
「セレス、クレハ! ゴーレムに埋め込まれている鉱石を破壊すれば倒せるぞ!」
 
俺がそう叫ぶと、2人は頷きゴーレムの体に付いている鉱石を破壊しようと、剣を振るう。
 
《雷光一閃ッッ》
 
《炎斬ッッ!》
 
その斬撃はゴーレムの体に付いている鉱石を斬り裂き、その体を崩壊させる。
 
『ゴガァァァァ……』
 
ゴーレムは最後の力を振り絞って、腕を高々と振り上げる。
 
だがその攻撃が来る前に、俺の魔法が間に合う。
 
《上級魔法 絶炎》 
 
俺の掌から放出された黒い炎の玉が、ゴーレムの体に直撃しその体を焼き尽くす。

 そしてそのままゴーレムは倒れ、灰となって消えていった。
 
俺はそれを確認すると、地面に座り込む。
 
「はぁ、なんとか倒せたな」
 
「流石はロランだな」
 
セレスが感心の声をあげ、こちらに寄ってくる。
 
「はは、なんとか倒せてよかった」
 
俺はそう言いながら、立ち上がりメンバーの様子を確認する。
 
「クレハさん! 今治癒魔法をかけますね!」
 
クレハはリアに回復魔法をかけてもらい、傷を治してもらっている。
 
「あ、ありがとう、リア」
 
クレハは恥ずかしそうにリアにお礼を言う。
 
「クレハの傷が治ったら、先へ進むか」
 
俺の言葉にみんな賛成する。

それから20分後、クレハの傷が癒え、ダンジョン攻略を再開するのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...