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序章

第17話 推しのリア

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「師匠、どうでしょうか?」
 
 クレハはメイド服を着ながら、俺にそう聞いてくる。

 その格好はとても似合っており、可愛らしい。
 
「似合ってる、可愛いぞ」
 
 俺がそう言うと、クレハは嬉しそうに微笑む。
 
 俺は今、王城の部屋で休憩をしている所だ。

 そしてクレハはメイド服を着ている。
 
「お仕事は何をすれば良いでしょうか?」
 
「基本はゆったり過ごしてくれて良いぞ、ただ俺が呼んだらすぐに来てくれ」
 
「分かりました!」
 
「そういえば学園も数週間後に始まるし、クレハと一緒に魔法の勉強でもするか」
 
「良いんですか!? ありがとうございます師匠!!」
 
 クレハは満面の笑みでそう言った。

 まあ、学園に入ると貴族が沢山いるだろうし、クレハが馬鹿にされないように魔法の勉強はしておいたほうが良いだろう。
 
 そうして俺らは魔法書がある書庫まで移動する。
 
 そこには沢山の本が並んでおり、魔法書だけで本棚3列分を占めている。
 
 俺はその中から、初級魔法が書かれている本と中級魔法を書いてある本を取り出す。
 
「取り敢えずこの本に書いてある魔法は全部覚えといてくれ、学園では魔法の授業もあるからな」
 
「こ、これを全部……頑張ります……」
 
 そう言ってクレハは初級魔法の本から目を通す。
 
 俺も残りの上級魔法の本を読んでおこう。

 時間がある時に目を通して置かないと、読む時間が無いからな。
 
 俺は上級の魔法書がある場所まで移動する。
 
「ん?」
 
 俺は少し離れた場所から視線を感じ、後ろを振り向く。

 するとそこには第三王女、リアがこちらを見ていた。
 
 リア・レット・ハーキム、16歳だ。

 姉、アリスと違いリアは丸い性格をしている女の子で、髪は白色の長髪をおろしている。

 そんなリアは俺の方をじっと見ていた。
 
 俺は原作の時からリアの推しだ。

 こうやって俺が魔法を学んだのも、リアを守る力をつけたかったからだ。

 リアは平和な王国を望んでおり、悪政に苦しむ民を救済しようとしている。

 そんな性格もあり民から支持を得ていて、彼女のお陰で救われた国民も数多く存在する。

 だが原作だと王位争いに負けて、第二王女、アリスの刺客に殺されていた。

 だから俺はリアを守りたい。
 
「ど、どうしてここに?」
 
「ロランお兄様が最近魔法を勉強してると聞きまして、本当なのか見に来ました」
 
「ああ、俺も一応王族だし、魔法も使えなきゃと思ってな」
 
「か、変わられましたね、ロランお兄様」
 
 リアはそう言いながらも、少し嬉しそうにする。

 俺は原作で、魔法が使えない王子として有名だったが、今は違う。
 
「まあな、俺には守りたい人がいるからな」
 
「ま、守りたい人? ロランお兄様が守りたい人……」
 
 リアはそう呟きながら、考え込んでしまう。
 
 するとリアは俺の持っている上級魔法の本に視線を向ける。
 
「じょ、上級魔法!? ロランお兄様は上級魔法を使えるんですか!?」
 
 俺は少し驚いてしまう。
 
 リアがこんなに驚くのは珍しい。

 まあ確かに俺は魔法が使えない王子として有名だったからな。
 
「お、おう。一応使えるぞ」
 
 すると、リアは目を輝かせながら口を開く。
 
「上級魔法は普通、魔術師が長年勉強をしてやっと使えるようになる魔法なんです」
 
「そうだな」
 
「それをたったの数ヵ月で習得するなんて」
 
 そう興奮しながら語るリアの表情はとても輝いていた。

 俺は久しぶりにリアの笑顔を見たような気がする。

 やっぱり推しは癒されるな。
 
「はは、だけどあまり周りに言うんじゃないぞ。 俺が上級魔法を使えると知られて、狙われたらたまったものじゃないからな」
 
 俺はそう注意する。
 
「勿論です、誰にも言いません」
 
 リアは笑顔でそう言った。

 やはり推しの笑顔はとても良いものだな。
 
「きっと……ロランお兄様なら、この国を良い国に変えてくれますよね」
 
 リアは突然、そんなことを言い出した。
 
「俺は王位には興味ないぞ」
 
「え」
 
 俺はそこまで野心を抱いていない。

 王位になんて興味はないし、むしろ平和に穏便な生活がしたい。
 
 だから、俺は王位になんて興味がないのだ。
 
「俺はリアが王位に就けるように、色々と協力するつもりだ」
 
 まあリアを守るのは勿論だが、王になるための人脈作りを手伝う予定でもある。
 
「ロランお兄様、私では力不足で……」
 
「確かにアリスとアデルは強敵だ、でも完全に国を掌握されていない今しかチャンスはないんだ。俺も協力するから一緒に頑張ろう」
 
「ロランお兄様……! 分かりました」
 
 リアはそう言うと、大きく深呼吸をして俺を見つめる。
 
 なんだかさっきまでとは顔つきが変わり、頼もしい表情になる。
 
「それでは私は部屋に戻りますね」
 
「ああ、またな」
 
 リアは俺に手を振りながら、その場を去って行く。
 
 さっきの顔は真剣そのものだった。

 きっと必死に努力をしてリアは王座を目指すだろう。

 そんなリアを、俺は陰ながら応援するのだった。

 ―――――――――
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