無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

そらら

文字の大きさ
上 下
9 / 72
序章

第9話 魔法の宿題

しおりを挟む
「今日は何の依頼を受けようかな」
 
「これなんてどうでしょうか師匠?」
 
 俺とクレハは冒険者ギルドにあるクエストボードの前に来ている。
 
 クレハが見せてきたのは伯爵家の領地の魔物討伐のクエストだ。
 
「だけどこれ、A級冒険者じゃないと受けられないやつじゃないか?」
 
 依頼内容はトレントという魔物の討伐だ。

 この魔物はA級以上の冒険者じゃないと受けられない。
 
 ちなみに俺はまだCランク冒険者だ。

 なので受ける事はできないが……。
 
「大丈夫です、私はS級冒険者ですので問題はありません!」
 
「え、S級だったのか、凄いな……」
 
 流石はクレハ、将来王国最強の剣士になるだけある。
 
「それじゃあこの依頼を受けようか」
 
「じゃあ依頼書を受理してきます!」
 
 そう言ってクレハは急いで依頼の紙を受付嬢の元に持っていく。
 
 しかし少し心配だな。

 俺はまだ冒険者になったばかりだし、魔法は使えてもA級レベルの魔物とは戦闘経験皆無だ。
 
 俺は少し不安になりながらも、依頼を受理して戻ってくるのを待つ。

 そして数分後、依頼の受理が無事完了し、クレハが戻ってくる。
 
「大丈夫です! 師匠と一緒ならどんな魔物が来ようと倒せます!」
 
 クレハはやる気満々の様だ。

 まあやる気があるのはいいことだ、逆に俺は少し不安になっているけど。
 
 そんな気持ちを押し殺して、俺たちは伯爵領へ向かう事にした。


 
 馬車に揺れながら、俺はクレハに話しかける。
 
「そういえばクレハ、前回出した宿題はやったか?」
 
「はい、魔法のイメージと制御についてですよね」
 
 そう、俺が今回クレハに出した宿題は魔法のイメージと制御だ。
 
 魔法とはイメージで決まる。

 イメージをしっかりしないと、魔法は発動しないし威力も弱くなる。
 
 そしてコントロールが上手くいかないと暴発する事もあるのだ。
 
 だから俺はクレハに魔法のイメージと制御のやり方を教えて、魔法書も貸した。
 
「実は半分理解は出来たんですけど、もう半分は分からないんですよね」
 
 クレハの言う半分とは、きっと魔法のイメージだろう。

 イメージさえできれば、魔法の発動が上手くいくはずだ。
 
「伯爵領まで時間が掛かりそうだし、イメージのやり方を教えてやる」
 
「イメージですか?」
 
「ああ、少し手を触るぞ」
 
 俺はそう言うと、クレハの手を優しく握る。
 
「わ、わわ! 急になんですか?」
 
 顔を赤くするクレハを見て、俺は少しドキッとする。
 
 いかんいかん、今はイメージをさせないと。
 
 俺は心を落ち着かせて、クレハに微量の魔力を流す。
 
「どうだ? 少し感覚が掴めたか?」
 
「は、はい」
 
 俺は少し力を入れて魔力を流しながら、感覚を掴ませていく。

 するとクレハは少し魔力を動かす感覚を理解したようで、指に少しだが魔力を込めるようになってきた。
 
 イメージはできたな。

 後はこの感覚を物にすれば、完璧だ。
 
 俺はそっと手を離そうとすると、クレハの手に少し力が入る。
 
 俺は少し驚きながら、クレハの顔を見る。

 するとそこには、顔を赤くしながら俺の目を見て離さないクレハの姿があった。
 
「あ、あの、まだ感覚が掴めてません。抱き着いても良いですか……?」
 
「え」
 
 潤んだ目でそんな事を言われ、俺はまたもやドキッとしてしまう。
 
「駄目でしょうか?」
 
「お、俺は構わないけど、抱き着かれたらあんまり魔力が流せないぞ?」
 
「大丈夫です」
 
 俺がそう言うと、クレハはゆっくりと近づいてきて俺に抱き着いてくる。
 
(何だこの状況は……)
 
 そういえばクレハは寂しがり屋なキャラクターだった気がする。

 だからこんな風に抱き着いているんだろう。
 
 俺はドキドキしながら、伯爵領に着くまでクレハに抱きしめ続けられたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...