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序章
第9話 魔法の宿題
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「今日は何の依頼を受けようかな」
「これなんてどうでしょうか師匠?」
俺とクレハは冒険者ギルドにあるクエストボードの前に来ている。
クレハが見せてきたのは伯爵家の領地の魔物討伐のクエストだ。
「だけどこれ、A級冒険者じゃないと受けられないやつじゃないか?」
依頼内容はトレントという魔物の討伐だ。
この魔物はA級以上の冒険者じゃないと受けられない。
ちなみに俺はまだCランク冒険者だ。
なので受ける事はできないが……。
「大丈夫です、私はS級冒険者ですので問題はありません!」
「え、S級だったのか、凄いな……」
流石はクレハ、将来王国最強の剣士になるだけある。
「それじゃあこの依頼を受けようか」
「じゃあ依頼書を受理してきます!」
そう言ってクレハは急いで依頼の紙を受付嬢の元に持っていく。
しかし少し心配だな。
俺はまだ冒険者になったばかりだし、魔法は使えてもA級レベルの魔物とは戦闘経験皆無だ。
俺は少し不安になりながらも、依頼を受理して戻ってくるのを待つ。
そして数分後、依頼の受理が無事完了し、クレハが戻ってくる。
「大丈夫です! 師匠と一緒ならどんな魔物が来ようと倒せます!」
クレハはやる気満々の様だ。
まあやる気があるのはいいことだ、逆に俺は少し不安になっているけど。
そんな気持ちを押し殺して、俺たちは伯爵領へ向かう事にした。
★
馬車に揺れながら、俺はクレハに話しかける。
「そういえばクレハ、前回出した宿題はやったか?」
「はい、魔法のイメージと制御についてですよね」
そう、俺が今回クレハに出した宿題は魔法のイメージと制御だ。
魔法とはイメージで決まる。
イメージをしっかりしないと、魔法は発動しないし威力も弱くなる。
そしてコントロールが上手くいかないと暴発する事もあるのだ。
だから俺はクレハに魔法のイメージと制御のやり方を教えて、魔法書も貸した。
「実は半分理解は出来たんですけど、もう半分は分からないんですよね」
クレハの言う半分とは、きっと魔法のイメージだろう。
イメージさえできれば、魔法の発動が上手くいくはずだ。
「伯爵領まで時間が掛かりそうだし、イメージのやり方を教えてやる」
「イメージですか?」
「ああ、少し手を触るぞ」
俺はそう言うと、クレハの手を優しく握る。
「わ、わわ! 急になんですか?」
顔を赤くするクレハを見て、俺は少しドキッとする。
いかんいかん、今はイメージをさせないと。
俺は心を落ち着かせて、クレハに微量の魔力を流す。
「どうだ? 少し感覚が掴めたか?」
「は、はい」
俺は少し力を入れて魔力を流しながら、感覚を掴ませていく。
するとクレハは少し魔力を動かす感覚を理解したようで、指に少しだが魔力を込めるようになってきた。
イメージはできたな。
後はこの感覚を物にすれば、完璧だ。
俺はそっと手を離そうとすると、クレハの手に少し力が入る。
俺は少し驚きながら、クレハの顔を見る。
するとそこには、顔を赤くしながら俺の目を見て離さないクレハの姿があった。
「あ、あの、まだ感覚が掴めてません。抱き着いても良いですか……?」
「え」
潤んだ目でそんな事を言われ、俺はまたもやドキッとしてしまう。
「駄目でしょうか?」
「お、俺は構わないけど、抱き着かれたらあんまり魔力が流せないぞ?」
「大丈夫です」
俺がそう言うと、クレハはゆっくりと近づいてきて俺に抱き着いてくる。
(何だこの状況は……)
そういえばクレハは寂しがり屋なキャラクターだった気がする。
だからこんな風に抱き着いているんだろう。
俺はドキドキしながら、伯爵領に着くまでクレハに抱きしめ続けられたのであった。
「これなんてどうでしょうか師匠?」
俺とクレハは冒険者ギルドにあるクエストボードの前に来ている。
クレハが見せてきたのは伯爵家の領地の魔物討伐のクエストだ。
「だけどこれ、A級冒険者じゃないと受けられないやつじゃないか?」
依頼内容はトレントという魔物の討伐だ。
この魔物はA級以上の冒険者じゃないと受けられない。
ちなみに俺はまだCランク冒険者だ。
なので受ける事はできないが……。
「大丈夫です、私はS級冒険者ですので問題はありません!」
「え、S級だったのか、凄いな……」
流石はクレハ、将来王国最強の剣士になるだけある。
「それじゃあこの依頼を受けようか」
「じゃあ依頼書を受理してきます!」
そう言ってクレハは急いで依頼の紙を受付嬢の元に持っていく。
しかし少し心配だな。
俺はまだ冒険者になったばかりだし、魔法は使えてもA級レベルの魔物とは戦闘経験皆無だ。
俺は少し不安になりながらも、依頼を受理して戻ってくるのを待つ。
そして数分後、依頼の受理が無事完了し、クレハが戻ってくる。
「大丈夫です! 師匠と一緒ならどんな魔物が来ようと倒せます!」
クレハはやる気満々の様だ。
まあやる気があるのはいいことだ、逆に俺は少し不安になっているけど。
そんな気持ちを押し殺して、俺たちは伯爵領へ向かう事にした。
★
馬車に揺れながら、俺はクレハに話しかける。
「そういえばクレハ、前回出した宿題はやったか?」
「はい、魔法のイメージと制御についてですよね」
そう、俺が今回クレハに出した宿題は魔法のイメージと制御だ。
魔法とはイメージで決まる。
イメージをしっかりしないと、魔法は発動しないし威力も弱くなる。
そしてコントロールが上手くいかないと暴発する事もあるのだ。
だから俺はクレハに魔法のイメージと制御のやり方を教えて、魔法書も貸した。
「実は半分理解は出来たんですけど、もう半分は分からないんですよね」
クレハの言う半分とは、きっと魔法のイメージだろう。
イメージさえできれば、魔法の発動が上手くいくはずだ。
「伯爵領まで時間が掛かりそうだし、イメージのやり方を教えてやる」
「イメージですか?」
「ああ、少し手を触るぞ」
俺はそう言うと、クレハの手を優しく握る。
「わ、わわ! 急になんですか?」
顔を赤くするクレハを見て、俺は少しドキッとする。
いかんいかん、今はイメージをさせないと。
俺は心を落ち着かせて、クレハに微量の魔力を流す。
「どうだ? 少し感覚が掴めたか?」
「は、はい」
俺は少し力を入れて魔力を流しながら、感覚を掴ませていく。
するとクレハは少し魔力を動かす感覚を理解したようで、指に少しだが魔力を込めるようになってきた。
イメージはできたな。
後はこの感覚を物にすれば、完璧だ。
俺はそっと手を離そうとすると、クレハの手に少し力が入る。
俺は少し驚きながら、クレハの顔を見る。
するとそこには、顔を赤くしながら俺の目を見て離さないクレハの姿があった。
「あ、あの、まだ感覚が掴めてません。抱き着いても良いですか……?」
「え」
潤んだ目でそんな事を言われ、俺はまたもやドキッとしてしまう。
「駄目でしょうか?」
「お、俺は構わないけど、抱き着かれたらあんまり魔力が流せないぞ?」
「大丈夫です」
俺がそう言うと、クレハはゆっくりと近づいてきて俺に抱き着いてくる。
(何だこの状況は……)
そういえばクレハは寂しがり屋なキャラクターだった気がする。
だからこんな風に抱き着いているんだろう。
俺はドキドキしながら、伯爵領に着くまでクレハに抱きしめ続けられたのであった。
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