【書籍化決定】悪役貴族に転生した僕、家族を救うために水魔法を極めて破滅回避する!

空月そらら

文字の大きさ
5 / 151
序章

第5話 家族皆でピクニック!

しおりを挟む
翌日。

 今度は家族全員でピクニックへ行くことが決まった。

 父・グストが「たまには外の空気を思いきり吸いたいな。リウスもお前も、いい気晴らしになるだろう」と提案して、母・クラリスが「あら、いいわね。ではお弁当を用意しましょう」と笑顔を見せた。

 エレノアはもちろん「わ、私がリウスを連れていくから任せて!」と張り切る。
 
 そんなわけで、僕はまだ赤ちゃんだし何もわからないけれど、実は内心めちゃくちゃ楽しみだ。

 現世を思い出しても、ピクニックとか遠足とか、そういうイベントにはワクワクする性分だった。

 大学のレポートに追われていて、あまり外に出る機会も減っていたし、嬉しい。
 
 そして、数日後――天気が良く、風も穏やかな早朝。
 
 僕はメイドのリリアにベビードレスのような服を着せてもらい、エレノアの部屋に連れられていく。

 そこではエレノアが「ドレスにしようかしら? それとももう少し動きやすい服の方がいい?」なんて鏡を見ながら悩んでいた。

「お嬢様、ピクニックですし、あまり格式ばったドレスよりも軽やかなワンピースがよろしいかと……」
 
「そうね……私だって動きやすい方がリウスの世話をしやすいもの。リリア、用意してくれる?」

「かしこまりました」とリリアが微笑み、エレノアに服を手渡す。

 そしてエレノアが自分の部屋で着替えを始めると、赤ちゃんの僕はリリアに抱っこされたままおとなしく待つことになる。
 
 前世ならあり得ない光景――着替えを手伝われる姉と、それを当たり前に見守るメイド。

 ここは本当に貴族の世界なんだなと、いまだに妙な感慨を覚える。

「お待たせ。どう? リウス、この服は動きやすそうかしら?」

 エレノアが着替えを終えて振り返ると、そこには淡い紫色のワンピースを身にまとい、長い髪をリボンでまとめた姿があった。

 普段のドレスほど豪華ではないが、清楚で可愛い感じがとても似合っている。
 
 僕は思わず「ばぶー」と小さく声を上げてしまう。

 もちろん言葉は伝わらないけど、エレノアは「ありがとう、リウス。褒めてくれたのね?」とご機嫌に微笑む。

◆◇◆
 
 ピクニック当日、庭先には父・グストが大きなバスケットを抱えて待っていた。

 母・クラリスも薄手のケープを羽織っていて、いつになく軽装だ。

 普段はかなり立派なドレスを着ているイメージだけど、今日は家族でのんびり過ごすつもりらしい。
 
 使用人や護衛騎士らしき人たちが数名ついてくるのは、さすが辺境伯というべきだろう。

 なんにせよ、大人数で行くピクニックになりそうだ。

「よし、エレノアもリウスも準備はいいか? さあ、馬車に乗り込んで出発だ!」

 グストは楽しそうに声を上げる。

 母・クラリスはクスリと笑いながら「まぁまぁ、そんなに慌てなくても大丈夫ですわよ。みんな揃ってますから」と穏やかに返す。
 
 エレノアは「そうね。リウスもちゃんと抱いてあげないと……さあ、行きましょうか」と言って、僕をひょいと抱き上げてくれた。

 昔なら「抱っこ」なんて恥ずかしすぎる行為だが、今は赤ちゃんなので堂々と受け入れられる。

 そして馬車で少し揺られた後、僕たちは敷地外にある自然の多いエリアに着いた。

 広い草原や小川が流れている、ゆったりとした場所。
 
 馬車から降りると、青い空が高く感じられ、そよぐ風が気持ちいい。

 フワリと漂う花の香りも心を軽くしてくれる。

「わあ、なんていいお天気……! ピクニック日和ね!」

 エレノアが伸びをして嬉しそうに声を上げる。

 僕も「ばぶー」と相槌を打ちたいところだけど、上手く声が出ない。

 ただ、その高揚感が伝わってきて、心が弾むのは確かだ。

「よし、この辺りにシートを広げようか。リウスもハイハイで少し動き回れるようにしてあげたいしな」

 グストが指示を出すと、使用人たちが手早く敷物を敷き、バスケットや食器などを並べていく。

 まるで野外パーティーの準備みたいにテキパキしていて、僕としては見ているだけで楽しめる。
 
 母のクラリスは「あら、私は少し木陰がいいかしら」と言って、大きな樹の近くに腰を下ろそうとしている。

 レジャー的な楽しみ方というよりは、優雅にお茶でも飲もうという雰囲気だ。

 そんな様子を見守っていると、いつの間にか白いふさふさが視界の隅に映る。

 そう――フェルだ。

 彼も馬車に同乗していたらしく、今は僕の足元をクンクン嗅いでいる。

「フェル、お前も一緒に遊びたいのか? ほら、あんまりリウスを転ばせないように気をつけるんだぞ?」

 グストは苦笑しながらフェルの背中を軽く叩く。

 フェルは嬉しそうに舌を出して、ふりふりと尻尾を振ってみせる。

 僕は思わずフェルに手を伸ばして、首回りの毛をわしゃわしゃもふもふした。

「ば、ばぶう」

 この気持ち良い毛並みに触れていると、それだけで心が落ち着くというか、むしろテンションが上がるというか。

 前世ではできなかった“もふ活”を存分に味わえることに感謝したい。

 エレノアはそんな僕たちの様子を微笑ましげに見つめて、「ふふ、リウスもフェルが大好きみたいね」と声をかける。

 僕は「ばぶ!」と勢いよく返事するけれど、もちろん言葉にはならない。

 エレノアはそれで十分だと分かっているのか、満足そうに笑っている。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...