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第67話 3人ともパワーアップ!

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 もう既に辺りは暗くなり始めていてこれ以上暗い中で動くのも危険だと思ったからだ。
 
 「アァァァ......」
 
 すると森の奥からなにか唸る声が聞こえてくる。私たちはただ事ではないと思い馬車へ向かおうとしていた足を止め森に一歩足を踏み入れる。足を踏み入れていくと木々の間から得体の知れない生物が現れたのだ。

 体長3メートルを超える大きな漆黒のヤギがいる。頭には大きな太い角、そして鋭い牙に赤い目玉……見るからにただ者ではないという空気が漂っている……。
 
 これはかなりヤバい......。と思っているとリズが私に声を掛ける。
 
 「大丈夫、今の私たちはパワーアップしているからきっと勝てるよ」
 
 リズがそう言うとエリックとレズリタも無言で頷いている。

 いや私はパワーアップしてないんだけどとツッコミたいところだったが口には出せなかった……。そしてヤギンは4人の姿を見るなりこちらにゆっくり近づいてくる。

 私たちは一応戦闘態勢に入るが、いざこうして近くで見てみるととてつもない恐怖心が襲う……。赤い目はこちらを見ており口からはよだれが垂れている……。
 
 そしてヤギンは雄叫びの様な声を出すと4人に飛び掛かり、鋭利な爪で引き裂こうとしてきた。

 すぐにレズリタは魔法を発動、私たちに向かってくる鋭い爪が燃え、ヤギンの左手を焦がす。するとヤギンは即座に私たちから距離を置いた。

 流石に知能があるようで、簡単には接近戦に持ち込めないと判断したのだろう。
 レズリタの魔法に苛立ちを感じているのかヤギンは牙をむき出しにして臨戦態勢に入っている様子。

 するとヤギンが近くの木を引っこ抜き私たちの方へ向けて投げてくる。

 あの巨体で素早く木を投擲してきたことに恐怖を感じたが、すぐにリズとエリックが木を剣で斬り裂き無効化する。

 木が粉砕した煙が立ち込めている中、ヤギンが思いっきり地面を蹴り超スピードでリズとエリックに向けて急接近する。
 
 「俺たちの剣で斬り裂く!」
 
 そう言いリズとエリックは剣をヤギンに向ける。
 
 そして2人は剣で攻撃を行おうとするのだがヤギンはすぐに身体を回転させながら剣撃を避ける。
 
 「速い奴ね!」
 
 リズが攻撃を避けられた事に怒ったのか声を上げている。そんな中ヤギンは足を止めることなく私たちの方に攻撃を仕掛けてくる。

 どうやら魔法使いは最優先に処理するべきだと思っているらしい。
 
 ならばと言うばかりに私はヤギンの方に向かってスキルを発動する。
 
 《ブリザード》
 
 手から放たれた極低温の空気の渦はヤギンと私の間に発生、瞬間的に景色を白くし大きな音をたてる。私も魔法に驚いたのかヤギンは少し下がってしまう……。

 するとその雪雲の中からリズ達が物凄い勢いで飛び出してきたのだ。まるで瞬間移動をしているような速さで。そのまま2人はスキルを発動する。
 
 「ブレイクッッッ!」
 
 「サンダークラッシュッッッ!」
 
 2人の攻撃はヤギンの体に深々と突き刺さる。レズリタはこの機会を見逃すことなく魔法を発動する
 
 《煌めく雷(ブライトボルト)》 
 
 2人の剣で動きを封じられていたヤギンに向かって放たれた雷はヤギンの体を撃ち抜き大きくのけ反らせる。そしてエリックとリズはもう一撃お見舞いしてやろうとするがその攻撃を読んでいたようにヤギンは大きく横に飛んだ。

 やはり3人ともパワーアップしているようだ。新しい技を習得しており動きがとんでもないことになっている……。
 
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