上 下
54 / 93

第54話 花が好きなの?

しおりを挟む
 私はそう言い切り笑顔を見せる。
 
 するとリスタは安堵して笑みを浮かべながら頷く。
 
 そんな会話をしていると料理がテーブルに配膳されいよいよ食事の時が来たのだと心を躍らせた。

 和食で食べる煮魚など全てが輝いており口内に溢れ出すよだれを必死に飲みこむようにして味わうことができた。

 完璧である。

 これほどクオリティの高いものをリーズナブルなお値段で食べられるとは至高すぎる店だ……!

 リズ達も連れてきてやりたいくらいだ。
 
 「気に入ってくれたようだね。顔に出ているよ」
 
 私の顔がお花畑状態だったことに気付く。

 だがそれだけ料理は美味だったという事の証明でもあるから感謝しきれない。

 私はスプーンを止めず次から次へと口に運んだ。

 そしてあっという間に完食する。
 
 「ここの料理めっちゃおいしい!」
 
 「僕も気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」
 
 やっぱり美味しい料理を食べると幸せな気持ちになる。
 
 リスタには感謝しなければ。こんなに美味しい和食店を教えてくれるなんてな……。
 
 それからお腹も満たされたのでしばらく雑談することにした。
 
 「リスタはどうして騎士になったの?」
 
 騎士になるのは国を守る職業として重要なものだ。

 誰にでもなれる職業では無い。
 
 「僕は英雄に憧れていたんだ。ずっと昔からね。色んな人を救ったり守ったりするのが僕の夢だったんだ」
 
 この言葉を聞き私は納得した。

 英雄と呼ばれる存在に憧れる気持ちに私も心当たりがあったからだ。
 
 だからこそ共感を持てた、この人が騎士団団長を務められていることがただ騎士としての実力があるだけでなく人格者でもあるということも示している。
 
 「この後行きたい所があるんだが、付き合って貰えないか?」
 
 「もちろんいいよ」
 
 その後私達は会計を済まし店を出る。

 次に向かう場所があるようなのでそこへ向かうことにした。
 
 「どこに行くんですか?」
 
 「ここは人が多すぎるからね、綺麗な自然ある場所にでも行かないかい?」
 
 どうやら私が周りの目を気にしていることを察してくれたらしい。

 確かにリスタといる限り視線を集めてしまうだろうからな……これ以上目立たなくなるのならそれでいいやと思ったので肯定し私達は静かな場所へ向かうことにしたのだった。
 
 「失礼」
 
 「え?」
 
 すると突然リスタが私を俵担ぎしジャンプをする。

 物凄い速さで屋根を飛び駆けていき次々と景色が流れるように過ぎ去っていく。

 先程は視線がどうのと気にしていたがそんなこと考える間もなくなった。
 
 ふと横を見ると木や家々が通りすぎていきその速さを物語っていた。

 そしてそのまま屋根から屋根へ飛び移る。

 速すぎるためか王都の人達は私たちに気付かず買い物をしていたる遊んでいた。

 それから数分経ったころだろうか。
 
 先ほどの光景とは全く別のところに私達は来ていた。
 
 そこは美しい平原で奥の方には森林が広がっている。

 風によって揺れる草木の音と鳥のさえずりが聞こえてくる。

 こんな場所があっただなんて……想像すらしていなかった場所だ。
 
 「......そろそろ降ろしてください」
 
 ハッとリスタは我に返り私を地面に降ろす。

 そしてゆっくりと足を着地させ体勢を立て直すとリスタに振り向き質問をする。
 
 「ここは?」
 
 「僕がいつもリラックスしている場所だ。ここには自然以外何も無く何も考えることなくて気楽に休める」
 
 私もさらに周りを見渡すと柔らかそうな草や湖が広がっており空気も澄んでいた。

 ここでリスタはいつも休んでいるのだろうか。
 
 「さらに奥に進むと良いものが見れるよ」
 
 リスタが笑顔で言うので私も思わず興味が沸く。

 そして歩くこと数分、たしかに私は目を丸くし見るもの全てが美しく感嘆の声を上げてしまうほど素晴らしいものが目に映った。
 
 どこまでも続く花の景色だ。

 私が見た中でこんなに広い花畑を見たことがなかった。
 
 いろいろな色の花が私達を囲むように生えておりそのどれもが見事な品種なのがよく分かる。これが王国の象徴とされていて納得できるほど美しかったのだ。

 私が景色を眺めているとリスタが言う。
 
 「僕はこの花を見るたびに癒やされていてね、疲れた日や苦しい時にいつもこの場所に来ていたんだ」
 
 リスタの顔も穏やかな笑顔を浮かべており景色を楽しんでいることが分かる。

 なんだか私も似たような感じなので思わず嬉しくなる。
 
 「花が好きなんですか?」
 
 そう聞くとリスタは微笑みながら口を開く。
 
 「ああ、大好きだ」
 
 その顔に思わず見惚れてしまう。

 それからもリスタとの会話は続き、いつしか私も気軽に話せるようになっていた。
 
 王国最強の騎士なんて呼ばれる人が、ただ花が好きな好青年なのだと思うと微笑ましくなるな。
 
 それから私たちは散歩をしながら談笑をしていく。

 リスタと話すのはとても楽しくつい笑顔が漏れてしまうのだった。
 
 会話をしているとあっという間に時間が過ぎ、そろそろ帰ることになった。
 
 「そういえば私、店でお菓子とか買いたいんだけど。リズ達にあげたくて」
 
 「それならうってつけの場所があるよ」
 
 本当にリスタはなんでも知っているんだな。

 また機会があったらおすすめのご飯屋さんを聞こう。
 
 「ちなみにここから町までどれくらい時間が掛かるんですか?」
 
 「普通だと徒歩で数時間は掛かるね」
 
 まじか……。そんなところまで一瞬で来ることができたというわけか。
 
 ん?てことは私またあの俵担ぎをされるのか……?

 それは嫌というか恥ずかしいというか......。
 
 「また俵担ぎをして町に戻ろうか」
 
 「嫌です!」
 
 そう言って私とリスタは徒歩で王都へと向かうことにしたのだった。

 町へ戻る頃には丁度お昼の時間だったのでまたご飯を食べることにし、食べ終わった後、お菓子の店まで連れて行って貰った。

 それから3人が喜びそうなお菓子を一通り選んだ後、買ったお菓子をアイテム袋の中に入れ店から出る。

 そしてリスタとはそこで解散をし、馬車で温泉宿に戻るのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...