上 下
48 / 69
出生の土地

天空の街

しおりを挟む
オールの笑みを見て少しリオルが視線をそらしたように見えるが、ラクシス以外は誰も気づくことはなかった

「そこにいらっしゃる獣人族の出生について気にはなるのも事実ですが、私たちはまだラクシス様の事で理解が追い付いていないので本日は一度、街に降りて観光でもしていらっしゃっては?」

側近、オウミが獣人族のエメレッタに気を遣いラクシスに提案し

王2人はこの国の創造主をそのままにしていいのか?とも考慮したが、エメレッタの事もあり何かしらアクションをするのではなく、客人として招く方が良いと判断をした

「うん。わかった」

「そうですね。日を改めてお願いします。」

ラクシスとエメレッタが返答し、一礼した後、衛兵2人と一緒に塔の外へと降りていく

塔からテレポートをし下に着いた後、護衛と別れ街を観光することになったラクシスたち

改めて天空の国を見渡すと分かることが多く

澄み切った空気に見知らぬガラス細工のような鳥があちこち飛び回っていたり、活気あふれる街中で竜人族の視線が気になるものの中央通りを境にシンメトリーに建てられた景観は鏡の世界に迷い込んだような美しさだ

「そういえば、街の人は共通語が苦手だったね」

ラクシスはエメレッタに尋ねる

「え?あっはい、そうですね。私も竜人族の言葉は分かりません」と答えるエメレッタ

「それなら」とラクシスは何やらブツブツと独り言を話し始めるとエメレッタの周囲に小さく光何かが現れスゥーッと消えたかと思えば、周囲で話していた竜人族の言葉がすんなり聞こえはじめた

「????」

突然の出来事に戸惑うエメレッタにラクシスが問う

「どう?聞こえる?」

「え?不思議と聞こえます」

エメレッタは不思議に思いつつ応える

「うん。それならよかった。ちょっと不便そうだったから微精霊にお願いして翻訳してもらうことにしたんだ」と微笑むラクシス

「えっ!!それは凄いですね!」

エメレッタに衝撃が走る

「だから、エメレッタが話している言葉も全部、竜人族の言葉で聞こえてるよ」

「なっ!?す、すごい・・・さすがです」

エメレッタはラクシスの規格外な力に驚きっぱなしで収集が付かない

「これで気にせず観光ができるね」

ラクシスは微笑みかける

「あっはい、ありがとうございます。」

エメレッタはラクシスにお礼を言い2人は街の散策をすることにした

周囲からの視線も気にすることなく歩む2人はまず宿泊先を探すことにする

石畳の上を歩み周囲をキョロキョロと見渡すエメレッタは好奇心旺盛で少し目を離すと何処か言ってしまいそうな程、観光気分で楽しんでいるようだ

「ラクシスさんあれは何でしょう!」

エメレッタが気になり目を輝かせて向かった先は青白い壁の建物で周囲と比べ違う雰囲気を放っている

ラクシスは興味津々に建物へ向かうエメレッタの後を追う

「あれ?ラクシスさんどうやらここは装飾屋みたいですよ!入りましょう!」

エメレッタはガチャッギィとドアを開け中に入っていく

建物の中は何かの骨で出来た装飾がメインに置かれていて独特な雰囲気を放つ

薄暗いカウンターの奥から「いらっしゃい」と声がし、ゆったりと店主が現れ

「おやっ?こりゃ珍しい獣人族ではないか!よくここまで来れたな!・・・まぁお客さんに代わりないから自由に見ていきな」と店主がエメレッタに話す

「ありがとうです。」

「おやっ?人族も居たのか、珍客の連れかい?」

店主の質問に答えるエメレッタ

「はい、そうです。私が彼の付き添いです。」

「ほぉ・・・そうか、まぁ良い好きに見ていけば良いよ」

店主はそう言い放つとまた奥へ入っていった

エメレッタは目を輝かせ至る所に飾ってある骨で出来た装飾に魅入ったり、テーブルに置かれた装飾品を手に取ったり眺めたりと楽しむ

しばらく、楽しんだエメレッタは小さな首飾りを気に入り、店主を呼んで購入することにした

「毎度!」

「ところで、店主さんちょっと聞きたいんですけど・・・この辺で宿はありますか?」

「ん?宿か?実はうちは裏で宿もやってんだ。泊ってくかい?」

「えっ!?」

エメレッタは驚きつつも聞いてみるものですね・・・と思い「では1泊お願いします」と宿泊することにする

ラクシスとエメレッタの2人は店主に案内され店内の中を通り裏側に向かっていく

ガチャッ

途中、扉を開けると表の装飾店と違う雰囲気の部屋になっており酒場も兼ねているようだ

2人をさほど気にすることなく店主はラクシスに鍵を渡して2階の奥が宿泊部屋だと指さす

2人は指さされた場所へ進んでいき2階へ上がったラクシスは鍵で部屋を開けると開放的な室内になっていた

奥にある壁が一面、窓になっていて天空の国を一望できるようになっている

「おぉ・・・!凄い絶景ですね!」

口と目を見開き感動するエメレッタ

部屋には簡易的なベッドが2つ置かれた程度で店主に聞いたところ酒場で酔いつぶれた客がそのまま利用するために始めたらしいので、殺風景で最低限しか置かれていなかった

それでもエメレッタは部屋を気に入ったようでこのまま2人は泊まることにした







しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

傭兵アルバの放浪記

有馬円
ファンタジー
変わり者の傭兵アルバ、誰も詳しくはこの人間のことを知りません。 アルバはずーっと傭兵で生きてきました。 あんまり考えたこともありません。 でも何をしても何をされても生き残ることが人生の目標です。 ただそれだけですがアルバはそれなりに必死に生きています。 そんな人生の一幕

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

処理中です...