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集落

道中

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「にゃ!みんなも笑ってにゃいで助けるにゃっ!」

助けを求めるぎんたを優しく見守るラクシス

ホーススケルトンからぎんたをひっぺがそうと立ち上がろうとする獣人だったが、別に遊んでいただけなのでホーススケルトンはあっさりと甘噛みを止めて離す

無事、甘噛み地獄から解放されたぎんたはホーススケルトンに言葉を吐き捨てる

「こ、今回はこの辺にしといてやるにゃ!」

何がこの辺にしとくか不明だが、両手を組んで偉そうに啖呵を切るぎんたはどこか誇らしげだった

「じゃ・・・みんな荷物を場所に運んでね」

何もなかったかのようにラクシスは次の事を進め、ぎんたの対応を理解したロウフも次々と荷台に運んでいく

ホーススケルトンの馬車は頑丈で広く安心して乗車できそうで次々と行動していく

「にゃっ!ぎんたの扱いにみんな順応しすぎにゃぁ!」

ぎんたの小さな叫びが帝国跡地にこだましていく・・・




なんだかんだ言って次の目的への準備も整ったので、移動する前に獣人・亜人たちはハルクイムさんに挨拶へと行った

その間、ラクシスは馬車に乗り込みゆっくりしていると突如誰かに声をかけられる

「お兄ちゃん!本当にありがとう!」

声をかけられた方を見るとそこには1人の幼い身体中傷だらけでボロボロの服を着た4つの多眼持ちの亜人少女が小さな花を手に立っていた


「ん?いいえ。気にしなくてもいいよ」

「私聞いたの!ロウフお爺さんがさっきお兄ちゃんのおかげでお爺さんたちが帰れるって!だからね・・・これ!」

手に持った小さな花をラクシスに手渡す

「そうか。それなら受け取らないとね。ありがとう。」

ラクシスは少女に深く頭を下げる

「こ、こちらこそだよ!」

少女は慌てて照れて、ラクシスは微笑む

「私はママが残るから帰れないけど、本当にありがとうね!」

タタタタッ

少女はそう言い残し照れ臭そうにこの場を去っていった


それを近くで見ていたぎんたはラクシスに生暖かい視線を送り「ふ~ん?」とニヤリとする

それを見たラクシスは何も分かっていないようで、さらに調子に乗るぎんたは「いいにゃね~?羨ましいにゃねぇ~」と話す

「ん?あぁ、欲しい?」

手に持つ小さな花をぎんたに渡そうとするラクシス

「違うにゃ!欲しいけど、何か違うにゃ!」

不思議そうにぎんたを見つめて答える

「・・・違うの?うーん。ぎんたは相変わらずだね。」

「ぎんたからすれば、ラクシスの方が相変わらずだにゃ!」

獣人達が挨拶に行っている少しの間、馬車の中で兄弟みたいなふたりの姿がそこにあった

話は挨拶が終わるまで続いた





しばらく経って帰郷する者たちが乗車するのを確認したラクシスは周囲に向かって声を掛ける

「さて、みんな行こうか?」

「しゅっぱつにゃ~!」

パカラパカラと獣人族と亜人族を乗せたホーススケルトンが引く馬車が故郷に向かって走り出した



「さて、ラクシス様、道中時間も有りましょう!その間に帝国でのわしらの立場と言いますか、この世界での扱いについて伝えておきたいのじゃが・・・」

ラクシスは静かに頷きそれを確認したロウフは静かに語り始めた

「ご存知の通りこの世界では獣人族が多く存在し、その一部に亜人族が混ざっております。それが普通のことでしたが、フリード帝国は違った。
人族より優れた能力を持つわしらを嫌悪し、道具として扱ったあげく捨てていった・・・これは忌々しい歴史です。なぜ?フリード帝国だけ?と思う者もいましたが、それは違います。大なり小なり平等を謳っている国も一部では小規模ですが、確実に奴隷は存在しています。」

ロウフが悲しそうに語る様子を優しく頷きながらラクシスは聴き入る

「もちろん、全てが悪いわけじゃないとわしは思うのじゃ!自ら奴隷に落ちた者もいると聞きます。ただ、事実として発端がフリード帝国だと知ってもらいたかったのじゃ・・・別にわしらだけじゃない奴隷も居るとも聞きますし、難しいものじゃのぉ」

複雑な表情をするロウフに優しく「そうか」と答えるラクシス

ザザッ

さほど整備されていない道を進んでいると草むらから物音がする

「きゃっふぅ~!」「そこの馬車!止まりやがっ・・・!?」

草むらから勢いよく小汚い恰好をした上半身裸で獣の腰巻を付けた大男が2人現れたが、ホーススケルトンを見て驚くが「なんだ・・・ありゃ!?まぁいい!中の奴!金目の物を全部だせ!」と気にしないらしく馬車を襲おうと配置に付く野党

「変な馬が居ても気にしないぜ!金さえあればいいんだぜ!」きゃっふぅい

ボロボロの剣を振り上げ襲おうとする野党やまともに射ぬことが出来なさそうな弓で狙う野党も居る

「お頭!中に獣人族も居やすぜ!?」

スキンヘッドの大男がお頭らしく襲うように部下へ指示を出すがバチンッ何かに弾かれる

もちろんラクシスの結界が常に張り巡らされているので、攻撃なんて通るはずもない

「なっ!?なんでぇこりゃ!?」

野党にとってはすべての襲撃を防がれ衝撃に陥る

「おじさん、襲ってこなかったら助かってたのに残念だにゃ~」

ぎんたは野党を迎え撃とうと馬車から降りようとする

「ちょっとまってぎんた」

それを抑止しラクシスはホーススケルトンのお尻をポンポンと軽く叩く


するとすべてホーススケルトンの口が開き目が赤く光った・・・

ガタッ
 ドサッ・・・

野党たちは次々と倒れはじめ口から白い火の玉のような物体が次々とホーススケルトンの口に向かっていく

「にゃ!?」

それを見たぎんたは驚き体毛が逆立つ

「便利でしょ?」

ラクシスは軽々しく便利グッズのように説明をぎんたにしはじめた

「にゃっ!ラクシスさすがに怖いにゃ!任意の魂を抜け取りホーススケルトンのご飯にするにゃんて!」

嫌な予感がしたのか獣人と亜人たちは身を潜め見なかったことにしている

「ちょっとチビッたかもにゃ・・・」



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感想 3

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