ひとりの少年と精霊ののんびりライフ

わんコロ餅

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フリード帝国

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ーーー中央街セントラルにある豪邸のひとつ、アイザック邸自室


「よし、やったぞ末子であろうと皇帝様はきちんと私を見てくださっていたのだ。」

「さようでございます。ハルクイム様のお言葉が皇帝様に届いたのでございます。爺は心よりお慶び申し上げます。」

アイザック家に使える執事アルフォースは家督の代わりに父から譲り受けた使用人である

眼を輝かせアルフォースに語るハルクイム

「そうさ!フリード帝国では非常識だ!などと言われたが、このハルクイム、獣人であろうと亜人であっても皆平等と考える!」

ハンカチを目元にあて涙を抑えるアルフォース

「大貴族として民に奴隷に職を与え食い扶持を授けるのは至極当然の事!まして身を粉にして従事しようとする奴隷たちを私は見逃せない!いや、見逃すことがあってはならないのだ!」

「えぇそうですとも!ハルクイム様!」

「そうだろう?アルフォースよ!私の言葉を毎度聞いてくれてありがとう!」

唇を震わせ目を潤ませさらに熱く語るハルクイム

「・・・ようやく、この想いを皇帝様が聞き入れて頂けたのだ!」

「えぇ・・・爺は爺は存仕上げております!誠・・・長かったですな・・・今思い出しても爺は胸がはちきれそうでございます!」

「あぁ!これもアルフォース!君のおかげだ!!」

執事アルフォースは耳の垂れた茶色い犬の獣人で稀に見る大貴族の従者、幼少期よりハルクイムの面倒を見ていたが、世間はそれに対して面白く思わない者が多かったという

それに疑問を感じ今まで真向に立ち向かい疑問を払拭してきたハルクイム

奴隷制度があるのはなぜ?それを撤廃できないのはなぜ?帝国が許さないのはなぜ?と戦ってきた男ハルクイムの全身は傷だらけ、彼の人生は奴隷を護るために歩んできたといっても過言ではない

「滅相もございません。すべては貴方様・・・ハルクイム様がいらっしゃったからでございます。」

ハルクイムにお辞儀しボロボロと涙を零し感謝するアルフォース

「きっともうすぐ、あの石の被害もなくなり・・・私の行動次第では奴隷制度の撤廃もできるかもしれぬ!」

「えぇ、えぇ爺は信じておりますぞ!」

「あぁ・・・任せてくれ!私はこの家に貢献できない代わりに自身の為・・・いや、すべての他種族の為、尽くそうと思う!」

拳を握り決意を表す

「早速、行動に移そうではないか!こうしている間にも奴隷たちは辛い思いをどこかでしている!もちろんすべてではないが、この手の届く範囲で零れぬよう差し伸べようではないか!」

「えぇそうでございますね。ハルクイム様」

熱く語るハルクイムにうんうんと頷くアルフォースはさっそく支度をし中央街セントラルと下町との間にある奴隷商へと続く路地に向かう

ガチャバタンッ


ーーーー帝国城内

シャドウキャットの力によりラクシスは影の内部を移動し研究室での出来事や皇帝の悪巧みをすべて聞き入れていた

そして、フリード帝国は本当に存続に値するのか?どうかを影の中でラクシスは判断する


例え滅ぼしたとしても残った者をどうすべきなのか?ただ、単純に魔導石の研究を壊せば・・・まだ救いがあるのではないのか?

もしくは人族をこのまま放置したとしてフリード帝国の二の舞いになるのではないのか?など様々な熟考をした


結果、ラクシスは一つの答えを導いた


一部の純粋な行動と想いを汲み取り・・・裁決をすることに









ーーー

シュッ

「!・・・ふむ、して貴様は何者だ・・・?なぜ余の前に居る?」

突如、皇帝の前に現れるラクシス

ガシャッ

「き、貴様!何者だ!!ど、どこから現れやがった!?」

震えながら剣をラクシスに向ける帝国兵

「大丈夫?そんなに震えてたら何もできないよ?」

皇帝は左手を上げ帝国兵の剣を下げさせる

「ふぅ・・・」

何もしようとしないラクシスにどこか安堵する皇帝

「敵意がないように思えるが、貴様ほどの強者が余に何しにどうやって来た?」

眉間に皺を作りラクシスに問いかける皇帝

「・・・少しね、このフリード帝国の事を見て来たんだ。」

疑問に持ちつつ警戒を強める皇帝

「人族が越えてはいけない一線は越えてるし、エルフ族に手を出す将軍も居たし・・・さすがにだめかなって」

方眉を上げ疑問をぶつける

「ほぉ・・・それで?貴様は長き歴史を持つ余のフリード帝国をどうする・・・と?」

「う~ん。滅んでもらってもいいかな?」

「ぶっ、フハハハハハハッ」

予想外な回答に思わず吹き出す皇帝

「何を言っている?貴様程度の奴がどうやって来たかもしれんが、この帝国を滅ぼすとな!?クククッ面白い!どうやって?」

ラクシスを馬鹿にする皇帝

それもそうだ、こんなバカげた話、誰が信じ誰がどう真に受ける?

「ちょっとまってね?」

ガクガクブルブルと震えながらも威嚇する帝国兵

「ま、まて!不審な事をするな!」

「クククッまぁよい!この帝国を滅ぼすと粋がるのだ!好きにさせておけ!」

笑いを堪えつつ手を上げ帝国兵を引き下げる

「じゃいくね?闇より深き暗闇よりも鮮やかで・・・憎悪よりも濃い想いよ・・・ラクシス=オリジンの名の下、集え!闇御津羽神クラミツハ!」

手を地面に翳し詠唱したラクシスは闇御津羽神クラミツハを目の前に呼ぶ

「なっ!?」ガタッ

闇御津羽神クラミツハの姿をみた皇帝と部下たちは眼を見開き驚愕しその美しさに目が奪われる


「な・・・んと美しい・・・」

「たわけっ!低俗が我を見るではない!」

キッと闇御津羽神クラミツハが睨みつけると帝国兵の全身が黒いもやと共に消えた


消えたという表現以外何もでもない・・・先ほどまで居た人が一瞬にして存在しなくなったのだ

「・・・」

皇帝たちは目の前に起きた事に脳内が付いていけずに固まる

「で?ラクシス様・・・どうしたい?」

闇御津羽神クラミツハのぷっくりと膨らんだ唇が妖艶にささやきかける

「・・・分かってると思うからお願い」

「んもぉ!いけずじゃのぉ・・・少ししか一緒に居れぬ故、我は愛おしく、そして大事にしたいのじゃ♥」

「そうだね。ごめんね?」

「ずるいのじゃ・・・!さっさと面倒は終わらせてやる!」

ラクシスの首に両腕で抱き着きながら指でパチンッと鳴らすとフリード帝国すべてが突如巨大な闇が覆い隠し

次の瞬間、建物とそこにあったすべてが闇に沈み人族は文字通り飲まれ消えた




人族以外の種族と一部を除いて


「あぁ・・・たわい無い。詰まらんかったのぉ」

闇御津羽神クラミツハはラクシスに頬を寄せしがみ付いた魅惑の身体は離れようとしない
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