ひとりの獣人と精霊

わんコロ餅

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生命との狭間

金髪の少女

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シスターセイラに言われた通り、修道院兼孤児院へと3人は中へ入る

「おや?誰かと思ったらポセイラスじゃないか。」

年季の入った薄い青の修道服スカプラリオを着た老人が木製の椅子に座って子どもの世話をしていた

「やぁオババ様、ご無沙汰しております。」

頭を下げ挨拶をする

「やだねぇ。こんな老人に頭を下げるんじゃないよ。おやぁ?そっちの奥にいるのは・・・こりゃ珍しいお客さんだねぇ」

ポセイラスの後ろに居た2人に気づき声を掛ける

「にゃ?そんにゃに珍しいかにゃ?」

「初めまして。クロミさんがこちらでお世話になってると聞いて」

少し遠慮気味にポセイラスの後ろから顔を出して返答する2人

「フォフォフォフォッそうかいそうかい。あの最近入ったクロミちゃんの知り合いかい。こりゃ嬉しいねぇ」

ウンウンと何度も頷くオババ様

「それで・・・その本人は?」

「おやっあらやだねぇ。歳を取ると鈍くなってしまうねぇ。ちょっと待ってておくれ。今呼んでくるよ。・・・よこらっせ」

エメレッタの言葉に気づき、椅子から重たい腰を上げようとする

「オババ様、私が行ってこようか?」「いや、僕が!」

近くにいた子供達が、楽しそうに名乗りあげる

「おやおや、それは助かるねぇ。ありがとう。・・・それじゃ、頼むよ。」

オババ様は最初に名乗りを上げた10歳くらいの少女に頼む

「わーい。行ってくるね?」と嬉しそうに奥の部屋へバタバタと駆けていく

「もぉ、僕が行きたかったのにぃ」

「ははははっそれじゃ客人たちにお茶を用意してくれるかい?」

名乗りを上げていた少女と同じくらいの少年に頼む

「そんな気を遣わなくても・・・」

「ふふふ、いいんだよぉ。あの子たちがやらせたいようにさせてあげて。さぁさぁ、ポセイラスが連れてきた客人は家族みたいなものさ。遠慮せず、そっちに座りな。」

エメレッタの遠慮を気にせずにもてなす

「分かったにゃ。」

「ははっオババ様には敵わないなぁ。」

ぎんたとポセイラスは言われるがまま席に座る

それを見たエメレッタも遠慮しつつ、着座する

「ふふふ、何いってんだい。ポセイラスが居なきゃとっくに孤児院ここは潰れてるんだ。遊びにきた時くらい、遠慮しなさんな。」

ガチャッ

「あら、オババ様とお会い出来たのですね。それは良かったです。」

「あ、あぁおかげさまで。この通り、歓迎してもらってる」

振り返り洗濯から戻ったシスターセイラに答えるポセイラス

「会えたにゃ。」

「先程はありがとうございました。」

片手を挙げて答えるぎんたに対し、席から立ち上がりお礼をいうエメレッタ

「ふふふ、そんな気になさらず。」

右手を口元にして微笑む

「あっそうでした。オババ様、私はこのまま子供達を連れていつもの買出しに行ってまいります。」

思い出したシスターは14歳前後の子どもを何人か荷物持ちとして手招きし準備をする

「「はーい。」」と元気な返事と共に呼ばれていた子供達はシスターセイラの手を引っ張り外へと出て行った

「は、はい、お待たせした。」

少年は少し手を揺らすながらもどうにかお茶を運んで置いていく

「あ、あぁすまないね。」

「ありがとうにゃ。」

「ありがとうございます。」

3人はそれぞれコップに手をやり口に持っていく

「ふふふ、ここで採れた物から作った飲み物だよ。召し上がれ。」

「「「美味しい」にゃ。」です。」

オババ様の言葉にそれぞれ賞味して答える

「それは良かった。」

バタバタ・・・

「オババ様。お待たせ。」

「ポセイラスさんお待たせしまし・・・!?ぎんたさん、エメレッタさん!?」

部屋の奥から現れた金髪の少女クロミは少女から2人のことを聞かされておらず、驚く

「わぁ、クロミさん綺麗になりましたね!」

「え?そ、そうですか?」

エメレッタの賛辞に照れくさそうにする

「にゃ、久しぶりだにゃ。」

「フフッ、ぎんたさんは相変わらずですね。」

ぎんたの対応に平常心を戻すクロミ

「それで、この子クロミに用事があったんじゃないのかね?」

和むクロミとエメレッタを横目にポセイラスへ尋ねるオババ様

「おっとそうだ、そうだ。実はオババ様にも一応、聞いて欲しくて来たんだ。」

「そうかい。そうかい。・・・それじゃ。あんた達、奥の部屋に行っておいで」

「「はぁい!」」

ポセイラスの反応を察したオババ様は近くにいた少年と少女に指示をして「ふふふ、いい子だねぇ。」と微笑みかける

「それじゃ、今回の要件を話すにゃ。」

クロミを含めて5人になった事を確認したぎんたから口が開かれる

その言葉に空いていた椅子へギィッと引きながらちょこんと座り、話を聞く体制をとるクロミ

・・・ぎんたはこれまでクロミと別れてから何が起こって何があったのかを改めて話した

何故、この場所に来たのか

「・・・なるほど。それで、この場所へと示されたんですか。」

「ほぉ、それは驚いたね。エメレッタちゃんが、精霊様だったなんてねぇ。それにぎんたちゃんもだったなんて・・・このオババも長年生きているが、驚いたよ。」

目を丸くし、驚きを隠せない2人

「それで来たのはいいが・・・原因の黒い塊は??」

ポセイラスが尋ねる


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