ひとりの獣人と精霊

わんコロ餅

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生命との狭間

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「目が覚めたかな。」「目が覚めたんだな。」

ヨキとニキが話しかける

「・・・え?」

起き上がり周囲を見渡し混濁するエメレッタ

「ここは・・・?あれ?ラクシスさん?」

「何言ってるにゃ?」

困惑するエメレッタにぎんたは心配する

「・・・ううん。大丈夫です。ふふふ、何もないです。」

スッキリした表情で満足そうに答える

「何か掴めたかな。」

「そんな感じだな。」

ニキとヨキがお互いを見て納得する

「さて、エレメッタの意識がない間にひと通り聞いたんだな。」

「不死鳥様から事もエルフの守り神の事も知ってるのかな。」

「「だから、ここの水が欲しいのも知っているのかな。」だな。」

2人声が重なる

世界を繋ぐ樹ユグドラシルは全ての魂が集まった残滓を元に成長続けている。その過程で湧き出た水はありとあらゆる全ての症状を治癒できると言われている特別な水なんだな。」

「だけど、その水を現世に持ち帰れる者はいないのかな。」

ヨキとニキが交互にエレメッタに話し続ける

「なぜならここに来る過程で皆、行き先は我々に審議され通常は現世に戻ることはないんだな。」

「・・・なるほど」

ウンウンと頷くエレメッタ

「そして、人間である以上・・・残念ながら帰る肉体がないから戻れないのかな。」

「えぇ!?」「にゃ!?」

エレメッタとぎんたは驚いた

2人は何かしらの手掛かりをニキとヨキの審議官なら掴めると思っていたのだから

「まぁ、まだ慌てることないのだな。方法はなくもないんだな。」

ニキの言葉が2人を落ち着かせる

「え!?あるんですか??」

「にゃ!?」

期待する2人

「落ち着くのかな。」

抑止するヨキ

「そうだな。まずは世界を繋ぐ樹ユグドラシルふもとまで案内するのだな。」と2人を先導するニキ

「え?あっはい。」「分かったにゃ。」

言われるがまま後をついていくエレメッタとぎんた

いつの間にか終着の門もなくニキの歩く先には世界を繋ぐ樹ユグドラシルが存在していた

「「!?」」

エレメッタは狐に摘まれたような感覚に陥る

「ふふふ、困惑するのも無理がないのかな。この世界は錯覚するようになっているのかな。」

ニキがエメレッタに話しかける

「え?で、でもさっきまで目の前に何もなかったはずです。」

頭の中がごちゃごちゃになるエメレッタ

「エメレッタは何を言ってるにゃ?」

エメレッタの行動を理解できないぎんた

「ふふふ、それもそのはず、この世界では精霊であるぎんた様とは見えている景色は違うはずなんだな。」

「えぇ!?」「ど、どういうことだにゃ!?」

ヨキの言葉に驚く2人

「人間である者と精霊である者と見え方も変わるのがこの世界なのかな。」

ニキがヨキの代わりに答える

「そうなんですか!?いや、それにしても、うわぁ・・・凄いですねぇ。先が見えません・・・」

世界を繋ぐ樹ユグドラシルを見上げながら呆気に取られるエメレッタ

「にゃ?エメレッタ上よりこっちにゃ。」

ぎんたの声で上向くエメレッタの視線を下に誘導する

「え?こんなところに水が湧いている・・・」

ぎんたが指差した先には幹から水が溢れ出る小さな池あった

「え?・・・これが水ですか?まるで何もないかのような透明度ですねぇ・・・」

そこに存在しているかも不確かなほどの透明度

光の屈折で出来た輝きと影で確かにそこにあるのは理解できる

「触って見るにゃ」と一言エメレッタに話しかけるぎんた

言われるがまましゃがんで水を手ですく

「感触はありましたが・・・大丈夫ですか?」

透明度が高すぎて戸惑うエメレッタ

「一度、飲んでみればいいにゃ」

「え?い、いいんですか?」

ぎんたの声に戸惑いつつ口にする

ゴクッ

「?」

首を傾げたエメレッタを「どうかしたかにゃ?」と心配するぎんた

「え?いえ・・・味がしないなと」

口に含んで飲み込んだはずなのに味がしない為、困惑する

「ふふふ、それもそのはずなんかな。」

「味がしなくていいんだな。」

ニキとヨキはそれが当然だと互いに頷く

「どういう事ですか???」

2人の反応に疑問をぶつけるエメレッタ

「「時期に分かるかな。」だな。」

ぐらっ

「え?意識が・・・」

バタンッ

「「人の魂のまま、世界を繋ぐ樹ユグドラシルの水を飲めばそうなるのは当たり前なんかな。」だな。」

ニキとヨキが同時に話すが、エメレッタに声は届くことはなかった

「さて、ぎんたも帰るにゃ。」

ニキとヨキに挨拶するぎんた

「「精霊様、良き時間を感謝します。それでは現世におかえり下さい。」」

2人は深々とぎんたに頭を下げ見送る

するとぎんたは消えていった




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