【完結】TAMTAM ~十二使徒連続殺人事件~

かの翔吾

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第九章 マタイ Matthaeus

Ⅳ・9月21日

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 課長からの連絡はなかったが、山﨑からのメールが届いていた。

『もうそろそろ有給休暇なくなりますよ。早く戻って下さい』

 一体どれだけ休んだかは、もう記憶に残せていない。久々に二丁目に飲みに行って。そんな考えも浮かんだが、結局新宿には、足を運ばなかった。コンビニで買い溜めしたビールを、煽っていただけの日々。

 山﨑からのメールに、現実に連れ戻されそうになるが、もうどうだっていい。刑事なんて、もう糞喰くそくらえだ。アルコールに気が大きくなり、スマホを放り投げる。

 ベッドの上に転がったスマホに目をやると、何かの知らせなのか、画面に明かりが点いた。放り投げた事が山﨑に伝わったのか? 一瞬焦りを感じながら手にしたが、メールの知らせは増えていなかった。

 冴えない頭でページを送る。

 知らせが届いていたのはメールではなくアプリだった。二通のメールを受信したアプリの知らせ。

『よかったらこれから会いませんか?』

 メッセージの下には、地図が張り付けられていた。今いる位置情報まで送ってきた相手に、興味を示すより先、疚しい考えが頭を掠める。その疾しさを本能だと、自分に言い聞かせ、相手のトップページへと進む。小さく加工された画像では、はっきりとは分からないが、二十五歳と書かれた年齢に嘘がない事は、何となく想像できた。

『こちらこそよかったら』
『今、君がいる場所へ行けばいいかな?』

『はい、待っています! よろしくお願いします!』

 続けざまに送った二通の返事に、数秒を待って、すぐに返事が届いた。

 いつまでもこんな所で、酒を煽っていても仕方がない。自分に向けた言い訳は、やけにくだらないものだが、そんな言い訳を浮かべながら重い腰を上げる。洗面台の鏡の前に立ち、癖の付いた髪を撫でつける。掌に嫌な油分が移るが、シャワーを浴びている間に相手の気が変わり帰られては困る。

 着替える事もせず、Tシャツにショートパンツのまま、サンダルを引っ掛け、部屋を出る。

 考えなしに飛び出した外の暗さに、夜である事を教えられる。手にしたスマホの時間は、十二時三十五分。

——ちょうどいい時間じゃないか。

『あと十分ちょっとで着くよ』

 タップした位置情報を、地図アプリで開きなおす。塗り分けられた地図の水色に、多摩川を目指す。あと九分。示された経路通りに足を進める。

 どんな相手が待っているかは分からないが、今は誰だって構わない。悶々もんもんとした気持ちを発散させて貰えれば、誰だって構うものか。それよりもこんな姿の自分に、逃げ出しはしないだろうかと、いらぬ不安が持ち上がる。そんな不安に引き返そうかと言う気になった頃、多摩川の堤防が見え始めた。

 夜中とあってか、たまに走り抜ける車のスピードは速く、顔をライトで照らされるが、それは一瞬の事で、すぐに薄闇を連れてくる。そんな事を何回か繰り返しながら、堤防沿いの道を進めていると、送られてきた位置情報に現在地が重なった。

 川崎側には背の高いマンションも見えているが、蒲田側には古い民家しか見えない。まさかこの民家なのか? 薄闇の中、周りを見回してみても人影などなく、歩道に乗り上げ、停車している車もない。

 川の方なのか? もし草むらに潜んでいるなら、探しようもないな。そんな事を考えながら、水辺に向かう階段を下りようとした時、階段の下にしゃがむ人影が目に入った。

「えーっと、アプリの?」

 数段下り、その人影に声を掛ける。人違いと言う事も考えられる。不必要な事を口には出せない。

「あっ、やっぱり晃平さんだ!」

 声に反応した人影が振り返る。

「えっ? 何で祥太がここに?」

 階段にしゃがんでいた人影は、祥太だった。

「何で? って、メッセージ送ったからですよ。ああ、でも晃平さんでよかった。人違いだったらどうしようって、ちょっとドキドキしていたんですよ」

 屈託くったくのないその答えに、体がほぐされていく。

 だがどうしてこんな所で、祥太と会う事になったのだろう? メッセージなんてまどろっこしい事をしなくても、直接、部屋に来ればいいだけだろう。そんな疑問に顔が歪む。

「そんな変な顔しないで下さいよ。アプリで見掛けて、晃平さんかなあって、思ったんだけど、違ったら嫌だしなあって。でも、もし晃平さんだったらって。アプリで繋がっておけば、いつでもメッセージできるし」

 祥太は人の心が読めるらしい。

 口には出さず浮かんだだけの疑問の答えを、次から次に発してくれる。それともよっぽど変な顔をしていたのだろうか。

「俺、そんな変な顔していたか?」

「えっ? いつもの晃平さんの顔ですよ。俺が好きな晃平さんの顔」

「えっ——」

 照れ臭い事を言われ、思わず言葉を失う。

 階段を二段下り、祥太に並んで座る。

 さっき見えていた川崎側のマンションから、一つ二つと明かりが消えていく。祥太にもたれかけられ、肩にじわりと熱が届く。ただ黙って座っているだけで、堕落したあの時間が浄化されていくような気になる。

「あっ、晃平さん。ここに来たって事は?」

「来たって事は何だ?」

「いや、だから、来たって事はやりたかった? して、やりたかったから、ここに来たんだよね?」

 触れた肩から伝わる声は、悪戯な色を含んでいた。素直に、ああ、そうだよ。と、言って、押し倒してもよかったが、自分をとしたくないと制止する理性が勝っていた。だからと言って、祥太のその問いに、嘘を並べて弁明する気にもなれない。

 心地いい時間に身を置いていたい。それが今の本音だ。

「そうだな、ここに来るまでは、もしていたけどな。でもこうやって祥太の顔見たら、なんか落ち着いてしまったよ」

「それどう言う意味? 俺に魅力がないから、も収まったって事?」

「そうじゃないよ。そんなんじゃない」

 触れていた肩に腕を滑らせ、祥太の体を引き寄せる。こんな状況では、下手な言葉をつむいでも、何の意味も持たない。

 祥太の左肩に置いた指先に力を込める。その強さが答えだと、分かってくれたようで、祥太も素直に身を任せてくれている。

 対岸のマンションの明かりがまた一つ消えた。

 あの箱の中で、いま同じように大事な人の肩を抱いている奴は、どれくらい居るのだろう?

 ん? 大事な人?

 自分の中で整理された一つの答えに、心がふっと軽くなる。安らぎとはこう言う時間の事を言うのだろう。

「晃平さん。後でやろうね。ほら、あの辺。あの辺なら人の目も気にならないよ」

 祥太が指差した茂みは、背の高い夏の草を揺らしていた。少し風が出てきたようだ。

「あの辺って、こんな外でするのか?」

「たまには気分変わっていいんじゃない?」

 お前なあ。そう言いかけた口を閉じ、顔を祥太へと向ける。

 周りは薄闇の中だが、近くに街灯はなく、目の前の顔は輪郭だけだ。闇の中どんな表情を浮かべているかは分からないが、ここで頬を寄せたとしても、拒まれる事はないだろう。


 向かいのマンションの明かりの数に、更に時間が過ぎた事を教えられる。

 脇に置いたリュックからティッシュを取り出す祥太の顔に指を伸ばす。さっき祥太が指差した茂みには動かず、階段に腰掛けたままことを終えていた。

「今、何時になった?」

 ティッシュと一緒に取り出された、スマホに目をやる。

「えーっと、もうすぐ二時ですね」

 そう言いながら向けられた、スマホ画面を覗く。

 一時五十六分。その下の九月二十一日の文字が、やけに頭にこびり付く。

「ありがとう。もう遅いから、今日は俺の所に泊まっていけば?」

「そうですね。ありがとう。でも、もうちょっとここでゆっくりしたいかな。すごく風が気持ちよくない?」

「ああ、そうだな。分かった」

 丸めたティッシュを草むらへと放り投げ、祥太が下がったショートパンツを上げている。その姿に、下半身を丸出しにした自分が、やけに情けなく思えてきた。情けない姿になっている事は承知だが、それだけではない情けなさ。そんな感情に被さるように、さっきの九月二十一日と言う日付が掠める。何かを忘れているような気がしてならない。

 特に約束がある訳ではない。予定など何一つ入っていないのに、何を忘れているんだろう。

「あれ、あそこ火事かな? なんか煙が上がっていない?」

「えっ? どこだ?」

 腰を下ろした階段から、下流の草むらを祥太が指差す。その指差された一帯を確かめるが、祥太が言う煙は見えない。薄闇の紺色に、白い煙を探してみるが、そんな白い空気の流れを、探す事は出来ない。

「えっ? どこの事だ?」

「ほら、あそこ。あの辺だけ煙が上がって、ぼんやり黒くなっていない?」

 祥太の指の先に目をらす。

「ほら!」

 祥太が急に大きな声を出して立ち上がる。

 その手に引かれ立ち上がると、少しずつ範囲を広げ燃える、炎の集合体が目に入った。二、三百メートル先だろうか。間違いなく炎であり、祥太の言う、ぼんやりとした黒い煙が上がっている。

「すぐに消防車呼ばないと」

「えっ? 消防車? えーっと、一一〇番だっけ?」

「違う。一一九番。そのスマホ貸してくれ」

 慌てる祥太からスマホを奪い取る。

 パスコードなど聞かなくても、緊急の一一九番にはすぐにダイヤル出来る。

「もしもし。多摩川の河川敷で火事です。河川敷で火と黒い煙が上がっています」

 スマホを返すと、Tシャツの裾を祥太が引っ張った。

「晃平さん。これって逃げた方がいいのかな?」

「いや、逃げたらまずいだろ? それに祥太のスマホから、電話してしまったし」

「そうだよね。ごめんね。こんな所に呼び出さなかったら、こんな事にならなかったのに」

「いや、祥太が悪い訳じゃないんだし」

 肩を強く引き寄せる。

 伸びたTシャツの首周りに、祥太の鼻息がかかる。こうする事で落ち着けるなら、暫く抱いていよう。祥太を引き寄せる腕に、力を入れて数秒。祥太のためと思い、じっと抱き寄せていたが、その行為は自分の頭をも落ち着ける事となった。

「あ、まさか?」

「何? どうしたの?」

「九月二十一日って」

「九月二十一日がどうしたの?」

——九月十四日 
「マタイよ! 火刑に見舞われ斬首されよ!」

 一週間前の物騒な書き込みを思い出す。

——火刑。

 呆然と眺める炎の集合体が、更に大きくなったように見えた。これだけの距離があるのだから、その炎の内を見極める事など出来ない。それなのに何故か炎の内に人影を見せられる。

「晃平さん。サイレンが聞こえる。消防車かな? さっき一一九番に電話したんだよね」

「ああ、そうだな。行かない訳にはいかないな」

 階段を一歩下り、河川敷の草むらへ足を入れる。ふっと吹いた風が足元を抜け、露出させた膝下を草の先がくすぐる。一メートル、二メートルと歩を進めるにつれ、いつの間にか煙は大きく範囲を広げていた。

——巻き込んですまない。

 すぐ後ろに続く祥太に声を掛けたかったが、黒い煙の流れに口を開く事が出来ない。ただ祥太へと腕を伸ばし、その手を握るのがやっとだ。さらに一メートル、二メートルと進むにつれ、煙が目にみ出してきた。遠くから見ていた黒い煙にいつの間にか巻き込まれ大きく咽る。

「だめだ。ここは危ないから土手に上がろう」

 祥太の腕を強く引く。

 あっと言う間に広がった黒い煙の隙間に、さっきとは別の階段を見つけ、祥太を先に歩かせる。遠くに聞こえていたサイレンも、その音を大きく響かせ始めていた。もうすぐ消防車が到着するだろう。

「晃平さん、あれ」

 一歩前を歩く祥太が振り返る。何かを見つけたようだが、その声は震えていた。

「どうした? 大丈夫か?」

「今、あの火の中に人がいた。あの火の中で、誰か人が燃えている」

 祥太の言葉に、火刑の文字が再び浮かぶ。

 やっぱり"TAMTAM"だったのか。だがその確信を、その名前を祥太に告げる事はしたくない。

 土手への階段を目指し、ただ祥太の背中を押す。絶対近付けはしない。祥太にだけは絶対に"TAMTAM"を近付けはしない。

 土手に上がった時には、サイレンの音はもうでいた。

 駆け付けた消防車から、消火ホースが伸ばされていく。サイレンは止んだが、この多摩川に再びの静寂せいじゃくもたらす訳ではない。消防隊員の声や、野次馬達の声が、サイレン以上の騒音を生み出していく。

 筒先つつさきから放たれる消火薬剤しょうかやくざいの白い煙が、黒い煙に打ち勝っていくさまをただ眺める。じっと何も言わず、隣に佇む祥太に顔を向けてみたが、その目は同じように、消火ホースから放たれる、消火薬剤の流線りゅうせんを見ていた。

「お下がりください! 土手から下りて下さい!」

 野次馬の整理を始めたのは警察官達だった。消防車と同時に、パトカーも到着していたのだろう。そんな制服の警察官の間からポロシャツ姿の男が近付く。

「晃平さんじゃないですか? こんな所で何しているんですか?」

 山﨑だった。

 晃平と言う名前に反応したのか、二の腕を掴んでいた、祥太の指が外れる。土手から下ろされる野次馬達に、祥太が紛れてしまわないようにと、外された指先を強く握る。今は祥太といる時間を、一番に優先すべきだ。例え山﨑であったとしても邪魔はさせない。

「お前こそ何をしているんだ?」

「何って、通報受けて駆け付けたんですよ。晃平さんが休んでいるから宿直ばかり当てられて」

 ようやく消火が済んだようで、黒い煙は落ち着き、山﨑の後ろの河川敷には、薄闇が戻っていた。

 薄くなった煙の奥に、川崎側のマンションが浮かぶ。更に夜を深めたはずなのに、この騒ぎに気付いたからだろうか、その明かりは数を増やしていた。

「"TAMTAM"の仕業しわざなのか?」

 咄嗟に口を突いた名前に、ぴくりと動いた祥太の反応が伝わる。

 巻き込むつもりなんて微塵もない。それなのに今、祥太を前に"TAMTAM"の名前を出した事に後悔が纏わりつく。

「それはまだ分からないですけど。でも火の元は人間で間違いがないようです。焼身自殺って事も考えられますけど、今はまだ何も」

「やっぱり火刑か」

「マタイよ! 火刑に見舞われ斬首されよ。確かに今日九月二十一日は、マタイの聖名祝日です。それより晃平さんはここで何をしているんですか? それに、その人は?」

 山﨑が祥太を気にしている。嘘を付くつもりも、何かを隠すつもりも毛頭もうとうない。

「ああ、通報したのは俺だ。ここから、そうだな、三百メートルほどの所にいたんだが、煙が見えて、それに炎まで見えたんで、慌てて通報したんだ。それで火の元に移動して来たんだが、煙が凄くて、この土手に上がって、消防車が来るのを待っていたんだ」

 全てを正直に話したが、山﨑は言葉を失っている様子だった。

 火災現場に居合わせた事に、疑念を抱いているのか?

 何故、こんな時間に、多摩川の河川敷にいたのか。その詳細を伝えるのは難しい。相手があっての事だ。思わず祥太の指先を握る手に力が入る。

「それで、その人は?」

「ああ、俺の彼氏だよ」

「晃平さんの彼氏さんなんですね?」

 咄嗟の事に目を丸くはしているが、山﨑は特に驚く様子は見せていない。

「ああ、二人で河川敷にいる所に、煙が上がったんだ」

「二人でいたんですね。それなら晃平さんと、彼氏さんにも話を聞かないといけないですね」

「何でそうなるんだ。俺はいいが、祥太は関係ない」

 感情を露わにしてしまったが、祥太は関係ない。祥太だけは巻き込む訳にはいかない。指先を握る手に一層の力が入る。

「晃平さん」

「あ、すまない」

 謝りたい事は沢山ある。巻き込んでしまった事。"TAMTAM"に近付けてしまったかもしれない事。ただ今は込め過ぎた力に、咄嗟の謝罪が口を突く。

「晃平さん。俺も一緒にいたから、話くらい出来ますよ」

「えーっと」

 山﨑が祥太へと直接声を掛ける。

「あの、晃平さんの彼氏です。祥太と言います。多村祥太です」

 さっき思わず彼氏だと紹介してしまったが、祥太が気にも留めず、同じ言葉を使った事に耳が固まる。

 彼氏と言うフレーズだけが、耳の内で何度も繰り返され、それ以上の声が届かなかったが、山﨑には、全てが聞こえていたようで、驚いた声を上げる。

「えっ! タムラさんなんですか?」

「はい。多村祥太です。いにで多村です」

 改めて祥太の顔を覗き込む。

 巻き込むまいと思っていた祥太が、タムラである事を初めて知らされる。

 確かに今まで聞こうと思えば聞くことが出来たが、ただ祥太は祥太であり、わざわざ聞く必要のない事と認識していたのかもしれない。
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