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第一章 フィリポ Philippus
Ⅱ・5月5日
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それは一瞬の隙だった。赤く染まった視界が正常に戻った、一瞬の隙。
「晃平さん」
誰かが呼ぶ声に目を開くと、隙だった正常な世界が、目の前にあった。
「晃平さん。いつまでそこで寝ているんですか? 邪魔なんで早く帰って下さい」
後輩の山﨑光平だった。後輩と言っても、歳が下と言うだけで、階級は上だ。そんな山﨑がソファに無理やり尻を捻じ込んでくる。その捻じ込まれた尻に、否応なく体を起こす。
「晃平さんのコーヒーも淹れてありますよ」
専用のマグカップがテーブルの上に見える。マグカップの横にはさっきの朝刊だ。
「お前、いつも思うんだが、自分もコウヘイなのに、何で俺の事、コウヘイって呼ぶんだ?」
ソファに左足だけ胡坐をかいて、山﨑へと体を向ける。
「えっ? 晃平さんだからコウヘイですよ。何かおかしいですか? それに他の人だってみんなコウヘイさんって呼んでいるじゃないですか」
目に入った朝刊に滅入りそうになり、どうでもいい話を山﨑へ振っていた。それ程、興味のある話でもなかったが、山﨑に引き戻された正常な世界を保っていたかった。
「いや、他の奴は名前が違うし、でもお前は同じなんだし」
「田村さんって呼ぶ方が抵抗あるんですよ。だから晃平さんはコウヘイさんで。何なら俺の事も山﨑じゃなく、コウヘイって呼んでくれてもいいですよ」
「ややこしくなるだろ!」
ようやくマグカップに手を伸ばし、コーヒーを喉奥に流し込む。少し温くなったコーヒーは喉奥に流し込むには、丁度いい温度になっていた。
コーヒーに落ち着き、ふっと息を吐くと、さっきの赤く染まった世界が、現実ではない事を、改めて知らされる。
「晃平さんもこのニュース気になったんですか?」
テーブルに置いた新聞に山﨑が手を伸ばしている。八つに折ったままの新聞は、その記事に目を通した事を語っていた。
温いコーヒーで、充分に正常な世界に戻された今となっては、新聞の記事はあくまで新聞の記事であり、赤く染まった世界に戻される事はない。
「まあな、俺と同じ田村って奴が殺されたんだ。それに何だか物騒な殺され方だしな」
「ですよね、そうですよね!」
やけにテンションを上げる山﨑に首を傾げながら、残りのコーヒーを流し込む。
事件が増えれば仕事が増える。他所の所轄の事件だから、関係ないと言えば関係ないが、それでも殺人事件なんてものは歓迎できるものではない。それは殺された人間や、その遺族にとっては、許されない考え方ではあるが、ただ単に仕事を増やして欲しくない。そんな単純な理由を持って、殺人事件なんてものは歓迎していなかった。
「それで晃平さんはどう思いましたか?」
「何がだ?」
記事にある事件を言っているのは分かるが、そこで意見を求められてもと、敢えて無関心な返答をする。
「だからこの事件ですよ。深夜の公園で、全裸で、それに木に縛られていたんですよ。しかも石で何度も何度も頭を殴られて、撲殺ですよ、撲殺! テンション上がるじゃないですか」
やはり山﨑はテンションを上げていた。本人も自覚ありなのかと、その顔を盗み見る。別の意味ではあるが、殺された人間や、その遺族にとって、許されない考え方を山﨑も持っているようだ。
「何か宗教的な臭いがしますよね。これ、絶対十字架を見立てていますよ」
「十字架? まあ、そうとも言えるな」
瞼の裏に描かれた光景を思い出す。その光景は自身の脳で造られたものであって現実ではない。それでも山﨑が言う十字架を否定できないのは、自分自身が十字架に張り付けられていたとも言えるからだ。勿論、現実ではない。
現実ではないからこそ、余計鮮明に思い出せるのだろうか。赤く染まった世界が目の前に現れるより前だ。確かに十字架のようなものに張り付けられていた。いや、張り付けられていると思える光景を、瞼の裏に描いていた。
「朝、このニュースを見て、ずっと考えているんですよ。一体どんな奴が犯人だろうって。だってこんな殺し方、尋常じゃないじゃないですか。裸にして、木に縛り付けて、その木にわざわざ角材まで打ち付けて、十字架に見立てているんですよ。絶対これ、何か宗教絡みですよ」
「朝っぱらから不謹慎だな」
「不謹慎じゃないですよ」
山﨑が口を尖らせる。その尖らせた口で、すっかり冷めただろうコーヒーを啜り始めている。
その嫌な音に、舌まで尖らせている事が伝わる。
「俺だって刑事なんで、殺人事件が起きれば、どんな奴が犯人だろうって、どんな奴がどんな風に殺したんだろうって考えますよ」
「それは所轄内の話であって、今回の事件は杉並だろ? 俺達には関係のない話さ」
「確かに所轄は違いますけど」
「それじゃあ、この話は終わりだ」
さっき瞼の裏に描いた光景を、山﨑に悟られないうちに、早く話を切り上げたかった。それにもう殆どの連中が出署してきている。
邪魔なんで早く帰って下さい。そう言っておきながら、いつまでもこんな話を続けさせる、山﨑を睨みつける。
「それじゃあ、最後に晃平さんの見解聞かせて下さいよ」
「見解だと?」
「はい。可愛い後輩の後学のためだと思って」
「誰が可愛い後輩だ? それに後学って何だよ」
呆れた声で返しはしたが、可愛い後輩と自負する山﨑は、目を輝かせている。
「まあ、そうだな。お前が言うように、木に縛り付けているって事は、それにわざわざ角材を打ち付けているって事は、十字架に見立てているんだと思うよ。でもなあ、場所が場所だし。それに全裸で精液の跡があるって、それって、何かのプレイの最中に死んだって事だよ。まあ、何かは分からないが、そのプレイが行き過ぎて殺してしまった。まあ、そんなところだと思うよ」
「えっ? プレイって? それにその場所が場所だからって、どう言う意味ですか?」
「だからプレイはプレイだ。それに場所はハッテ……」
ハッテン場と声にしそうになったが、慌ててその口を閉じた。
蚕糸の森公園と言えば、同性愛者が集うハッテン場として知られている場所だ。性欲を剥き出しにした男達が、同じような相手を求め集まる場所。今は他に色々な手段があるから、廃れているかもしれないが、それでも深夜に集い、性欲を発散する輩はまだいるだろう。
だがそんな事を山﨑に説明する訳にはいかない。きっと更に追及されるはずだ。もしそんな事になれば、さっき瞼の裏に描いた光景の説明を求められる事になるだろう。
「終わりだ、終わり。宿直明けて、俺の勤務は終わったんだ。これから家に帰って、もう一回寝直すんだから、お前の相手はこれで終わりだ」
もう一度山﨑を睨み、頭を掻き毟る。一晩風呂にも入らず、横になっていた髪はゴワゴワし、指先に油分まで感じられる。
「晃平さん、何日頭洗ってないんですか?」
「あ? 一日だよ」
「えっ? 絶対嘘ですよ。一日で普通そんな頭垢出てこないですよ」
ソファから立ち上がると、すかさず立ち上がった山﨑が視線を落としてきた。一八〇センチは優に越える山﨑からは、頭の天辺まで見えているのだろう。
「これから家帰って洗うからいいんだよ」
もう一度頭を掻き毟ってみせ、その手で山﨑の尻を叩く。
よく締まった尻は叩き甲斐がある。背が高く細い割には、しっかりと尻には肉が付き、筋肉質な体だ。
「あ、また今ケツ触りましたね」
「触ったんじゃないよ。叩いたんだ。くだらない話はいいから、さっさと仕事しろ」
「えー、ゴールデンウィーク中だから、のんびりでいいんですよ。俺はこの事件が気になるんで、今日はこの事件探ってみます」
山﨑がテーブルに置かれた新聞を指差す。その新聞をさっと抜き取り、ごみ箱目掛け放り投げる。
——田村晃。
自分の名前に似た被害者の殺人事件なんてものは、早く忘れてしまいたい。次から次に塗り替えられていくニュースの中で、それは一瞬の対面であって、ごみ箱に放り投げたニュースは、もう頭に浮かんでくる事もないだろう。
「晃平さん」
誰かが呼ぶ声に目を開くと、隙だった正常な世界が、目の前にあった。
「晃平さん。いつまでそこで寝ているんですか? 邪魔なんで早く帰って下さい」
後輩の山﨑光平だった。後輩と言っても、歳が下と言うだけで、階級は上だ。そんな山﨑がソファに無理やり尻を捻じ込んでくる。その捻じ込まれた尻に、否応なく体を起こす。
「晃平さんのコーヒーも淹れてありますよ」
専用のマグカップがテーブルの上に見える。マグカップの横にはさっきの朝刊だ。
「お前、いつも思うんだが、自分もコウヘイなのに、何で俺の事、コウヘイって呼ぶんだ?」
ソファに左足だけ胡坐をかいて、山﨑へと体を向ける。
「えっ? 晃平さんだからコウヘイですよ。何かおかしいですか? それに他の人だってみんなコウヘイさんって呼んでいるじゃないですか」
目に入った朝刊に滅入りそうになり、どうでもいい話を山﨑へ振っていた。それ程、興味のある話でもなかったが、山﨑に引き戻された正常な世界を保っていたかった。
「いや、他の奴は名前が違うし、でもお前は同じなんだし」
「田村さんって呼ぶ方が抵抗あるんですよ。だから晃平さんはコウヘイさんで。何なら俺の事も山﨑じゃなく、コウヘイって呼んでくれてもいいですよ」
「ややこしくなるだろ!」
ようやくマグカップに手を伸ばし、コーヒーを喉奥に流し込む。少し温くなったコーヒーは喉奥に流し込むには、丁度いい温度になっていた。
コーヒーに落ち着き、ふっと息を吐くと、さっきの赤く染まった世界が、現実ではない事を、改めて知らされる。
「晃平さんもこのニュース気になったんですか?」
テーブルに置いた新聞に山﨑が手を伸ばしている。八つに折ったままの新聞は、その記事に目を通した事を語っていた。
温いコーヒーで、充分に正常な世界に戻された今となっては、新聞の記事はあくまで新聞の記事であり、赤く染まった世界に戻される事はない。
「まあな、俺と同じ田村って奴が殺されたんだ。それに何だか物騒な殺され方だしな」
「ですよね、そうですよね!」
やけにテンションを上げる山﨑に首を傾げながら、残りのコーヒーを流し込む。
事件が増えれば仕事が増える。他所の所轄の事件だから、関係ないと言えば関係ないが、それでも殺人事件なんてものは歓迎できるものではない。それは殺された人間や、その遺族にとっては、許されない考え方ではあるが、ただ単に仕事を増やして欲しくない。そんな単純な理由を持って、殺人事件なんてものは歓迎していなかった。
「それで晃平さんはどう思いましたか?」
「何がだ?」
記事にある事件を言っているのは分かるが、そこで意見を求められてもと、敢えて無関心な返答をする。
「だからこの事件ですよ。深夜の公園で、全裸で、それに木に縛られていたんですよ。しかも石で何度も何度も頭を殴られて、撲殺ですよ、撲殺! テンション上がるじゃないですか」
やはり山﨑はテンションを上げていた。本人も自覚ありなのかと、その顔を盗み見る。別の意味ではあるが、殺された人間や、その遺族にとって、許されない考え方を山﨑も持っているようだ。
「何か宗教的な臭いがしますよね。これ、絶対十字架を見立てていますよ」
「十字架? まあ、そうとも言えるな」
瞼の裏に描かれた光景を思い出す。その光景は自身の脳で造られたものであって現実ではない。それでも山﨑が言う十字架を否定できないのは、自分自身が十字架に張り付けられていたとも言えるからだ。勿論、現実ではない。
現実ではないからこそ、余計鮮明に思い出せるのだろうか。赤く染まった世界が目の前に現れるより前だ。確かに十字架のようなものに張り付けられていた。いや、張り付けられていると思える光景を、瞼の裏に描いていた。
「朝、このニュースを見て、ずっと考えているんですよ。一体どんな奴が犯人だろうって。だってこんな殺し方、尋常じゃないじゃないですか。裸にして、木に縛り付けて、その木にわざわざ角材まで打ち付けて、十字架に見立てているんですよ。絶対これ、何か宗教絡みですよ」
「朝っぱらから不謹慎だな」
「不謹慎じゃないですよ」
山﨑が口を尖らせる。その尖らせた口で、すっかり冷めただろうコーヒーを啜り始めている。
その嫌な音に、舌まで尖らせている事が伝わる。
「俺だって刑事なんで、殺人事件が起きれば、どんな奴が犯人だろうって、どんな奴がどんな風に殺したんだろうって考えますよ」
「それは所轄内の話であって、今回の事件は杉並だろ? 俺達には関係のない話さ」
「確かに所轄は違いますけど」
「それじゃあ、この話は終わりだ」
さっき瞼の裏に描いた光景を、山﨑に悟られないうちに、早く話を切り上げたかった。それにもう殆どの連中が出署してきている。
邪魔なんで早く帰って下さい。そう言っておきながら、いつまでもこんな話を続けさせる、山﨑を睨みつける。
「それじゃあ、最後に晃平さんの見解聞かせて下さいよ」
「見解だと?」
「はい。可愛い後輩の後学のためだと思って」
「誰が可愛い後輩だ? それに後学って何だよ」
呆れた声で返しはしたが、可愛い後輩と自負する山﨑は、目を輝かせている。
「まあ、そうだな。お前が言うように、木に縛り付けているって事は、それにわざわざ角材を打ち付けているって事は、十字架に見立てているんだと思うよ。でもなあ、場所が場所だし。それに全裸で精液の跡があるって、それって、何かのプレイの最中に死んだって事だよ。まあ、何かは分からないが、そのプレイが行き過ぎて殺してしまった。まあ、そんなところだと思うよ」
「えっ? プレイって? それにその場所が場所だからって、どう言う意味ですか?」
「だからプレイはプレイだ。それに場所はハッテ……」
ハッテン場と声にしそうになったが、慌ててその口を閉じた。
蚕糸の森公園と言えば、同性愛者が集うハッテン場として知られている場所だ。性欲を剥き出しにした男達が、同じような相手を求め集まる場所。今は他に色々な手段があるから、廃れているかもしれないが、それでも深夜に集い、性欲を発散する輩はまだいるだろう。
だがそんな事を山﨑に説明する訳にはいかない。きっと更に追及されるはずだ。もしそんな事になれば、さっき瞼の裏に描いた光景の説明を求められる事になるだろう。
「終わりだ、終わり。宿直明けて、俺の勤務は終わったんだ。これから家に帰って、もう一回寝直すんだから、お前の相手はこれで終わりだ」
もう一度山﨑を睨み、頭を掻き毟る。一晩風呂にも入らず、横になっていた髪はゴワゴワし、指先に油分まで感じられる。
「晃平さん、何日頭洗ってないんですか?」
「あ? 一日だよ」
「えっ? 絶対嘘ですよ。一日で普通そんな頭垢出てこないですよ」
ソファから立ち上がると、すかさず立ち上がった山﨑が視線を落としてきた。一八〇センチは優に越える山﨑からは、頭の天辺まで見えているのだろう。
「これから家帰って洗うからいいんだよ」
もう一度頭を掻き毟ってみせ、その手で山﨑の尻を叩く。
よく締まった尻は叩き甲斐がある。背が高く細い割には、しっかりと尻には肉が付き、筋肉質な体だ。
「あ、また今ケツ触りましたね」
「触ったんじゃないよ。叩いたんだ。くだらない話はいいから、さっさと仕事しろ」
「えー、ゴールデンウィーク中だから、のんびりでいいんですよ。俺はこの事件が気になるんで、今日はこの事件探ってみます」
山﨑がテーブルに置かれた新聞を指差す。その新聞をさっと抜き取り、ごみ箱目掛け放り投げる。
——田村晃。
自分の名前に似た被害者の殺人事件なんてものは、早く忘れてしまいたい。次から次に塗り替えられていくニュースの中で、それは一瞬の対面であって、ごみ箱に放り投げたニュースは、もう頭に浮かんでくる事もないだろう。
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